今から20年ほど前、新しい世紀に変わる頃。クルマに対する考え方も変わり始めていた。そんな時代のニューモデルのインプレッションを当時の写真と記事で振り返ってみよう。今回はメーカー系の「ワークスチューナー」が手がけたモデルを紹介する後編だ。

ワークスチューニング試乗会(2002年:後編)

箱根で行なわれたワークスチューナー2002年バージョンの試乗会レポートを、前回に引き続きお届けしよう。箱根は結局1日中霧が晴れず、後半も走りを存分に楽しむわけにはいかなかったが、それでもそのパフォーマンスの一端を味わってみることにした。中でもSTIのコンプリートカーは秀逸であった。

インプレッサS202 STiバージョン

画像: フロントまわりは、ノーマルのスペックCとほとんど変わらない。ルーフベンチレーションも備わっている。

フロントまわりは、ノーマルのスペックCとほとんど変わらない。ルーフベンチレーションも備わっている。

インプレッサWRX スペックCをベースに、STIが作り上げたコンプリートカーだ。360万円というプライスで、400台が限定生産される。

さすがにワークス系のチューナーが作り上げたコンプリートモデルだけあって、その出来映えは今回の試乗車の中ではベストだった。旧型ベースの201よりも外観は洗練されており、派手すぎなくていい。カーボンファイバー製のリアウイングは、本物志向の人にはたまらないアイテムだろう。ブラックで統一されたインテリアの雰囲気もいいし、通常使用での快適性も考慮してエアコン、集中ロック、パワーウインドーは標準装備されており、スペックCより充実している。

最高出力が320psにパワーアップされたフラット4は、4000rpmを超えるとイッキに8000rpmまで吹け上がる。その加速感はハンパではない。それでいながら低速域も扱いやすく、ブレーキの効きもいい。スペックCとの価格差は約65万円だが、装備差を考慮しても、ぜひこのS202を選びたいところだ。限定400台は、すぐに完売するに違いない。

マツダスピード RX-7 Rスペック

画像: JGTCに参戦しているレーシングカーを彷彿とさせるような美しいエアロパーツでエクステリアはまとめられている。

JGTCに参戦しているレーシングカーを彷彿とさせるような美しいエアロパーツでエクステリアはまとめられている。

生産中止目前のRX-7をベースに、さらなるポテンシャルアップを図ったチューニングキットが「Rスペック」だ。サーキットで戦闘力を発揮することを前提に開発されているが、ストリートユースにも対応している。

JGTCのレーシングマシンからフィードバックされたようなエアロパーツは美しく、空力性能はかなり良さそうだ。インテリアも追加メーターやカーボン調のパーツを装着して、スパルタンな雰囲気を漂わせている。

だが、ツインプレートのクラッチはミートポイントがかなり手前で、半クラッチの効かないON/OFFスイッチのよう。発進には、けっこう気を遣わされた。LSDも強すぎて、タイトターンはキツイ。足まわりのセッティングも、かなり固めだ。給排気系をチューンされたロータリーターボの吹けはいいし、サーキット走行を楽しむにはそれなりに面白そうだが、このままの状態では市街地での使用には耐えられそうにない。

走り方や使い方に応じて、パーツをチョイスして自分好みのRX-7に作り上げていけば、オーナーの楽しみは増幅するだろう。

NISMO マーチ Sチューン

画像: わずか1.2Lとは思えない走りっぷりのNISMO マーチ。Sチューンのサスとのバランスも良く、軽快な走りが楽しめる。

わずか1.2Lとは思えない走りっぷりのNISMO マーチ。Sチューンのサスとのバランスも良く、軽快な走りが楽しめる。

NISMOのチューンにはS/R/Zの3段階があり、いちばんマイルドなSチューンは、法的基準をクリアし、ワインディングなど公道上での最適性能を追求したスペックであるという。2003年から開始予定のワンメイクレース用エアロパーツを装着すると、可愛いマーチもちょっぴり強そうな雰囲気が漂う。特にルーフエンドのリアスポイラーは、さり気なく効果的だ。

試乗車は吸排気系のチューンだけだが、1.2Lとは思えないほどフィーリングの良いエンジンに変貌していた。Sチューンのサスペンションとの相性も良く、もともとキビキビした走りっぷりのマーチだが、さらに軽快になっていた。インテリアでは開発中のスポーツシートが装着されていたが、これもなかなかいいホールド感だった。

シート以外のインテリアがノーマルなのと、アルミホイールにセンターキャップが用意されていないのは、もう一工夫欲しいところだ。「マーチは女の子だけのクルマじゃない!」という人には、いいアイテムが揃っているのだから。

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