ドイツにおいて、フォルクスワーゲン ゴルフとメルセデス・ベンツSクラスのフルモデルチェンジは国民的な行事。新聞や雑誌、テレビでも華々しく報じられる。新型Sクラスの走りは、そんな「お祭り騒ぎ」にふさわしい完成度だ。(Motor Magazine 2020年12月号より)

文句のつけようない高級感漂うインテリア

メルセデス・ベンツが「Sクラス」と公式にカタログに載せたのは、1972年のW116からだった。しかしメルセデスは1951年に近代的な「ポンツーンボディ」を持ったSクラスの前身といえる4ドアリムジン「タイプ220(W187)」を発売しており、この代から数えると累計で400万台を世界に向けて出荷している。

そんな伝統あるSクラスの11代目にあたるW223が誕生、ダイムラー本社に近いシュツットガルト空港を起点に試乗会が開催された。新型クラスは、登場するところから私を驚かせてくれた。自動バレーパーキングシステム(AVP、SEAレベル4)によって、空港駐車場からその出口で待つ私の前に現れたのだ。メルセデスによればこのシステムは、2021年から実用化される予定だ。

秋の気配が深まった薄曇りの空の下で改めて見たニューSクラスは「スマートになったなぁ」という第一印象だった。デザインに大きな変化はなく、もっとも大きな要素はサイズで、ショートホイールベースのテスト車では全長5179mm、全幅1954mm、全高1503mm、ホイールベースは3106mmと発表されている。すなわち現行モデルよリも54mm長く、55mmワイドで、10mmだけ高い。「ロンガー、ワイダーそしてフラット」なのでカッコ良いのだ。

しかも、フェンダーにまで広がったスリークなヘッドライト、シンプルで上品なグリル、リアエンドの切れ長のコンビネーションライトなどが、その印象をさらに強めている。オーナーが近づくと(あるいはタッチすると)自動的に伸びてくる、リトラクタブル式のドアノブを引いてキャビンに入る。そこではもっと大きな変化を発見した。

目に入るのは、大型のディスプレイが2枚。ドライバー正面には横291.6×縦109.4mmの12.3インチタイプ、ダッシュボード中央には239.6×218.8mmの12.8インチタイプが並んでいる。新型の画面サイズは旧モデルよりも64%拡大され、見やすい。眼前のディスプレイには3D表示機能が設定され、数字や情報が立体的に浮かび上がる。

それにしてもアルミ、高級レザー、そしてウッドを使ったインテリアが振りまく文句のつけようのない高級感には言葉を失った。まさに至上の自動車空間に座っているだけで、至福を覚えてしまう。メルセデス・ベンツがこの空間を「ウエルネスオアシス」と名付けた理由は、ここにあるのだ。

画像: 2021年2月に日本上陸が予定されているS500 4マティック(435ps)。ほかに330psの400dも導入される。

2021年2月に日本上陸が予定されているS500 4マティック(435ps)。ほかに330psの400dも導入される。

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