クルマ好きなら一度は憧れたことがあるだろうスーパーカー。その黎明期から現代までをたどる連載企画。第55回は「ヤマハ OX99-11」だ。

ヤマハ OX99-11(1992-1993年)

画像: ヘッドランプ間のウイングが一体化されたフロントセクションがユニークなデザインは、ムーンクラフトの由良拓也が手がけた。

ヘッドランプ間のウイングが一体化されたフロントセクションがユニークなデザインは、ムーンクラフトの由良拓也が手がけた。

日本楽器(当時)の2輪車部門が1955年に独立して創業されたヤマハ。それゆえ、ヤマハというと2輪車をイメージしてしまうが、エンジンをはじめ4輪車に関しても高い技術力を持つメーカーだ。ヤマハの技術力に白羽の矢を立てたトヨタは、1960年代の名車トヨタ 2000GTの開発を依頼し、その後もトヨタの高性能エンジン開発をヤマハが受け持ってきたのは、クルマ好きにはよく知られている話だ。

1985年、ヤマハは全日本F2選手権用エンジンとして2L V6の5バルブDOHC「OX66」を開発して投入。その後もOX77(全日本F3000用)、OX88(F1用の3.5L V8)と進化を続け、1991年にはF1用の3.5L V12「OX99」を開発し、さらにこのエンジンを搭載したスーパースポーツカーを計画する。

こうして1992年5月にロンドンで発表されたのが、「OX99-11」だ。F1用のOX99型エンジンを公道でも走行可能なようにデチューンし、カーボンファイバーとアルミニウム製のハニカム モノコックのシャシにミッドシップ搭載。カウルにはFRPだけでなく、アルミニウム製の叩き出しも用いられるという凝ったものだった。

画像: インパネというよりは計器板と呼ぶほうが似合いそうなコクピット。飾り気はないが機能性や合理性を追求している。

インパネというよりは計器板と呼ぶほうが似合いそうなコクピット。飾り気はないが機能性や合理性を追求している。

そのユニークなスタイルのボディをデザインしたのは、GCマシンなどのレーシングカー コンストラクターだったムーンクラフトの「違いのわかる男」由良拓也。風洞実験を重ねてエアロダイナミクスを追求したボディは、フロントセクションは独特のウイングと一体化した形状で、リアウイングなどのエアロデバイスなしに大きなダウンフォースを生み出していた。

ユニークなのはエクステリアだけでなく、インテリアでは前後に二人で乗るタンデムのシート配置(プロトタイプには一人乗りもあった)が特徴的だった。コクピットはタイトで、リアシートの居住性は必ずしも快適とはいえるものではなかったようだ。このあたりは、二輪メーカーらしい発想と言うべきだろうか。

最高速度は350km/h、0→100km/h加速は3.2秒と公称されていたヤマハ OX99-11。生産と販売はイギリスで行われ、1994年には車両価格100万ドル(当時のレートで約1億3000万円)で発売を開始するとアナウンスされていたが、バブル景気の崩壊やヤマハ自体の業績不振などのため、1993年には計画を撤回した。

当時は、ブガッティ EB110ジャガー XJ220、そしてマクラーレン F1など重厚なスーパースポーツカーは次々と登場したが、OX99-11のような動力性能と運動性能の切れ味や俊敏性を求めた、2輪メーカーのヤマハらしい感覚のスポーツカーはなかった。時代の波に翻弄されたが、その存在が日の目を見なかったことは惜しまれてならない。

画像: 風洞実験から生まれた空力に優れたボディデザイン。リアエンド下部はディフューザー形状となっている。

風洞実験から生まれた空力に優れたボディデザイン。リアエンド下部はディフューザー形状となっている。

ヤマハ OX99-11 主要諸元

●全長×全幅×全高:4400×2000×1220mm
●ホイールベース:2650mm
●重量:850kg
●エンジン種類:70度V12 DOHC
●排気量:3498cc
●最高出力:450ps/10000rpm
●最大トルク:40.0kgm/9000rpm
●燃料タンク容量:120L
●駆動方式:縦置きミッドシップRWD
●トランスミッション:6速MT
●タイヤサイズ:前245/40ZR17、後315/35ZR17

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