今から20年ほど前、新しい世紀に変わる頃。クルマに対する考え方も変わり始めていた。そんな時代の輸入車ニューモデルのインプレッションを当時の写真と記事で振り返ってみよう。今回は「アルファ156 GTA」だ。

アルファロメオ アルファ156 GTA(2002年)

画像: 前後のバンパースポイラーやサイドステップで武装し、車高もノーマルより15mm低められ、ただならぬ雰囲気を感じさせる。

前後のバンパースポイラーやサイドステップで武装し、車高もノーマルより15mm低められ、ただならぬ雰囲気を感じさせる。

イタリアの名門、アルファロメオのミドルセダン、156に伝統のネーミング「GTA」が与えられたモデルが登場した。GTAというのは1960年代の半ばに名車ジュリア スプリントに設定された伝説的モデルのネーミングで、スカイラインでいえばGT-Rにあたるようなものだ。ただし、本来はGTAのAは軽量を意味し、つまりコンペティション ベースのモデルだったのだが、この156 GTAの場合は156シリーズの中でのトップスポーツグレードを指している。

とはいえ、ノーマルの156とは違うスペシャルな内容が盛り込まれている。まず搭載されるエンジンはシリーズ最大の3.2Lの排気量を持つV6となり、トランスミッションも6速MTとなった。ブレーキはフロントにブレンボが与えられ、タイヤも225/45ZR17へサイズアップ。当然ながらサスペンションも強化され、より低く構えたスタイリングとなっている。

メカニズムだけでなく、ルックスも差別化が図られている。控えめながらもノーマルとは違うとひと目で分かるエアロパーツを装着し、フェンダーはワイド化されている。インテリアでも、専用のバケットシートがハイパフォーマンスを主張している。

走らせてみると、ノーマルとは圧倒的に違う。これまでの2Lの直4や2.5LのV6もアルファロメオらしい官能的なサウンドや軽快な吹け上がりが信条だったが、この3.2Lでは回転の滑らかさや性能的余裕が加わっている。気持ち良さだけでなく、滑らかさや洗練さによって、艶めかしさのようなものも感じさせてくれる。もちろん、パワフルかつ速いことは言うまでもない。

画像: 166やGTVに搭載される3.2LのV6 DOHCのストロークを5.4mm伸ばして3.2Lに排気量をアップし、250psと30.6kgmを発生。

166やGTVに搭載される3.2LのV6 DOHCのストロークを5.4mm伸ばして3.2Lに排気量をアップし、250psと30.6kgmを発生。

サスペンションはそれなりに固められており、ステアリングはロック to ロックが1.75回転という、ノーマルよりさらにクイックなレシオが与えられているので、ノーズの反応もきわめて鋭い。少しハードなコーナリングを試みると、思ったよりも大きなロールを見せるのだが、それでも路面をしっかりとつかみ続けてコーナーをクリアしていく。

これより上の領域で追い込んでいくのは控えたが、ふだんは車両制御安定装置であるASRが効果的に作用してくれる。夢中になれるほどの熱さを奥底に隠し持ったような、懐の深い上質な走りは、単なるスポーツモデルではないと感じさせてくれた。

そもそも、イタリアのセダンは「スポーツセダン」などと謳わなくても、そこにスポーツを感じさせる要素があふれているものが多い。エンジンは、パワースペック的にはたいしたことがなくても、サウンドをはじめ感覚性能は官能的だ。シャシも、安定性が低いようでも走りの快感を与えてくれる。快適=快感とも思えるくらいだ。

アルファ156 GTAは、そんなイタリアのスポーツセダンらしい1台だ。ノーマルの156でも日本のセダンと比べれば十分以上に濃厚な走りっぷりを見せるが、このGTAは濃度がさらに2倍増しといった感じ。とても艶やかなクルマだった。

画像: ワイドなタイヤを収めるために、フェンダーアーチはわずかに広げられ、全幅は10mm、トレッドも前後とも10mm広くなっている。

ワイドなタイヤを収めるために、フェンダーアーチはわずかに広げられ、全幅は10mm、トレッドも前後とも10mm広くなっている。

■アルファロメオ アルファ156 GTA 主要諸元

●全長×全幅×全高:4430×1765×1400mm
●ホイールベース:2595mm
●車両重量:1420kg
●エンジン形式:V6・DOHC・横置きFF
●排気量:3179cc
●最高出力:184kW(250ps)/6200rpm
●最大トルク:300Nm(30.6kgm)/4800rpm
●トランスミッション:6速MT
●タイヤ:225/45R17
●車両価格(当時):544万円

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