最新世代のプラットフォームで、FRモデルに通じる走り味
初対面の感想は「お、カッコいい、高級そうだねえ」というもの。8シリーズをはじめとする上級モデルにも通ずるフロントマスクの作りはとても手が込んでいるし、彫りが深いリアデザインはシャープで未来的。とてもエントリークラスとは思えない仕上がりだ。
もっとも、ひとくちに2シリーズといっても現在は3世代が入り混っている。まず、2ドアクーペはこのクラスでは貴重な後輪駆動を今も継承。直6エンジンが選べるなどBMWの伝統を味わえる1台だ。一方、5ドアハッチバックのアクティブツアラーとグランツアラーはエンジン横置きでスペースユーティリティ優先。残る4ドアクーペのグランクーペもエンジンは横置きながら、2019年にデビューした1シリーズと同じ最新世代。それだけに「ツアラー系」を凌ぐ洗練された身のこなしに期待がかかった。
試乗したM235i xDrive グランクーペの乗り味は期待に違わぬ洗練されたものだった。これまでBMWの横置き系モデルはサスペンションストロークをたっぷり使っている印象が薄かったのだが、M235iはBMWの縦置きエンジン系、すなわち上級モデルにどこか通じるゆったりとした乗り心地が持ち味だ。高速道路を流していると、路面の凹凸を長い周期の振幅で受け流し、落ち着いた挙動を示す。「ツアラー系」との違いは明確だ。
装着されているタイヤは、ブリヂストンのTURANZA T005 RFT。上級サルーンにもOEMで装着されるなどバランスの良さには定評がある。ランフラット特有の硬さを伝えるシーンが皆無ではないけれど、高速走行時など「いざ!」という時の安心感はやはり絶大だ。タイヤのスリップ状態に素早く対応し、アンダーステアを絶妙に制御してくれるというタイヤスリップコントロールシステム(ARB)との相性も良さそうだ。
レスポンスに優れたエンジンにしなやかなフットワーク
2L直4ながら306psのハイパワーを誇るエンジンは、素直なレスポンスとフラットなトルク特性が自慢の名機。ギアボックスはCセグメントにもかかわらずトルコン式の8速ATが奢られるが、シフトスピードは素早く、アクセルペダルを踏み込めば瞬時にして加速態勢を整えてくれる。そのレスポンスは、足まわりをもう一段引き締めてもマッチしそうなほどシャープなものだった。
ワインディングロードでの走りは、ここまでの感触からおおむね想像できるとおり。足まわりの動きがゆったりとしているためにコーナリング時の安定感は高い。スットルのオン/オフに伴うステアリング特性の変化が少ないことも、リラックスしてハイペースを保てる要因のひとつに思われた。
実は、M235iにはトルセン式のLSDが組み込まれているのだが、私の感度がよっぽど低いのか、もしくはLSDの利き方を穏やかにしているせいなのか、試乗が終わるまでその存在には気づかなかった。
だからといってコーナリングが退屈だったかといえばそんなことはまったくない。「M」の名がつくモデルにしてはタイヤのグリップレベルがさほど高くないことも手伝って、オープンロードであればときにテールスライドを引き出しながらのコーナリングが楽しめる。しかも、そういった領域でも挙動が落ち着いているので、安心感は強い。この辺のチューニングはさすがBMWというしかない。
後席ヘッドルームはけっしてゆとりたっぷりとは言えない。とはいえ、このサイズで伸びやかなファストバックスタイルを作り上げたデザイナーの腕は大したもの。ちなみにラゲッジルームは広々としているので、多用途性にも優れた4ドアクーペであることは間違いない。(文:大谷達也/新刊ムック「Motor Magazine 輸入車年鑑 2020」より)
BMW M235i xDrive グランクーペ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4540×1800×1430mm
●ホイールベース:2670mm
●車両重量:1590kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1998cc
●最高出力:306ps/5000rpm
●最大トルク:450Nm/1750-4500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●WLTCモード燃費:11.9km/L
●タイヤサイズ:225/40R18
●車両価格:665万円
■BMW 2シリーズ グランクーペ 車両価格(税込み)
218i グランクーペ 1.5Lターボ: 369万円
218i グランクーペ Play 1.5Lターボ:410万円
218i グランクーペ M Sport 1.5Lターボ:448万円
M235i xDrive グランクーペ 2Lターボ:665万円