2008年、世界的に販売好調なフィアット500(チンクエチェント)に待望のアバルト仕様が加わった。前評判は高く、試乗前から期待は高まるばかりだったが、Motor Magazine誌はイタリアはトリノ郊外にあるフィアット社のテストトラック「バロッコ」で試乗する機会を得た。その模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年9月号より)

高速領域での安定感には目を見張るものがあった

バロッコのテストトラックには、低中速コーナーを基本として、一部高速周回路を通る500アバルト用の試乗コースが設定されていた。走り出すとまず中速コーナーが続くが、サスペンションがよく粘ることに驚く。ロールは少なく安定した姿勢で、しなやかにコーナーをクリアする。そして乗り心地が非常によい。

このあたりのフィーリングはグランデプント アバルトと似ている。街中でも何ら問題なく、快適に走ることができるはずだ。日本車の高性能モデルには、とても街中で走る気にならないハードなものもあるが、アバルトはそういう志向ではない。

エンジンはよく回る。レッドゾーンの6000rpmまで一気に吹け上がる、というほどではないが、小気味よく回転が伸びていく。135psの1.4Lエンジンとしては合格点だ。そして、アクセルペダルを踏み込んだまま高速周回路に入っていく。スピードは140km/h、150km/hと伸びていくが実に安定している。

ステアリングホイールから伝わる路面のグリップ感がしっかりとしており、不安感がまったくない。コースレイアウトの関係で160km/hまでしか試すことはできなかったが、これは凄い。大したものだ。

最後に、TTCはオン、オフを選ぶことができるので、その効果のほどを実感できるはずだったのだが、これについては詳しい作動原理なども含め、改めて報告する機会を作りたいと思う。限られた試乗時間の中で、オン、オフを同じ条件で十分に試すことができなかったからだ。

さて、500アバルトのイタリアでの販売価格は1万8500ユーロ。年内に欧州全体で5000台の販売を目指すそうだが、手応えは十分だそうだ。日本へは2009年の春に導入、価格は300万円少々というレベルになるようだ。ノーマルのフィアット500も人気で、納車にかなり時間がかかるような状況にある日本。イメージリーダーとして素晴らしい仕上がりを見せるアバルトの登場で、フィアット500全体の人気がさらに上がってくるだろう。(文:荒川雅之/Motor Magazine 2008年9月号より)

画像: ステアリングホイールやシフトノブなどに施された赤いステッチがよく目立つ。

ステアリングホイールやシフトノブなどに施された赤いステッチがよく目立つ。

ヒットの法則

500(チンクエチェント) アバルト 主要諸元

●全長×全幅×全高:3657×1627×1485mm
●ホイールベース:2300mm
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1368cc
●最高出力:135ps/5500rpm
●最大トルク:206Nm/3000rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:5速MT
●最高速:205km/h
●0→100km/h加速:7.9秒
※欧州仕様

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