キビキビとした走り味のエレガントスポーティセダン
ドイツ本国よりも1カ月ほど先駆けて、2005年7月、アメリカ・ハリウッドのキックオフパーティでデビューを飾ったフォルクスワーゲン ジェッタ。その先行期間1カ月間ですでに4万5000台を売上げたというから驚いてしまう。日本では、ゴルフやパサートと比較するといまひとつ地味な存在だが、実はアメリカでは大人気のモデルなのだ。
ジェッタという名前は日本では懐かしさを感じさせるが、実はジェッタ(第2世代)→ヴェント(第3世代)→ボーラ(第4世代)→ジェッタ(第5世代)と日本では名前が変遷しただけのこと。その間もずっとジェッタ名で愛されてきたアメリカでは、全世界で660万台中の220万台という、驚愕の実績を残してきた。この数字は、アメリカ市場での欧州車販売実績としてもトップである。
ということで、新型ジェッタは日本で言えばボーラのフルモデルチェンジということになる。ジェッタのベースはゴルフだが、単なるゴルフのセダン版というよりも、ひとクラス上のクルマと位置づけられるのが特徴だ。
ゴルフⅤベースとなった今回の新型でもそのポジションは変わらない。デザイン的に、クロームメッキのワッペングリルが採用されていたり、上級車のパサートばりのLEDテールランプが奢られていたりするのを見てもあきらかだ。
インテリアについてはパッと見ではゴルフと同じ印象を受けるが、マテリアルの質感がグッと向上している。空間的にはベースがゴルフⅤへとひと回り大きくなっていることもあり、先代ボーラよりも広くなった。
とくにリアシートは、膝まわりが狭いと言われてきた先代よりも、かなりゆとりが設けられている。さらに、後ろに向かってルーフが傾斜するボディデザインに合わせてゴルフよりも座面の位置が下げられているので、足を投げ出して座る格好となり、ニークリアランスが広くなっているのだ。
最近、とみにクルマのボディサイズがどんどん大きくなっていくが、その理由を本国のスタッフに聞いたところ、「若者の体格が大きくなっている」「最近のトレンドだから……」といった答えが返ってきた。体格が大きくなっていることについては仕方ないとしても、 トレンドに関しては開発者としてもこのサイズが限界だという意識があるとのこと。今後はダウンサイジング化の流れがくるのかもしれない。
もうひとつジェッタのニュースとして、トランクの広さに触れないわけにはいかないだろう。VDAで527Lという容量はパサートよりも広く、フォルクスワーゲン史上初めてゴルフバッグが横に積める広さだというのだ。実用性の高さからいうと、先代ボーラから2ステップくらいアップした印象だ。
欧州仕様ではガソリンエンジン7種類、ディーゼルエンジン2種類が用意され、それにMT、AT、DSGが組み合わされる。また足まわりにはスポーティ仕様も用意されており、多彩なラインナップを誇る。
今回は、1.6Lと2.0L FSI(スポーツライン)のMT、そして1.9L TDIのDSG、2.0L TDIのMTに試乗することができた。
結論から言ってしまうと、感動したのは1.9L TDIのDSGモデルだった。欧州では今や、ディーゼルモデルはガソリンモデルに比べてスポーティなグレードと位置づけられているようで、2.0FSIスポーツラインほど硬くもなく、ガソリン1.6Lより高速で安定感のある足まわりは絶妙で、胸のすくような爽快感を味わわせてくれた。
もうひとつ、2.0TDIと1.9TDIのディーゼルエンジンは、1.9Lの方が新しく開発されたものなのだが、その明らかな進化度合いにも驚かされてしまった。静粛性の高まり具合はもちろんのこと、ペダルレスポンスが格段に違う。駐車場からソロソロと発進するだけでもその違いがわかるほどなのだ。
日本への導入は1.6&2.0FSIのガソリン+ATモデルのみになりそうだが、安定感を全面に押し出したゴルフに比べ、キビキビ感をアピールしたエレガントスポーティセダンといった走り味は、幅広い層に受け入れられるのではないだろうか。日本への導入は2006年春になりそうだ。(文:竹岡 圭/Motor Magazine 2005年11月号より)
フォルクスワーゲン ジェッタ 2.0FSI(2005年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4554×1781×1459mm
●ホイールベース:2578mm
●車両重量:1319kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1984cc
●最高出力:150ps/6000rpm
●最大トルク:200Nm/3500rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FF
※欧州仕様