1980年-90年代、超ド級のレーシングカーが壮絶なバトルを繰り広げていた。最高出力1000ps、最高速400km/h、決められた燃料使用量でレースをいかに速く走り切るか、メーカーが知恵を絞ったことで様々なマシンが誕生したこともレースを面白くした。この連載企画では、そんなCカー時代を振り返ってみよう。最終回は「トヨタ91C-V」、そしてその直系で、トヨタ最後のグループCカーとなる「トヨタ94C-V」だ。

Cカー時代の残り火で激闘、しかしル・マン制覇はならず

トヨタのグループCの代表格として取り上げる94C-Vは、正確に言えばグループCではなく、1994年のル・マン24時間レースの参戦車両規定のひとつ、LMP規定のマシンである。

トヨタがワークスとして初めてル・マン24時間に参加したのは1989年。本格的なグループCカー用にV8エンジンを開発、トヨタのモータースポーツ関連会社TRDがグループCマシン89C-Vを製作した。そしてそのマシンは、1991年には3.6L V型8気筒+ツインターボを搭載する名車「91C-V」に進化していた。

しかし、1991年にはグループC規定は3.5L NAの新規定カテゴリー1に移行することになり、排気量無制限の旧規定は消滅することになる。それでも新規定移行への混乱、旧規定の参加容認などもあり、新規定の「TS010」と並行して、「91C-V」はその後も、進化を続けていくことなる。

1994年のル・マン24時間に参加した「94C-V」はその直系の後継車であり、エンジンも91C-Vと同じ3.6L V型8気筒+ツインターボを搭載していた。1994年時点ではすでにスポーツプロトタイプカーによる世界選手権は姿を消し、旧規定グループC及び新規定グループC(3.5L NA)の命運はともに尽きていたが、ル・マンだけは生き残り、参戦台数確保のために旧規定グループCカーに重量や吸気制限、燃料タンク容量制限などのハンデを加えてLMP(ル・マン プロトタイプ)としての参戦を認めていた。

迎え撃ったのはもうひとつのル・マンの車両規定であるLMGT1規定に合致させるために無理やり市販GTバージョンを1台のみ製作して登場してきた、ドイツ・ダウワーレーシングの962LM。つまりはかつての耐久王ポルシェ962Cそのものだった。

レースは予想通り、重量の軽いLMPの94C-Vと燃料タンク容量の大きい962LMの一騎打ちとなり、サードの94C-Vが終始リードする形で残り90分を迎えた。誰もが1991年のマツダに次ぐ優勝を期待したが、突然シフトリンケージにトラブルが発生。土壇場で勝利を逃してしまう。

トヨタの「最後のグループCカー」は2位でル・マンを終えた。優勝こそ叶わなかったが、プライベート体制で快挙まであと一歩まで迫ったサードの代表は、1970年代前半までのトヨタのモータースポーツ部門第7技術部出身で、その後シグマ・オートモーティブを興し1973年にマツダを誘って日本人として初めてル・マンへ挑戦した加藤眞だった。

トヨタが悲願を達成するのはこれから24年後、2018年のことになる。

画像: 1991年のJSPCインターナショナル鈴鹿1000km。この年、トヨタ91C-Vはチャンピオンこそ逃したが、メイクスとしては最多の3勝をあげている。

1991年のJSPCインターナショナル鈴鹿1000km。この年、トヨタ91C-Vはチャンピオンこそ逃したが、メイクスとしては最多の3勝をあげている。

画像: トヨタ91C-Vは年を追うごとにさらに進化し、1994年のル・マンには94C-Vとして参加する。

トヨタ91C-Vは年を追うごとにさらに進化し、1994年のル・マンには94C-Vとして参加する。

トヨタ 91C-V(1991年)主要諸元

●全長:4795mm
●全幅:1995mm
●全高:1000mm
●ホイールベース:2775mm
●車両重量:850kg以上
●エンジン型式:M119HL
●エンジン:V8DOHCツインターボ
●排気量:3576cc
●最高出力:800ps/7000rpm
●最大トルク:85.0kgm/4000rp
●駆動方式:MR

トヨタ 94C-V(1994年)主要諸元

●全長:4800mm
●全幅:1995mm
●全高:1000mm
●ホイールベース:2775mm
●車両重量:967kg
●エンジン型式:M119HL
●エンジン:V8DOHCツインターボ
●排気量:3576cc
●最高出力:800ps/7000rpm
●駆動方式:MR

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