2005年夏、この年欧州最大の目玉となる5代目メルセデス・ベンツSクラス(W221型)が登場している。このセグメントで絶対的な地位を確立していたSクラスだが、ライバルたちもその牙城をなんとか崩そうと躍起になっていた。それを受けて登場したSクラスはどんなモデルだったのか。Motor Magazine誌ではフランクフルトショーでのワールドプレミアに先立って公開された写真と資料から、その全貌をいち早く探っている。(以下の記事は、Motor Magazine 2005年8月号より)

Sクラスにふさわしいハイテク安全装備満載

すでに半世紀にわたって高級リムジンの代名詞とまで言われるほどの地位を築いたメルセデス・ベンツSクラス。1998年に発表された現行モデル(4代目W220型)は、これまでにおよそ48万5000台あまりが生産され、自他共に認めるクラスナンバー1を誇っている。

しかし、この不動とまで思われた「S」のポジションも、8年も経過すると様相は変わってくる。技術革新やデザインテイストの変化は年を追って早くなっているのだ。それはドイツのラグジュアリーマーケットにその兆候を見ることができる。

2004年の販売台数を見ると、同じ土俵に立つBMWの旗艦7シリーズは、デザインを云々言われたにもかかわらず7672台を販売し、7045台のメルセデス・ベンツSクラスを上回ったのである。さらに今年4月までの販売台数では、アウディA8までが2130台を記録し、1590台のSクラスを超えているのである。

しかし、この数字にもまもなく変化が起こるに違いない。ダイムラークライスラーはナンバー1の座を取り返すために今回5世代目のニューSクラスを公開、今秋から世界市場へ向けて送り出すことを発表した。

この新しい旗艦の特徴は何と言ってもまず大きく変わったデザインである。とりわけこれまで保守性の強かったラグジュアリーセグメントにしては珍しい、強調されたホイールハウス、まるでオーバーフェンダーのような膨らみが特徴的である。そしてこれまで以上になだらかに後方に流れるクーペ状のルーフ。またそこからリアにかけてはマイバッハを思わせるような「段付」トランクで終わっている。

全体的に風を切り裂くようなスリークな形状は空力特性の優秀さを暗示しているが、事実Cd値は0.26と、このクラスでは驚異的に低い数字を達成している。さらにボディの強度ももちろん向上しており、ねじれ剛性で12%、曲げ剛性で11%とそれぞれ向上している。

注目のサイズだが、スタンダードバージョンの全長は5076mm(先代モデル比+33mm)、全幅が1871mm(+16mm)、そして全高は1473mm(+29mm)、さらにホイールベースは3035mm(+33mm)となっており、現行モデルとの差をみてもおわかりの通り、わずかながら成長を遂げている。ちなみにストレッチバージョンの全長は5206mm(先代モデル比+43mm)となった。

ところでデザイン改革はエクステリアだけでなくインテリアにも及んでいる。そこにはなんとBMW7シリーズと見間違うようなメーターナセルを2つ並べたダッシュボードが存在する。左にはアナログ状のメーターが並び、右中央には8インチのカラーマルチスクリーンが納められている。さらに、センターコンソールにはマウス状のマルチコントロールダイアルが用意されている。

それからもうひとつ、オートマチックのセレクトレバーもセンターコンソールから消え、シフトはステアリングコラムから伸びたレバーによって(MLクラスのように)行われる。

画像: メルセデス・ベンツSクラス(W221型)。自他ともに認めるラクジャュアリークラスの最高峰。先代モデルと比べてラインがシャープになってスポーティな印象を受ける。

メルセデス・ベンツSクラス(W221型)。自他ともに認めるラクジャュアリークラスの最高峰。先代モデルと比べてラインがシャープになってスポーティな印象を受ける。

ニューSクラスは、S350(272ps)、S500(388ps)、S320CDI(231ps:2006年上半期より)、S600(517ps:2006年上四半期)の4グレードとなる。また、正式な発表はないが、AMGバージョンは6.3Lで、500psを発生すると予想されている。

メルセデスはこれまで伝統的にSクラスにハイテクアンバサダーとしての役割を持たせているが、この最新モデルにもこれまで通り様々な新機軸を提示している。

まずブレーキアシストプラスはこれまでの機能に加えてレーダーを採用することによって、より緻密な車間距離を算出し、警告を発する。さらに衝突の危機が迫るとドライバーに代わって理想的なブレーキの介入を行う。これは追突事故を減らすことに貢献するはずである。また様々なセンサーから事故を事前に察知してシートベルトのテンションを働かせたり、シートを正常状態にしてエアバッグの作動を正確に行うようにスタンバイさせるなどの機能をさらに進化させたプリセーフも搭載されている。

またコントローラーによる新しいコマンドシステム、マッサージ機能を持ったダイナミックサポートシート、エレクトリックパーキングブレーキ、ナイトビジョンなどが満載されている。

車両価格もすでに発表されており、S350が7万760ユーロ、S500が8万9668ユーロだ。このニューSクラスはフランクフルトショーで公開された後に日本へ上陸する。

はたして個性的なニューSクラスが日本の保守派にどのように受け入れられるか、大いに気になるところだ。(文:木村好宏/Motor Magazine 2005年8月号より)

画像: インテリアは豪奢で快適に過ごせる空間であるのはもちろん、「ダイレクトセレクト」による操作性、機能性の高いディスプレーなど、ドライバーのストレスを軽減したものとなっている。視認性に配慮し、モニターはメーターと同じ高さに配置される。

インテリアは豪奢で快適に過ごせる空間であるのはもちろん、「ダイレクトセレクト」による操作性、機能性の高いディスプレーなど、ドライバーのストレスを軽減したものとなっている。視認性に配慮し、モニターはメーターと同じ高さに配置される。

ヒットの法則のバックナンバー

メルセデス・ベンツS500(2005年) 主要諸元

●全長×全幅×全高:5076×1871×1473mm
●ホイールベース:3035mm
●重量:1960kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:5461cc
●最高出力:388ps/6000rpm
●最大トルク:530Nm/2800-4800rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:FR
●サスペンション:前4リンク後マルチリンク

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