ヒュンダイ XG300(2002年)
昨年(編集部註:2001年)から日本市場に本格参入した韓国の自動車メーカー、ヒュンダイ。昨年の日本での販売台数は1113台にとどまったが、今年(2002年)はFIFA ワールドカップのオフィシャルパートナーであることもウリにして、5000台を目標としている。そんなヒュンダイのフラッグシップが、今回試乗したXG300だ。本国では「グレンジャー」という名称もつけられているが、日本では単にXG300となっている。
XG300は、日本車ではクラウンやセドリックにあたるフォーマルサルーンだ。サイズ的にはクラウンのロイヤルサルーンをひとまわり大きくしたくらいだ。さまざまな国の高級車を研究したというヒュンダイゆえ、そのスタイリングに安っぽさはない。独立したフロントグリルや、リアコンビネーションランプより一段高められたトランクリッドなど、ディテールも悪くはない。だが、オリジナリティには今ひとつ欠けるかもしれない。
室内は広く、シートの出来もいい。ヒーター付きの本革シートはオプション(10万円)だが、オートエアコン、運転席パワーシート、4エアバッグ、トラクションコントロール & ABSなど、安全&快適装備は日本の高級セダンとほぼ同等のフル装備で、価格は249万8000円! さらに装備を豪華にしたXG300Lでも279万8000円だから、同排気量のクラウンやセドリックより100万円以上も安いのだ。これは、お買い得と言わずにはいられないだろう。
フロントに横置きされるパワーユニットは、3LのV6 DOHC。形状は三菱のものと似ているがヒュンダイ自社製だ。組み合わされるトランスミッションはマニュアルモード付きの5速ATで、前輪を駆動する。このエンジンは静かでスムーズ、かつパワフルでなかなか好印象だ。
乗り味は日本車よりもむしろヨーロッパ車を彷彿とさせるもので、何も知らずに乗せられたら、どこの国のクルマかわからないだろう。サッシュレスドアを採用しているので、高速走行時にウインドーまわりで風の吸い出し音が気になる以外は、走りに不満はない。5速ATはマニュアルモード付きだが、このクルマの性格を考えると無理には必要ないかもしれない。
しかし、ハードが良くて価格が安いだけではクルマは売れない。日本において、それは高級車ではなおさらで、割り切って乗れる人は少ないだろう。クルマ、特に輸入車はイメージ商品なのだ。ヒュンダイがまずすべきことは、ディーラーネットワークの構築と整備を行い、「しっかりしたクルマ作りをしている」というイメージを小さいモデルから築き上げ、ブランドイメージを徐々に高めていくことだろう。また、リセールバリューも大事なポイントだ。
日本市場でも小型セダンのエラントラからミニバンのサンタフェ、SUVのトラジェなど、豊富なラインアップを展開しているヒュンダイ。それぞれのクルマのクオリティは悪くない。安くていいクルマをお探しなら、ぜひ一度、ヒュンダイ車を試してみるといいだろう。(編集部註:ヒュンダイは2010年に日本市場での乗用車販売から撤退しています)
■ヒュンダイ XG300 主要諸元
●全長×全幅×全高:4865×1825×1420mm
●ホイールベース:2750mm
●車両重量:1730kg
●エンジン形式:V6・4バルブDOHC・横置FF
●排気量:2972cc
●最高出力:141kW(192ps)/6000rpm
●最大トルク:260Nm(26.5kgm)/4000rpm
●トランスミッション:電子制御5速AT(マニュアルモード付き)
●タイヤ:205/65VR15
●車両価格(当時):249万8000円