2007年、フォルクスワーゲン トゥアレグがフェイスリフトを受けて登場している。内外装のデザインも変更されているが、注目はエンジンのアップデート。日本上陸前にチュニジアの首都チュニスで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年5月号より)

見た目の変更は控え目、大きな変更点はエンジン

最近のヨーロッパでは、売れているクルマのモデルチェンジは、外観には極力変更を加えようとしない。MINIしかり、カイエンしかり。たとえエンジンを一新しても、外観は極力、元にとどめようとしている。

フォルクスワーゲン トゥアレグも、その例に漏れず、外観の変更を最小限にとどめた新型をリリースしてきた。ちなみに、トゥアレグは発表から4年の間で、当初の計画を倍近く上回る30万台を世界中で販売したヒット作である。

7万台を予定していたカイエンも、同様に倍以上の15万台を生産して、トゥアレグの少し前に新型を発表している。プラットフォームとその他の多くのコンポーネンツを共用するトゥアレグとカイエンが、ほぼ同時に新型に切り替わったわけだ。

カイエンがヘッドライトを平べったくし、その分、フロントの開口部を広くして、旧型との違いが一目瞭然なのに較べ、トゥアレグの変わりっぷりはやや大人しい。

TSIエンジンを搭載した新しいトゥーラン、そしてイオスやゴルフ、パサートなど、最近のフォルクスワーゲンに共通するクロームメッキ仕上げのフレーム「ワッペングリル」が最初に目を引くものの、カイエンほどの目新しさはない。

よく見ると、ヘッドライトがボンネットのV字型プレスラインに沿って、後退角が強くなり、少し奥に引っ込んだ。真横から見ると、前後フェンダーの彫りの深さも、カイエンの方が強いから、なおさらわかりにくい。後ろに回ると、テールライトの形状とLEDを用いたライトの光り方が変わっていることがわかる。でも、それも少々だ。カイエンの変わりぶりとは対照的に、トゥアレグは控え目なのである。

チュニジアの首都チュニス近郊で試乗中にも旧型トゥアレグと遭遇したが、確かめないとわからないくらいのものだった。

カイエンのモデルチェンジの主な目的がV8とV6エンジンの直噴化にあったように、トゥアレグのそれもまたエンジンにある。

直噴化は燃費向上とパワーアップを両立する。V8は40psアップの350psに、V6は409ccの排気量拡大分と併せ60psアップの280ps。V8は6速AT「ティプトロニックS」と組み合わされ、244km/h(メカニカルサスペンションでは234km/h)の最高速度と、0→100km/h加速が7.5秒という性能を実現している。

ちなみに、エアサスペンションを装備した方が最高速度が10km/h高いのは、車高を低くすることで空気抵抗を減じることができるからだ。フォルクスワーゲン社のデータでは、燃費は7.24km/L。旧型よりも、0.89km/L向上している。

一方、V6のトルクは360Nm。最高速は227km/h、0→100km/h加速が8.6秒と、V8に著しく差を付けられているというわけではない。

旧型にラインアップされていたW型12気筒エンジン搭載モデルは、2007年下半期に販売開始が予定されている。

画像: フェイスリフトされたフォルクスワーゲン トゥアレグ。内外装の変更は控えめだが、新デザインのホイールの採用や新色のボディカラー追加なども行われている。

フェイスリフトされたフォルクスワーゲン トゥアレグ。内外装の変更は控えめだが、新デザインのホイールの採用や新色のボディカラー追加なども行われている。

好バランスの質実剛健、注目したいV6 FSI

ドアを開けて、運転席に座ってみても、変更点にはすぐに気付かなかった。シートが少し大型化され、メーターパネル内のマルチディスプレイモニターが大型&カラー化されて、見やすくなっている。

インテリアのバリエーションをすべて見ることはできなかったが、旧型よりも選択肢が増え、一番地味なものと一番派手なものとの違いが大きくなった。それでも、スイッチの配置方法などはフォルクスワーゲンらしく機能性と実質第一で好感が持てる。

しかし、ウッドパネルの種類や配し方などに、もう少し遊び心があっても良かったのではないだろうか。トゥアレグと価格的に最も近いランドローバーであるディスカバリーは、現行型になって一気にモダナイズされている。フリーランダーだって、それと見劣りしていない。

その点、兄弟車のカイエンは911やボクスターなどの造形センスをうまく引用し、スポーティな雰囲気を醸し出している。

V8で走り出してみると、カイエンとの違いはすぐに実感できる。トゥアレグは、カイエンほどサスペンションのダンピングが強くないから、当たりが柔らかい。路面の凹凸や自らの挙動を押し返すよりも、受け止めながら前に進む感じだ。乗り心地がソフトなのにもかかわらず、安定感も確保されている。とてもバランスの取れたシャシとサスペンションの仕上がりだ。

直噴化されたエンジンの40ps増加分やドライバビリティの改善などは、明確には体感できなかった。直噴化される前のV8と変わらず、エンジンも中庸をわきまえた特性に仕上がっている。

V8以上に、好印象を得たのはV6だった。排気量アップ分を含んだ60psの増強は明白で、V8と変わらぬペースでトゥアレグを走らせる。V8と同じペースを保つためにはスロットルを深めに踏む必要があるが、それも慣れるだろう。

泥、砂利、踏み固められた砂の上もそれぞれ走った。前後輪に50:50の割合で駆動力を配分する4輪駆動システム「4MOTION」は、滑る路面でも4輪を細かく制御し、姿勢を乱さない。オフロードでの制動距離を最大20%短縮できるというフォルクスワーゲン独自の「ABSプラス」がトゥアレグには標準装着されるが、その介入の仕方は、とても滑らかなものだった。

メカニカルサスペンションとエアサスペンションの、乗り心地や操縦性に関する違いは大きくない。留意するのは、凹凸の大きなラフロードや深い雪道を走るかどうか、だ。そのような場合には、車高を4段階に調整できるエアサスペンションが、頼もしく思えてくるはずだ。

新型トゥアレグは、バランスの取れたSUVという持ち味にさらに磨きを掛けている。日本での価格にもよるが、最もトゥアレグらしいのはV6+エアサスペンションの組み合わせだった。スポーティに走るのだったら、カイエンだろう。Q7は2台と較べるには大きく、直接のライバルではない。(文:金子浩久/Motor Magazine 2007年5月号より)

画像: フォルクスワーゲンのトップレンジを支えるトゥアレグ。内装もフォルクスワーゲンらしく機能性と実質を第一に、丁寧に作り込まれている。

フォルクスワーゲンのトップレンジを支えるトゥアレグ。内装もフォルクスワーゲンらしく機能性と実質を第一に、丁寧に作り込まれている。

ヒットの法則

フォルクスワーゲントゥアレグ V6 主要諸元

●全長×全幅×全高:4754×1928×1726mm
●ホイールベース:2855mm
●車両重量:2238kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3597cc
●最高出力:280ps/6250rpm
●最大トルク:360Nm/2500-5000rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●最高速:218km/h
●0-100km/h加速:8.6秒
※欧州仕様

フォルクスワーゲントゥアレグ V8 主要諸元

●全長×全幅×全高:4754×1928×1726mm
●ホイールベース:2855mm
●車両重量:2332kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4163cc
●最高出力:350ps/6800rpm
●最大トルク:440Nm/3500rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●最高速:244km/h
●0-100km/h加速:7.5秒
※欧州仕様

This article is a sponsored article by
''.