突出した性能はないが、ロングドライブが心地いい
現行2代目メガーヌの登場は2003年のこと。発表以来、欧州でたちまち大人気となり、2005年には西ヨーロッパで62万台を販売、Cセグメントでナンバー1の座についた。
その人気の秘密は、独創的なスタイリング、キビキビと小気味のいいハンドリング、衝突安全テスト・ユーロNCAPで最高評価の5ツ星を獲得した安全性などがあげられる。とくに、ダブルフロアプラットフォームがもたらす走りの良さは定評あるところだ(2重構造のプラットフォームは前席足下に収納ボックスが設けられていることで確認することができる)。
日本でもメガーヌはルノーの大きな販売の柱になっているが、それでもまだまだ欧州での人気にはほど遠い。その理由はいくつか考えられるが、日本の多くのユーザーが輸入車に求めるプレミアム性とは異なるところに、メガーヌの真価があるからではないだろうか。どちらかというと、日本車に近いテイストを持つ。もっともそれは、そもそも日本車がルノーをはじめとしたフランスの大衆車的魅力を手本にクルマ作りに励んできたという経緯があるからなのだが。
しかし、比べてみると、似ているが、違う。そして、その魅力は乗るほどに身に染みてくる。ハンドルを切った時の操作感、自然で滑らかな身のこなしなど、メガーヌにはクルマが本来求められているものが揃っている。車両価格や装備、サービスなどの面では日本車にかなわないところもあるが、その魅力はなんとも捨てがたい。
ここで今回のマイナーチェンジの変更点を整理しておこう。まず、フロントヘッドランプまわり、リアコンビランプまわりのデザインが変更され、よりシャープで上質なものになった。ボディカラーも新色4色が追加され全7色となり、あわせてホイールのデザインも新しいものになっている。室内では色使いと素材を変更し、メーターデザインも変わった。メカニズム面ではステアリングシャフトのラバーブッシュを廃止してダイレクト感のある操作を実現、2LモデルのATのファイナルを変更して高回転域での回転数を落とすなどの改良が行われている。MTやグラスルーフはこれまで同様に設定されている。
さて、今回は新しいメガーヌの魅力を確認すべく、1.6のATモデルで三島近郊にある「クレマチスの丘」までドライブすることにした。クレマチスの丘は「花・美術館・食」をテーマにした複合文化施設で、ここには自然公園、美術館、別荘、そして日本を代表する名シェフのレストランが集まっている。その中のイタリアンレストラン「マンジャペッシェ」が今回の目的地だ。このお店は東京・千駄ヶ谷に本店を持つ超人気店で、なかなか予約が取れないことでも有名。この三島店は駿河湾でとれた魚介類をはじめ、新鮮な地元の素材を生かした料理が自慢で、東京からやってくるファンも多いという。
朝9時に東京都内を出発、朝の渋滞を抜けて東名高速に入ると次第に交通量が減って、スムーズに気持ちよく走れるようになってくる。メガーヌの走りを確認しながらと考えているうちに、沼津ICまであっという間に到着してしまった。そこから一般道を北上すると15分ほどでクレマチスの丘に着く。東京から2時間ほどの行程だ。
遠くに伊豆の山並み、駿河湾を望む見晴らしのいい丘陵は、ドライブの目的地として最適。点在する美術館や自然公園を巡って、美味しい食事を楽しむというドライブプランもいいだろう。
小旅行が楽しいものになるかどうか、クルマはその重要な要素だろう。走りが気持ちよくなくてはすべてが台無しとなる。メガーヌは取り立てて突出した性能を持たないが、操作感が自然で、気持ちがいい。人間の感性に逆らうことがないという感じ。新しいステアリングシャフトにより操舵感もすっきりしたし、室内も明るくなり、よりルノーらしくなった。(文:松本雅弘/Motor Magazine 2007年1月号より)
ルノー メガーヌ1.6 主要諸元
●全長×全幅×全高:4240×1775×1460mm
●ホイールベース:2625mm
●車両重量:1290kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1598cc
●最高出力:113ps/6000rpm
●最大トルク:152Nm/4200rpm
●トランスミッション:4速AT
●駆動方式:FF
●車両価格:270万円(2006年)
※6速MT仕様は265万円