赤旗中断でハミルトンにQ2敗退の危機
曇り空、この時期のソチとしてはやや高めの気温の中で予選は行われた。結果だけ見れば大きな波乱がなかったように思われるが、予選はスリリングかつドラマチックなものになった。
問題が起きたのは予選Q2だった。メルセデスAMGの2台とレッドブル・ホンダのフェルスタッペンはQ2をミディアムタイヤでクリアすべく進めていた。ところがハミルトンの最初のアタックがトラックリミット違反でノータイムとなってしまい、ボッタスも最初のアタックでは4番手、フェルスタッペンも7番手と、Q2クリアには微妙な順位になった。
さらに問題はここから。Q2も残り5分を切ったところで各車2回目のアタックに入るが、そのラップ中にフェラーリのセバスチャン・ヴェッテルが激しくクラッシュしてセッションは赤旗中断となり、ハミルトンはタイムを記録することなくガレージに戻ることとなってしまった。
Q2の残り時間はわずか2分15秒。なんとかタイムを出さなければいけないハミルトンは、デブリを踏んでパンクの可能性のあるミディアムではなく新品のソフトタイヤを選択。セッション再開後のトラフィックの中、ギリギリでタイムアタックに間に合うと、なんとか4番手のタイムを出してQ2をクリアすることに成功した。
フェルスタッペンは念のため、Q2の終盤にソフトタイヤでコースイン。1回目のミディアムタイヤでのタイムでQ2をクリアできると判断して、途中でタイムアタックをやめた。これでトップ10のうち、ボッタスとフェルスタッペンの2台はミディアムタイヤ、そのほかの8台はソフトタイヤで決勝スタートすることになった。
ホンダ勢の4台は順調にQ2に進出していたが、アルファタウリのダニール・クビアトは赤旗中断から再開されたセッションでタイムを伸ばせず、トップ10から0.053秒差の12番手でQ3進出を逃した。
その後すぐに行われたQ3では、ハミルトンがなんなくポールポジションを獲得。Q3最初のアタックで3番手につけていたフェルスタッペンが、2回目のアタックでボッタスのタイムを上回って2番グリッドを獲得した。なお4番手以降は大接戦で、Q3に進出していたガスリーとアルボンは僅差で9番手、10番手となった。
ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは、決勝レースに向けて「フェルスタッペン選手が2番グリッド・フロントロウを獲得しました。チームにとってこのサーキットでの予選ベストリザルトで、いい結果だと思います。一方、ホンダのパワーユニット勢3台が予選Q3に進出したものの、混戦の中でアルファタウリのガスリー選手が9番手、レッドブルのアルボン選手が10番手と、こちらは厳しい結果となりました。また、母国GPとなったクビアト選手は赤旗の影響により難しい戦いになったQ2で、わずか0.05秒差でQ3進出を逃し12番手と悔しい結果になりました。日曜日は、フェルスタッペン選手はミディアムタイヤでフロントロウからのスタートとなり、他のマシンもそれぞれ入賞可能なポジションからのスタートとなります。レッドブル、アルファタウリともに金曜のロングランのペースもよかったので、レースに向けて期待を抱いています。なお、このグランプリからフェルスタッペン選手と、ガスリー選手、クビアト選手の3台のマシンは、新たなエンジン、ターボチャージャー、MGU-HとMGU-Kを投入しました。これは年間のパワーユニット使用計画に沿ったもので、ムジェロでのトラブルなどとの関連性はありません」とコメント。ドライバーは次のように語っている。
マックス・フェルスタッペン
「2番手に入れるとは予想していませんでした。今までの予選の中でもベストの一つだったと思います。Q1、Q2はマシンバランスに苦しみましたが、Q3に向けて安定するように改善したところ、特に2回目の走行でうまく機能しました。もちろんポールポジション獲得や優勝に向けて戦えることが一番ですが、今の状況ではメルセデスの2台に割って入りフロントロウを獲得できたのは、満足できる結果だと思っています。日曜日のレースは路面がきれいでない側のグリッドからスタートするので不利な面もありますが、ミディアムタイヤでスタートするというアドバンテージもあります。スムーズなスタートができれば、ここではその後のトウの影響が大きいので、ターン2に入るまでに、何かを起こせるかもしれません」
アレクサンダー・アルボン
「予選Q3でなぜタイムが伸びなかったのか、この後エンジニアたちと一緒に分析する必要があると思っています。Q1とQ2はまずまずだったのですが、他のマシンがQ3でタイムを上げていた中で、僕たちだけが改善することができませんでした。マシンのポテンシャルを出し切り、僕もいいラップを走れたと思っていたので、なぜこのような結果になったのかわかりません。いくつか小さなことを変えて、あとコンマ数秒上げることはできたかもしれませんが、結果としてはライバルに対してそれ以上の差がついており、とにかく懸命に作業をするしかありません。何台かのマシンがスピンを喫したり、トラックリミットを超えていましたが、それはFP3から予選に向けて風向きが大きく変わったためだと思います。決勝で順位を上げるために、ここから分析を行います。1コーナーまでの距離が長く、あらゆることが起こり得ますので、そのなかで自分たちのできる限りのことを行っていくのみです」
ピエール・ガスリー
「金曜日のフリー走行は難しかったので、予選の結果には満足しています。ショートランで望んだようなパフォーマンスが出せなかったので、予選に向けて自信があったわけではありません。ですので、明日の決勝のスターティンググリッドには満足しています。マシンは決勝に向けていい形に仕上がっていると思います。ロングランでの走りは力強いですし、望んだバランスになっています。中団は手強いライバルが多いですが、決勝ではいい戦いをしたいです。最近の決勝ではアクシデントが多いので、そのようなことが起こった際には確実に機会をモノにしたいと思います」
ダニール・クビアト
「いい走りができましたし、決勝ではいいポジションからスタートできるので、予選の結果には満足しています。Q2での赤旗中断は残念でしたが、決勝はチャンスの多い面白いものになると思います。中断がなかったらQ3に進出できていたと思います。マシンのフィーリングはよかったですし、レースペースではいい走りができると思います。母国GP、決勝ではチャンスを逃すことなく、ポイント獲得を狙います」
タイヤを供給するピレリは「ソチ・オートドロームはピットレーンが長く、制限速度が60km/hであるためピットストップに時間がかかること、またアスファルトが比較的滑らかであることから、ワンストップが主流となるはずです。ただ、その戦略はいくつも考えられます。ソフトタイヤでスタートした場合、12周目にハードに交換、あるいはもう少し引っ張ってソフトに交換が最速となるでしょう。ミディアムタイヤでスタートした場合は、22周目にハードに交換するのがベストとなりますが、戦略的に柔軟性のあるミディアムでスタートすることには利点が生まれてくるでしょう。ミディアムタイヤを装着して2番グリッドからスタートするフェルスタッペン選手にとっては有利な展開も期待できます。いずれにしても、ここでは通常よりさらにタイヤを慎重にマネージメントする必要があります」と分析している。
第10戦ロシアGP決勝は9月27日 日本時間20時10分(現地14時10分)から始まる。なお、日曜日のソチは土曜日よりもさらに暑くなると予想されており、これがタイヤにどのような影響を及ぼすかも注目ポイントとなる。
2020年F1第10戦ロシアGP 予選結果
PP 44 L.ハミルトン(メルセデスAMG) 1:31.304
2位 33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)1:31.867
3位 77 V.ボッタス(メルセデスAMG) 1:31.956
4位 11 S.ペレス (レーシングポイント・メルセデス)1:32.317
5位 3 D.リカルド(ルノー)1:32.364
6位 55 C.サインツ (マクラーレン・ルノー) 1:32.550
7位 31 E.オコン(ルノー)1:32.624
8位 4 L.ノリス (マクラーレン・ルノー)1:32.847
9位 10 P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ)1:33.000
10位 23 A.アルボン (レッドブル・ホンダ)1:33.008
12位 26 D.クビアト(アルファタウリ・ホンダ)