世界中の自動車が電動化に向かっている中、内燃機関搭載車と電動車の橋渡し的な存在となっているのがハイブリッドカー(HV=Hybird Vehicle)である。1997年にトヨタがプリウスでHVを量産化に成功した後、続々とフォロワー車が増え、システムもバリエーションに富んでいる。その中の1種がPHVやPHEVである。似た名称だが、どんな違いがあるのだろうか。またHVシステムについても、再確認する。

※タイトル写真は、ロサンゼルスオートショー2019で公開されたPHV、トヨタRAV4 Prime

ひとことでハイブリッドカーと言っても、パラレル式やシリーズ式などの種類も

ハイブリッド(hybrid=英語)とは「混合」「雑種」といった意味で、自動車では2種類以上の動力源を備える車両のことをいう。HVシステムの形式は基本的に3種類で、エンジンとモーターの出力で車両を走行させる「パラレル式」、エンジンで発電しモーターを回す「シリーズ式」、パラレル式とシリーズ式の特性を併せ持つ「スプリット式」がある。いずれも自動車メーカーによって市販化されているが、全種まとめてHVと呼んでいる。

各種ハイブリッドには共通点がある。それは、走行に使用する電気を同車両で発電する点だ。発電にはエンジン、オルタネーター、ISG、ブレーキング時の回生力などが主に使用される。発電した電気は、車両内の蓄電池に蓄えられ、駆動用モーターやアイドリング時の電装品の作動に使用される。

「プラグインハイブリッド」とはなにか。HVとどこが違うの?

2019年に登場したトヨタの新型RAV4に、PHV(Plug-in Hybird Vehicle)「RAV4 Prime」が設定され話題を呼んでいる。ロサンゼルスオートショー2019で公開され、日本にも2020年夏に導入される予定だ。

トヨタとしてはプリウスに次ぐPHV第2弾、トヨタSUVとしては初のPHVで、RAV4の人気の高さもあり、大きな注目を集めている。しかし、ちょっと待ってほしい。現行RAV4には既に、HVが設定されている。HVとPHVでは何が違うのか。

HVとPHVの違いは、主に2点。1点めはP(プラグイン)であり、PHVでは外部電源からの充電が可能な点だ。HVでは走行中に充電されるが、PHVでは停車中にコンセントをつなぎ充電することもできる(もちろん走行中もHV同様充電可)。2点めはほとんどのPHVは蓄電池がHVより大容量で、EV走行の航続距離がHVよりもはるかに長く、最高速度も高い点だ。例えばプリウスとプリウスPHVでは、プリウスの蓄電池容量は3.6Ah(E-Fourは6.5Ah)だが、プリウスPHVでは25Ahと3.8〜7倍も大容量だ。プリウスのEV走行はエンジンの苦手領域の発進時や極低速時のみだが、プリウスPHVでは日本の法定速度内ならどの速度域でも、EV走行が可能だ。EV走行の最高速度は135km/hなので、高速での追越しもEVで可能なのだ。

プリウスではエンジンの補助にモーターを、プリウスPHVではモーターの補助としてエンジンを搭載しているイメージだ。モーターを主動力源的に扱うプリウスPHVの燃料費は、運転者により差があるだろうが、プリウスよりも安くなる傾向にある。というのも、プリウスPHVは60km以内のドライブなら、燃料は電気だけで済む。ガソリンと住宅用電気の小売り価格を比較すれば電気の方が安いのだから、深夜電力を使うなど賢く充電すれば、燃料費が家計を圧迫する度合いも低くなり得る。もっとも車両価格はプリウスより60〜80万円高価となるが。

画像: トヨタではプラグインハイブリッド車をPHVと呼んでいる。

トヨタではプラグインハイブリッド車をPHVと呼んでいる。

画像: プラグインハイブリッドとは、外部電源から充電ケーブルを通じて大容量の蓄電池に充電できる車両のこと。

プラグインハイブリッドとは、外部電源から充電ケーブルを通じて大容量の蓄電池に充電できる車両のこと。

PHVはPHEVとは違うものなのか?

前置きが長くなってしまったが、PHVとPHEVはどこが違うのか。

プラグインハイブリッド車を、トヨタではPHVと呼び、三菱自動車や日産、ホンダではPHEVと呼ぶ。PHVはPlug-in Hybrid Vehicle、PHEVはPlug-in Hybrid Electrical Vehicleの略である。PHVと比較するとPHEVには、Eの1文字が多い。これが最大の違いだ。

これはお笑いのネタではなく、事実だ。例えばプリウスPHVとアウトランダーPHEVでは、構成コンポーネントに大差なく、エンジン、モーター、蓄電池、プラグインハイブリッドシステム制御用PCとソフトウエアとなる。システムの制御プログラムと制御内容は異なるが、それはメーカーによる違いでありPHVとPHEVの違いを決定づけるものではない。PHVとPHEVはともに外部電源から充電ケーブルを通じ、大容量の蓄電池に充電できる。EVモードの航続距離は搭載蓄電池の容量によるが、時速100km程度なら余裕でEV走行が可能。唯一異なるのは、名称の「E」の1文字だけなのだ。

とはいえ、この「E」にこそ、メーカーのプラグインハイブリッドへの哲学が込められていると、筆者は考える。トヨタはエンジン主体のハイブリッドシステムに軸足を置き、三菱自動車はモーター主体のEVに軸足を置いている。PHV/PHEVを含む次世代車がどのように進化するのか、注目したい。(文:猪俣義久)

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