本質を忘れることなく、コンパクトカーが上質になるのは大歓迎だ。今回は上位モデルとなるハイブリッド仕様を試した。(Motor Magazine 2020年5月号より)

ターゲットは成熟した世界市場

昨年末にトヨタ/ダイハツの新型コンパクトSUVライズ/ロッキーに乗って驚いた。実にしっかりとしていて、いいクルマだと感じたのだ。ダイハツが開発したコンパクトモデル用の新型プラットフォームDNGAの高いポテンシャルは、それまでのコンパクトモデルの常識を一新するものだと理解できた。

しかし、コンパクトモデルに属する新型ヤリスではそのDNGAではなくて、トヨタが新開発したTNGAプラットフォームの第4弾GA-Bが採用される。エンジニアになぜ共用しないのかと聞くと、「ヤリスは成熟した世界市場で競争するモデルですから」という返答があった。その時はエンジニアの真意がわからなかったのだが今回、新型ヤリスのハンドルを握って走り出してすぐ、その返答に込められていた意味を実感することができた。

控え目に見ても、ひとクラス上の走り味だと思えた。試乗車は1.5L直3エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドのFFモデルで、メイングレードの「G」に15インチタイヤ&ホイールや3灯式フルLEDヘッドランプ、高度駐車支援システム、ブラインドスポットモニターなど総額70万円弱のオプションを装備。

画像: コンパクトモデルとはいえワイド感に溢れた個性的なデザインで強い存在感を放つ。すべてがグローバルな仕上がり。

コンパクトモデルとはいえワイド感に溢れた個性的なデザインで強い存在感を放つ。すべてがグローバルな仕上がり。

スタートスイッチを押して、両眼のように見えるデジタルメーターでセレクターがDに入っているのを確認してから走り出す。バッテリーの状態にもよるが、この時はモーターだけで静かに発進、その後からエンジンが始動したが、力感のある反応でスムーズに速度を上げていく。

そして乗り心地がいい。ボディがとてもしっかりとしている印象で、サスペンションがきちんと動くことができているように感じられる。路面が荒れていたり段差があれば、当然その細かい振動は伝わってくるし、初期のあたりが硬いのか低速だと細かいピョコピョコした動きを感じるが、それが不快だとまでは思えない。これまでの経験でいえば、走り味としては、並みいるCセグメント級のモデルたちをもライバルとして想定できる実力を備えているのではないか、と感じた。

ボディサイズはBセグメントらしいコンパクトさで、内装はシンプルだが質感も好ましい。35.8km/LというWLTCモード燃費にも圧倒される。そして何より走らせて楽しい。トヨタの本気が込められた新型コンパクトモデルだと思う。(文:香高和仁)

画像: パワートレーンは1.5L直3DOHCエンジン+ハイブリッド。

パワートレーンは1.5L直3DOHCエンジン+ハイブリッド。

■ヤリス ハイブリッド G 主要諸元

●全長×全幅×全高=3940×1695×1500mm
●ホイールベース=2550mm
●車両重量=1060kg
●エンジン= 直3DOHC
●総排気量=1490cc
●最高出力=91ps/5500rpm
●最大トルク=120Nm/3800-4800rpm
●モーター最高出力=80ps
●モーター最大トルク=141Nm
●駆動方式=FF
●トランスミッション=電気式無段変速機
●車両価格(税込)=213万円

This article is a sponsored article by
''.