2005年8月30日に日本で開業したレクサス。その1カ月前の7月26日には、日本でのレクサス店スタート時のフラッグシップとなる「レクサスGS」の詳細が明らかになっている。それまで秘密のヴェールに包まれていた細部も含めて、ここでは大きな注目を集めていたGS430とGS350の内容を振り返ってみよう。当時の最先端スポーツセダンはどんなクルマだったのだろうか。(以下の記事は、Motor Magazine 2005年9月号より)

ボディサイズはBMW5シリーズ、メルセデスEクラスとほぼ同じ

8月30日、GS、SC、ISの3モデルのラインナップでついにレクサスが開業する。その中で、GSは新型LSがデビューするまで、事実上「日本におけるレクサスの最高級セダン」となる。それでも、このクルマのキャラクターは「スポーティ」というところにあると思う。資料にはそうした記述はなく、ひたすら上質さが謡われているものの、走りを意識して作られていることはパッケージングからも強く伝わって来る。

ボディサイズは全長4830×全幅1820×全高1425mmで、これは同じプラットフォームを使うクラウンよりも短く(マイナス10mm)、低く(マイナス45mm)、しかし格段にワイド(プラス40mm)だ。2850mmのホイールベースは同一なものの、トレッドもフロントで10mm、リアで15mmの拡張が図られている。

ちなみにこのサイズは、欧州のEセグメントにピタリとはまる。新しいBMW 5シリーズよりわずかに小さく、メルセデス・ベンツEクラスとほぼ同等という大きさだ。その中で、全高に関してはGSが最も低いという部分にも「走り」を感じさせる。

これぐらいサイズに余裕のあるクルマだと、多少全高が下げられても居住性面にはさしたる影響は受けない。事実GSの室内長は2000mmとクラウンより70mm短くなっているが、実際に乗った時の印象では後席足下スペースに与える影響はそれほど大きくはなかった。

ちなみに前後乗員間の距離、つまりタンデムディスタンス自体はクラウンとほぼ同じ955mmだ。前出の欧州2車と較べても、居住性は大差ない。むしろお尻を落とし込んで座らせるEクラスの後席よりも着座姿勢は自然で好感が持てた。

ただし、ルーフ高は確実に低くなっており、乗員の着座姿勢はクラウンよりも寝た格好となる。また、リアウインドウは後方まで引き伸ばされているものの、高さ方向が抑えられていることもあり、室内に居るときの包まれ感はクラウンよりも強い。この辺は、よりパーソナルな使い方をされるレクサスGSに相応しい演出だ。

「もてなしの心」を強調するレクサスだが、GSにはそうした部分が表れている演出が数多く見られる。たとえばイルミネーテッドエントリーシステム。スマートキーを携行してクルマに近づくと、ドアミラーの足下照明がステップ付近の地面を照し、室内では上からのスポットライトがステアリングと前後シートを浮き上がらせる。ドアグリップに手を添えるとロックが解除され、開けるとカーテシランプ、前後席の足下、内側のドアハンドル、スカッフプレート照明などが点灯。ハンドル左側のスターターボタンを押してエンジンが始動した後は、スポットライトがシフトレバー側に移動して走りへの気分を盛り上げるといった「これでもか」のイルミネーションガイダンスが行われる。

さらに、本アルミの文字盤を持つメーターはライトセンシティブオプティトロンというものを採用しており、メーターレンズに調光機能を持たせることで日差しが室内に差し込む場合にも最適な視認性を確保するように自動調整するという。

エアコンも凝っている。花粉除去機能や、除菌効果のあるプラズマクラスターはもちろんのこと、温度調節自体も夏場には足下に冷風を送ったり、日差しに応じて暖房時も上半身に冷風を出したりと、実にキメ細かい制御をやってのけるのだ。

この辺のホスピタリティは、いずれロングツーリングに出て実際に確認してみたいところである。

画像: レクサスGS350。ボディカラーは全10色。タイヤサイズはGS430が245/40R18、GS350が225/50R17となる。2グレードの外観上の最大の差はタイヤ&ホイール。

レクサスGS350。ボディカラーは全10色。タイヤサイズはGS430が245/40R18、GS350が225/50R17となる。2グレードの外観上の最大の差はタイヤ&ホイール。

キャラが立ったの新開発の3.5L V6直噴エンジン

さて、走りに話題を戻そう。GSに搭載されるエンジンは、すでにLSに搭載され熟成を極めた感のある4292ccV型8気筒の3UZ-FEと、クラウン用V6エンジンをベースに排気量を3456ccにまで拡大し、併せて新燃料噴射システムであるD-4Sを採用した2GR-FSEの2種類だ。

試乗した印象は、3UZ-FEはスムーズで厚みのあるトルクが特徴と言えるが、すでにそれはセルシオで慣れ親しんだもの。不足はまったくないが、シリーズのトップエンドとしての「驚き」はあまり感じない。

キャラクターが立っているのは新開発のV6の方で、これは直噴エンジンならでは充填効率の良さを生かした11.8の高圧縮比から315psのパワーを得ている。トルクも377Nmとキャパシティからするとかなり厚い。国内ではレジェンドに続き2つめのオーバー280psエンジンとなるわけだが、同じ3.5Lクラスとしては一枚上手のパフォーマンスとなる。

何しろこのV6は高回転の伸びや盛り上がり感も素晴らしいが、同時に低速トルクもかなり太いのだ。欧州勢の同排気量と較べても頭ひとつ飛び出した感じ。今後レクサスの主力エンジンとなるだけに、2GR-FSEの開発にはかなりの気合いが入っている。

しかし残念なのはこのキャラの立った新エンジンには、GSが鳴り物入りで採用した新メカニズムがほとんど組み合わされないことである。VDIMと連携してステア操作で安定性制御を行なうバリアブルステアリングのVGRS。モノチューブショックアブソーバーの減衰力を最適にコントロールするAVSといったものは、すべてGS430の専用装備なのである。

さらに、前後のスタビライザーに電動アクチュエーターを加え、状況に応じて前後のロール制御を行なうアクティブスタビライザーもGS430にのみオプション設定。GS350が走りに徹したモデルなのはわかるが、レクサスの今を代表するこの種の装備がまったく選択できないのはちょっと淋しい気がする。

ところで価格だが、GS430は630万円、GS350は2WDで520万円と発表されている。この価格、正直言って僕は「意外に安い」と感じた。GS430は現行セルシオのボトム相当で、採用されるメカを考えれば十分なバリューがある。GS350はクラウンアスリートのトップエンドとほぼ同じ。新開発の3.5L V6を搭載することを考えれば、これも十分に納得が行く。そして、欧州のプレミアムブランドと較べると。まだ圧倒的に安いのだ。(文:石川芳雄)

画像: レクサスGS430のインテリア。スマートエントリー&スタートシステム、HDDナビゲーションは全車標準装備。

レクサスGS430のインテリア。スマートエントリー&スタートシステム、HDDナビゲーションは全車標準装備。

ヒットの法則のバックナンバー

レクサスGS430(2005年) 主要諸元

●全長×全幅×全高:4830×1820×1425mm
●ホイールベース:2850mm
●車両重量:1700g
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4292cc
●最高出力:280ps/5600rpm
●最大トルク:430Nm/3400rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●サスペンション:前ダブルウイッシュボーン後マルチリンク
●車両価格:630万円(2005年当時)

レクサスGS350(2005年) 主要諸元

●全長×全幅×全高:4830×1820×1425mm
●ホイールベース:2850mm
●車両重量:1640g
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3456cc
●最高出力:280ps/5600rpm
●最大トルク:377Nm/4800rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●サスペンション:前ダブルウイッシュボーン後マルチリンク
●車両価格:520万円(2005年当時)

レクサスGS350 AWD(2005年) 主要諸元

●全長×全幅×全高:4830×1820×1435mm
●ホイールベース:2850mm
●車両重量:1730g
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3456cc
●最高出力:280ps/5600rpm
●最大トルク:377Nm/4800rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●サスペンション:前ダブルウイッシュボーン後マルチリンク
●車両価格:560万円(2005年当時)

This article is a sponsored article by
''.