機能的で買い得感の高いパサートヴァリアント
一方、さすがにV70の水準にまでは達していないものの、実は325iツーリングよりは確実に大きなボディサイズの持ち主なのがパサートヴァリアント。4.8m級の全長に1.8mを超えるという全幅は、多くの人が「フォルクスワーゲン」というブランド名から受けるイメージを遥かに超越した大きさと言えるだろう。「見た目以上に大きい」のが、まずはこのモデルの特徴だ。
実際、このモデルの「大判ぶり」を裏付けるのが、ラゲッジスペースの容量。見るからにタップリとしたパサートヴァリアントのこの空間は、今回の3車中でも最大のデータを誇る。後席使用時で603L、後席アレンジ時で1731Lというそのデータは、実はV70の575〜1600Lという数値をも上回る広大さ。ちなみに、325iツーリングのそれは460〜1385Lで、やはりこちらはそもそも「容量競争」に参戦を企てていないことが明らかだ。
パサートの走りは、良くも悪くも「与えられた仕事を淡々とこなす」という印象の強いものだった。1.8Lの直噴ターボ付きエンジン+6速ATという組み合わせが生み出す動力性能は、出力面でもフィーリング面でも「余剰感こそないものの不足/不満はまったく感じないレベル」。一方、直進性に長け、コーナリングもソツなくこなすフットワークは、多くの人々が抱くであろう「ドイツ車」に対するイメージを裏切らない仕上がりだ。
ただし、静粛性面ではタイヤが伝えるロードノイズ/空洞音が、他の2車より大きいと感じられた。フォルクスワーゲンのハイエンドステーションワゴンであるという点から、そこに格別のプレミアム感を求めるのであれば、このあたりは減点の対象と言わざるを得ないだろう。
もっとも、このモデルの評価にあたっては、その設定価格を抜きには語れない。350万円を下回るというプライスタグは、V70/325iツーリングと比べるべくもないバーゲン価格であると判断できるからだ。
そう、こと「コストパフォーマンス」という観点のみから結論を導くのであれば、今回の3車中圧倒的な強みを示すのがこのモデル。V70が見せたユーザーに対する温かなホスピタリティ精神、あるいは、325iツーリングのダイナミズムへの徹底したこだわりといった個性は見られないものの、「とにかく、機能面でステーションワゴンとして良くできた1台が欲しい」となると、俄然ポテンシャルを発揮しそうなのがこのパサートヴァリアントであると紹介できそうだ。
ひと口に「Dセグメントに属するステーションワゴン」と紹介しても、たちまちこれほどまでの考え方の違いや個性を見つけることができるのが輸入車の面白さ。多くの日本の自動車メーカーが、同じようなマーケティング調査の結果に、同じようなキャラクターのクルマを、同じようなタイミングでリリースする場合が少なくないのに比べると、まだまだ作り手自らが、理想とする考え方に基づき、さまざまな製品を企ててくる輸入車の世界は、乗る人の個性や主張に合わせた「クルマ選び」の醍醐味が遥かに色濃く残されていると感じられるものだ。
だからこそ、そんなクルマたちに乗るというのはまた、そのオーナーの個性を表現する手段にも他ならないと言えるのではないだろうか。そんなことを考えさせられる今回のステーションワゴン3銘柄なのであった。(文:河村康彦/Motor Magazine 2008年6月号より)
ボルボV70 2.5T LE 主要諸元
●全長×全幅×全高:4825×1890×1545mm
●ホイールベース:2815mm
●車両重量:1750kg
●エンジン:直5DOHCターボ
●排気量:2521cc
●最高出力:200ps/4800rpm
●最大トルク:300Nm/1500-4500rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:6速AT
●車両価格:488万円(2008年)
BMW 325iツーリング 主要諸元
●全長×全幅×全高:4525×1815×1450mm
●ホイールベース:2760mm
●車両重量:1580kg
●エンジン:直6DOHC
●排気量:2496cc
●最高出力:218ps/6500rpm
●最大トルク:250Nm/2750-4250rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:6速AT
●車両価格:555万円(2008年)
フォルクスワーゲン パサートヴァリアント TSIコンフォートライン 主要諸元
●全長×全幅×全高:4785×1820×1530mm
●ホイールベース:2710mm
●車両重量:1520kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1798cc
●最高出力:160ps/5000-6200rpm
●最大トルク:255Nm/1500-4200rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:6速AT
●車両価格:345万円(2008年)