クルマ好きなら一度は憧れたことがあるだろうスーパーカー。その黎明期から現代までをたどる連載企画。第35回は「ランチア ラリー 037」だ。

ランチア ラリー 037(1981-1989年)

画像: 正式車名は「ランチア ラリー」。グループB規定に合わせて200台余りが生産された(207台説や217台説があり)。

正式車名は「ランチア ラリー」。グループB規定に合わせて200台余りが生産された(207台説や217台説があり)。

前回紹介したポルシェ 959と同様に、ランチア ラリーはFIAのグループB車両規則に則って開発された。その名が示すとおり、目的は世界ラリー選手権(WRC)の制覇。正式な車名は単に「ラリー」なのだが、あまりにも一般的な名詞であることから、開発コードである037を付けて「ラリー037」とか「037ラリー」と呼ばれることが多い。ちなみに、後継モデルとなるデルタS4の開発コードは038だ。

当時ランチアは既にフィアット グループの傘下にあり、ラリー 037の開発はフィアットのレーシング部門となっていたアバルトが中心に行われている。

ベースとなったモデルは、小型ミッドシップ スポーツカーのランチア ベータ モンテカルロ。ボディのデザインはピニンファリーナが担当し、ベータ モンテカルロの面影を残したエレガントなスタイリングが特徴的だった。ラリーを目的として開発されたマシンは優美さよりも機能や性能が優先されるのは当然のことだが、そんな中でラリー 037のスタイリングの美しさは際立っており、当時「最も美しいラリーカー」と評されている。

画像: ラリーマシンらしい機能的なインパネ。ステアリングのホーンボタンにはアバルトのサソリマークが入る。

ラリーマシンらしい機能的なインパネ。ステアリングのホーンボタンにはアバルトのサソリマークが入る。

シャシは、ベータ モンテカルロの前後に新開発の鋼管スペースフレームを追加したもの。そのミッドに縦置き搭載されたのは、1970年代後半のWRCで活躍したフィアット 131アバルト ラリー用の2L 直4DOHCにスーパーチャージャーを装着したもの。ターボチャージャーではなくスーパーチャージャーをチョイスしたのは、ラリーでは低回転域のトルク特性が重視されたため。最高出力は205psにまでチューンされた。

当時すでに4WDが有利と目されていたグループBカーによるWRCだったが、ラリー 037はミッドシップRWDを採用している。開発期間などの問題もあり、ターマック(舗装路)のラリーを重視してラリー 037を繋ぎのモデルとして投入し、その間に次のモデルの開発を目指したとも言われている。だが実際、1983年のWRCではターマックのラリーに圧勝し、メイクスチャンピオンを勝ち取る。ラリー 037は、グループB最後の2輪駆動チャンピオンマシンとなった。

日本では、当時ランチアのインポーターだったガレーヂ伊太利屋から公道仕様のストラダーレが数台輸入されており、価格は980万円だった。

画像: リアウインドー越しにパワーユニットが見える。その美しいスタイリングは、さすがはピニンファリーナ。

リアウインドー越しにパワーユニットが見える。その美しいスタイリングは、さすがはピニンファリーナ。

ランチア ラリー 037 ストラダーレ 主要諸元

●全長×全幅×全高:3915×1850×1245mm
●ホイールベース:2440mm
●重量:1170kg
●エンジン種類:直4 DOHCスーパーチャージャー
●排気量:1995cc
●最高出力:205ps/7000rpm
●最大トルク:23.0kgm/5000rpm
●駆動方式:縦置きミッドシップRWD
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:前205/55R16、後225/50R16
●当時の価格:980万円

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