2008年、メルセデス・ベンツCクラスワゴン、アウディA4アバントの登場もあって、Dセグメントワゴンに大きな注目が集まっていた。国産ワゴンが少なくなっている中、輸入Dセグメントワゴンの人気が高まっていた。Motor Magazine誌では、ボルボV70、BMW3シリーズツーリング、フォルクスワーゲン パサートヴァリアントというDセグメントの人気ワゴンの魅力を検証。ここではその模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine2008年6月号より)

走れば走るほど印象が好転していくV70

最新の輸入ステーションワゴンとしてまず真っ先に注目しないわけにはいかない存在。それが、はるばる北欧はスウェーデンからやってきたボルボの新型V70だ。

「ワゴンといえばボルボ」であり、「ボルボといえばワゴン」だと、そんなイメージを抱く人は少なくないだろう。それはこのブランドが発した「エステート」を名乗るステーションワゴンが、実はすでに軽く半世紀という時間を超える、歴史と伝統ある存在である点にも大きな影響を受けているに違いない。

1953年にリリースされたボルボ初のステーションワゴン=PV445には、当時デュエットなる愛称が与えられた。趣味と実用を両立できるモデル、あるいは乗用車と商用車の双方の特徴を兼ね備えた存在という、今で言えばクロスオーバーカー的なキャラクターが、すでにこの時に強く意識されていたわけだ。ボルボはやはりステーションワゴンづくりの老舗であるということがよくわかるエピソードでもある。

一方、V70を名乗るエステートとしては3代目となる現行モデルは、日本では2007年11月のデビュー。今回も、いかにもボルボのステーションワゴンというイメージを強く放つスタイリングで登場した最新V70の、まず大きな特徴は、ついに6気筒エンジン搭載モデルをそのラインアップに加えた点にある。

新型V70のフロントフード内にマウントされるのは、3.2Lの自然吸気エンジンと3Lのターボ付きエンジン。そのいずれもが直列6気筒というデザインであるのも特徴だ。V70はそれを横置きとすることで、「フロントクラッシュ時のクラッシャブルゾーンをより大きく確保」というボルボならではのセーフティフィロソフィへの貢献も実現させているのだ。

そんな新しいV70を目の当たりにすると、実はこのモデルがもはや「LLクラス」とでも呼びたくなるサイズの持ち主であることを教えられる。実際、4825×1890mmという全長×全幅サイズは、日本でパーソナルワゴンとして用いるには、まさにフルサイズ級の大きさ。今回テストに連れ出した3台中でももちろん最大サイズ。従来型比でも全長で100mm、全幅で80mm以上の拡大を果たした新型V70は、「ゆとりあるサイズのステーションワゴンが欲しい」という選択眼で見られた場合の商品性を、一気に高めたことにもなる。

なるほど、ドライバーズシートへ乗り込むと、そんな「大型化」は室内空間の広さからもすぐに実感できる。中でも、横方向への広がり感は特筆すべきもの。そしてそれが例の「スカンジナビアンデザイン」を意識したインテリアの仕上げと相まって、ボルボ車ならではのゆったりとしたゆとり感を演じてくれるのだ。

ラゲッジスペースの仕上がりが、まるでそんなキャビン部分を延長したかのような雰囲気であるのもボルボのステーションワゴンらしさを継承している部分。V70のラゲッジスペースは実用性一辺倒の作りとは一線を画しているのだ。

今回のテスト車は、6気筒モデルではなく、従来型から受け継いだターボ付き5気筒エンジンを搭載する2.5TLE。過給圧をある程度までに抑えたいわゆる「ライトプレッシャーターボ」を採用したこの心臓の最高出力は200ps。ただし、300Nmという最大トルク値は、自然吸気6気筒エンジンの320Nmに肉薄する。

そんな心臓を搭載したこのモデルの動力性能が、しかし予想以上に力強く好印象なものであったのは、そこに組み合わせるATが6速仕様であった効果も大きそうだ。1.7トンを超える車両重量に対しても、まずフルアクセルを与える必要に迫られることはないし、6気筒エンジンと直接比較を行えばさすがにそのスムーズさでは一歩譲るものの、加速時の静粛性も十分に「優れている」という評価を与えることができるものだ。

しかし、このモデルで感心したのは、そんなパワーパックのみではない。むしろ、高速道路上で長時間クルーズを続けると、走れば走るほどに印象が好転をしていくという、そんな懐の深い走りのテイストにこそ、改めて新型V70の良さを実感させられたのだ。

前述のように加速能力が特に長けているというわけではないし、舵の効きもことさら正確性が高いという印象ではない。接地感が飛び切り色濃いというわけでもなく、従って短時間のドライブでの評価では「さほど印象に残らない走り」とそんな程度で終わってしまうかも知れない。

けれども今回、数時間に及ぶ連続したドライブを経験して、再度ボルボ車の真髄に触れた気がした。どこまでも平常心のままでのドライビングを可能としてくれること、それこそがV70ならではの得意技であると気が付いたのだ。

画像: 7年ぶりにフルモデルチェンジを敢行、2007年11月に日本に上陸したボルボV70。

7年ぶりにフルモデルチェンジを敢行、2007年11月に日本に上陸したボルボV70。

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