メルセデス・ベンツ SLS AMG(2009-2014年)
アウフレヒト(Aufrecht)とメルヒャー(Melcher)がグローサスパッハ(Grossaspach)で始めたメルセデス・ベンツのチューナーは、彼らと創業地の頭文字からAMGと名づけられた、というのはクルマ好きには有名な話。1999年にダイムラー・クライスラー(当時)に吸収され、2014年からは「メルセデス AMG」として、「メルセデス・マイバッハ」とともにメルセデス・ベンツのサブブランドとなっている。
メルセデス・ベンツ SLS AMGは、AMGがメルセデスAMGとなる以前に、初めてすべてを独自に開発したスーパースポーツカーだ。前身ともいうべきSLRマクラーレンでは、エンジンは開発したが車両の開発はマクラーレンに委ねられていたのだった。
2009年のフランクフルト モーターショーで発表されたSLS AMGのスタイリングは、1950年代の名車「300SL」をオマージュしたもので、300SLの代名詞だったガルウイング式ドアを踏襲している。シャシにはオールアルミニウム製のスペースフレームが採用され、軽量化と前後重量配分の適正化、そしてボディ剛性のアップが図られている。
長いエンジンルームの後ろ半分にフロントミッドシップ搭載されたパワーユニットは、当時のAMG S63などにも搭載されている6.2L(正確には6208cc)のV型8気筒DOHCがベースだが、ドライサンプ化をはじめとした専用チューニングが施され(型式名もM156からM159に変更された)、最高出力は571ps、最大トルクは650Nmというパワースペックを発生している。組み合わされるミッションは、「AMGスピードシフトDCT-7」と呼ばれる7速DCT。トランスアクスル方式を採用し、ミッションとデフはリアアクスル側に搭載された。
インテリアは航空機のコクピットを意識したデザインで、2眼メーターの中央にはインフォメーションディスプレイが表示され、センターコンソールにはカーナビゲーションやオーディオをはじめとしたさまざまな操作が可能なコマンドシステムのダイヤルが備わるなど、当時のメルセデス車と基本的な操作系は変わらない。スーパースポーツカーといえども扱いやすさを重視していたのは、メルセデスならではと言えるだろう。
2011年にはフルオープンモデルのロードスターも追加された。さすがにドアは普通のスイング式となったが。その後もレーシング仕様のGT3や、電気自動車のプロトタイプ、限定生産車のブラックシリーズなどの派生モデルも生まれ、2013年の東京モーターショーで発表された全世界350台限定のファイナルエディションをもって、生産を終了した。
メルセデス・ベンツ SLS AMGクーペ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4640×1940×1265mm
●ホイールベース:2680mm
●重量:1710kg
●エンジン種類:90度V8 DOHC
●排気量:6208cc
●最高出力:571ps/6800rpm
●最大トルク:650Nm/4750rpm
●燃料タンク容量:85L
●駆動方式:トランスアクスルFR
●トランスミッション:7速DCT
●タイヤサイズ:前265/35ZR19、後295/30ZR20
●当時の価格:2490万円