都会的な雰囲気とワイルドな4WD性能を両立
1984年にジープスタイルを色濃く残した「ランドクルーザー40」からのモデルチェンジとして誕生した「ランドクルーザー70」は、歴代同様ラダーフレームに前後リーフリジッドサスペンション、さらにエンジンはすべてトルク重視のディーゼルのみと、ヘビーデューティの道を突き進んでいた。
そして輸出モデルではランドクルーザー70のモデルチェンジと同時に「ランドクルーザーII」というモデルがラインアップされた。大きな違いは、サスペンションに、リジッド式リーフスプリングではなく、前後にリジッド式コイルスプリングサスペンションを採用したことだ。リジッド式コイルスプリングは、リジッド式リーフスプリングよりも耐久性や走破性がやや劣るが、操作性や乗り心地に優れるレイアウトだ。いわゆる「ライトなランドクルーザー」が登場したのだ。
そして、このランドクルーザーIIは「ランドクルーザーワゴン」、LJ71Gとして、1985年に国内デビューする。当時4WD市場をリードし、ショートボディを持ってい三菱「パジェロ」やいすゞ「ビッグホーン」への対抗馬としてトヨタが送り込んだ。パワーユニットは、2446ccの直4ディーゼルターボエンジン(2L-T型・85ps)に5速MTとパートタイム4WDを組み合わせた。ボディ形状は2ドアショートのみで、装備により2グレードを設定したが、その選択肢はあまりにも少なかった。また、ランドクルーザーシリーズ初の前後コイルサスペンションとワゴンということで登場時は話題にはなったものの、そこまでワゴンにこだわらない時代背景もあり、恵まれたデビューには至らなかった。
ランクル70とは異なるソフトなボディラインの70系プラド
1989年の東京モーターショーで新型のランドクルーザーが出展された。ルックスはランドクルーザー70なのだが何か違う。少し丸みを帯びたボディに角目2灯フェイス、そして前後にリジッド式コイルスプリングサスペンションを搭載した4ドアロングボディモデル。これが1990年に国内販売された「ランドクルーザープラド」だ。
ボディは2ドアと4ドアをラインアップし、非力さが目立っていたエンジンは2446ccの直4ディーゼルターボ(2L-TE型)に換装し、従来エンジンの最高出力85psから97psまで引き上げた。グレードもLX、SX、EXを設定し、LXには5速MTのみだったが、SXとEXには4速ATと5速MTを設定し、選択肢を大幅に増やした。翌年(1991年)、オーバーフェンダーを備えたワイドをラインアップしたことでさらに人気となった。
130psのディーゼルターボ搭載で人気を不動のものに
さらに70系プラドの人気を押し上げたのが1993年に搭載された、130psを誇る新開発の「1KZ-TE型」エンジンだ。2982ccの直4ディーゼルターボエンジンは独自の電子制御式燃料噴射システムを採用し、パワフルでありながら低燃費&低公害を実現。また徹底的に騒音や振動を抑えたことで、ディーゼル車らしからぬ乗り心地とキビキビした走りを披露した。
さらに、優れた放熱性を持つ4輪ベンチレーテッドディスクブレーキやサイドからの衝撃を緩和する「サイドドアビーム」などの安全装備も充実させた。またフロントハブのフリーロックを車内から操作できる「パワーロッキングハブ」や2WDと4WDのスイッチ切り替え、悪路走破性を高めるリアデフロックのオプション設定など、ランドクルーザーらしいハードな装備も揃えた。
今日のランドクルーザーのベースを築いた70系プラド
ただひとつ残念だったのが、新採用されたコイルリジッドサスペンションは、オンロード性能で優れた乗り心地と引き換えに、オフロード走行時の路面追従性が犠牲になったことが、本格派オフローダーからは悔やまれた。しかし、それにも勝る使い勝手の良さと高性能エンジン性能が功をなし、人気車種へと成長を遂げた。
70系プラドが発売される前に、ライトなイメージがランドクルーザーの路線とは合わないので「ランドクルーザーの冠が外されるかも」という噂が流れた。しかし、発売初代から約30年経った今日まで、ランドクルーザープラドは未だ健在だ。今、振り返ると、70系プラドは「オールラウンダー」という困難な道を切り開いた、ランドクルーザーのパイオニア的存在だったといえるだろう。(文:田尻朋美)