500の1.4Lモデルが搭載する100psの4バルブDOHCにターボを装着
2007年3月のジュネーブショーで、復活を宣言したアバルト。第一弾のモデルとして、グランデプント アバルトが昨秋に投入されたが、ここまで9カ月で3000台あまりが販売されたという。この数字自体、大成功といえるレベルなのだが、さらにフィアット社を喜ばせたのが、顧客の年齢層だった。60%以上が30歳以下の若者で、さらに30%以上がフィアット社製品を初めて買った人たちだったというのだ。
レトロ趣味のベテランユーザーに受けたのではなく、若者や新規顧客にアバルトのスピリットが支持されたのだから、これほど嬉しいことはないだろう。アバルトの価値は、時が経過しても何ら損なわれることがなかったというわけだ。この辺りの事情は、伝統のブランドも「昔の名前で出ています」というようなイメージでしかとらえられず、また、実際に伝統的なスポーツカーなどに乗っているのはオジサンばかりという日本とはまったく違う。イタリアが羨ましい限りだ。
さてそのアバルト。第二弾モデルとなるのが待ちに待った500(チンクエチェント)アバルトだ。その存在は昨年7月のフィアット500デビュー時から公言されていたが、あれから1年、ついに登場となった。
試乗会が行われたのはグランデプント アバルトと同じ、イタリアはトリノ郊外にあるフィアット社のテストトラック「バロッコ」だ。会場に着くと、10数台の500アバルトが並んでいたが、何かちょっと変な雰囲気。近づいてみると実車と同じような絵が描かれたボディカバーに被われていた。この辺りのセンスは、さすがイタリアだ。
さてその中身だが、エンジンは通常の1.4Lモデルが搭載する100psの4バルブDOHCにターボを装着、135psまでパワーアップしている。トルクも131Nm/4250rpmから、206Nm/3000rpmへと大幅に向上。それに伴い、もちろんサスペンションやブレーキが強化され、また電動パワーステアリングはスポーツセッティングとなっている。
そして注目されるデバイスはTTC(トルク トランスファー コントロール)で、これは安定した姿勢で速くコーナリングするために、左右輪のトルクを電子制御で配分するものだ。さらに最適なシフト選択を促すGSI(ギア シフト インジケーター)が、このクラスとしては初めて採用されている。
インテリアではバケットタイプの本革シート、ステアリングホイール、シフトノブなどに赤いステッチが施されているのが目に付く。これにより上質でスポーティなイメージをうまく演出している。メーターは通常モデルと同様に、スピードとタコが同心円上に刻まれたものだが、その左下にはGSIが設置されている。