「セダンよりスポーティ」な印象の3シリーズツーリング
そんなV70の走り味からすると、見方によってはそのテイストは対極に位置するとも思えたのがBMW325iツーリングだった。
いかにも回転バランスに優れていることをイメージさせるエンジンサウンドを耳にしながら、ステアリングの濃密な反力を手に感じながらのこのモデルでのドライブは、それゆえに常に「クルマを操っている」という事柄を意識させられるものだ。それが「駆けぬける歓び」という、例のフレーズの根源を支えるものという理解はもちろん可能だが、しかしある程度「走りの実感」をオブラートに包み込むことでリラックスしたドライビングの演出を行うV70に対すると、まるで180度異なるアプローチとも思えるのがこのモデルの行き方でもあるのだ。
世界で最もランフラットタイヤの採用に積極的なメーカーの作品らしく、325iツーリングも当然のようにそれを装着する。そして、走り出しの瞬間には「ランフラットタイヤの履きこなしも随分上手くなったナ」と、そんな真円度の高そうな車輪の回転フィールが連想できるのがこのモデルの走り味でもある。
けれども、連続した長時間のクルージングでは、そんな色濃い走りの感覚がちょっとばかり鼻に付くという印象が無きにしもあらず。フラット感はそれなりに演じられるものの、路面凹凸を拾った際の突き上げ感が少々強い乗り味も、そんな印象に拍車をかける。
BMW車ならではのダイナミックなドライビング感覚も、それを連続して長時間味わうと、ちょっとばかりシツコイと思える瞬間がある。これまで何種類か放映されてきたBMW車のTVコマーシャルが、いずれも「コーナリング」というシーンにフォーカスしてきたのはまさに「言い得て妙」なのだ。
そんな325iツーリングのラゲッジスペースは、どちらかと言うとセダンのトランクスペースが、大きなゲートと高い荷室高を採り入れたものへと「変形」した、という雰囲気の感じられるもの。強く前傾したリアウインドウや後ろ下がりのルーフラインも、「まず荷室容量ありきでデザインしたのであれば、決してこうはならなかったはず」というシナリオが想定できるものだ。
一方、BMWらしいそんな割り切りによって生まれたパッケージングは、見る人によっては「むしろセダンよりもスポーティ」と感じさせるスタイリングへとつながる結果になっている。
率直に言って、とくに後席使用時のラゲッジスペースのボリュームは「ステーションワゴンとしては物足りないもの」と思えなくもないが、しかしそんな際立つ個性が許され、オーナーとなる人にはむしろそれがひとつの「勲章」として受け取ってもらえるという比類なきブランド力を身につけているのが、今のBMWとも考えられる。