2008年のジュネーブオートサロンでデビューした3代目ランチア デルタは、当時のランチアのコンセプトに則りエレガントなデザインに生まれ変わった。Cセグメントのコンパクトカーというより、上質な仕立ての5ドアサルーンという雰囲気があった。ここでは発表まもなくイタリアで開催された国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年9月号より)

リアシートは余裕たっぷり、まるでビジネスクラスだ

試乗会のベースとなるホテルの前に日本人プレスを乗せた小型バスが着き、スーツケースを順番に降ろしていた。するとそのすぐ後に1台の見慣れないクルマが停まった。何気なく眼を向ける。「なんて伸びやかな美しいスタイルなのだろう」と、思わず見入ってしまう。「このクルマは何?」と、数秒ではあったが真剣に考えた。そして、これこそが今回のターゲットであるランチア デルタとわかったが、事前に持っていたイメージとは、かけ離れていた。

2006年パリサロンでの「デルタHPEコンセプト」と、2008年ジュネーブショーでの生産型を写真で見て知っているつもりだった。「ゴルフのようなCセグメントのハッチバック」と単純な理解をしていた。さらにデルタというと、どうしてもWRCで大活躍した初代のHFインテグラーレを思い出してしまい、それがまた新しいデルタに対して勝手なイメージを抱く原因になっていたようだ。

そう、目の前に現れた3代目デルタは、Cセグメントのこぢんまりした感じではなく、またモータースポーツのイメージとはほど遠い実に優雅で妖艶なものだったのだ。

後のプレゼンテーションなどで、これまでのイメージにとらわれていると理解できない「3代目デルタの本質」が明らかになってくるのだが、とにかくこの「美しい」という第一印象は強烈だった。

さて、その本質を順番に見ていこう。まず大きさについてだが、ランチアはこのクルマを「CDセグメント」であると言っている。全長が4520mm、ホイールベースは2700mmだが、他車と比べるとDセグメントの下に位置するというのが正確なところだ。ゴルフ(全長:4204mm、ホイールベース:2578mm)より、ひとまわり大きい。

プラットフォームはフィアット ブラーボと共用するが、ホイールベースはデルタの方が100mm長い。トレッドはブラーボとデルタは基本的に同じなので、自ずと走りの方向性がわかるというものだ。デルタはワインディングロードを攻めるというタイプではなく、ロングホイールベースのメリットを活かして、高速道路をゆったり流すのが得意なのだ。そもそも抱いていたイメージ、「Cセグメントのスポーティなクルマ」とは、まったく違うことがわかる。

スタイリングをじっくり見ていこう。ハッチバックともワゴンとも言い難いこのスタイルは「3カーズ in 1」だそうで、スポーツカー、エステート、サルーンが一体になったものであるとランチアは説明する。

ボディサイドを見るとリアドアの幅が広く大きいことがわかるが、これでオリジナリティにあふれた伸びやかさを実現している。そして、Cピラーからリアエンドにかけての造形は最大の見せ場で、このあたりのデザイン力には敬服するばかりだ。

また、こうしたボディスタイルにはツートンカラーがよく似合う。いや、ツートンのカラーリングによって、造形の良さが、より鮮明になっていると言ったほうがいいかも知れない。

先鋭的なエクステリアに対し、インテリアはどうなのか。ここには大いなる「意外性」があった。後席の居住性が非常によいのだ。リアドアが大きいのはデザイン上の都合だけではなかった。

実際に後席への乗降性は抜群に良く、また乗り込んで見ると、そのスペースの広さには驚かされる。リアシートは前後に10cmほどスライド調整が可能で、リクライニングもできる。いちばん後ろまで下げれば、前に足を投げ出してもフロントシートに触れることがないほど広い。さらにリクライニングさせれば、旅客機のビジネスクラス並みに寛ぐことができる。

ラゲッジスペースはリアシートのスライド量によって、380〜465Lとなっている。参考までにDセグメントワゴンのBMW 3シリーズツーリングのラゲッジスペースは460Lだ。デルタはさすがに全長が4520mmもあるので、たっぷりとしたスペースを確保することができた。4人乗車の長距離旅行は、ラゲッジスペースの面からも、またリアシートの居住性の面からも、デルタにとって大いなる得意科目と言えそうだ。

画像: フロントウインドウからルーフ、リアエンドにかけて滑らかにラインが流れる。「3 Cars in 1」という考え方から生まれた、新しいデザイン手法だ。

フロントウインドウからルーフ、リアエンドにかけて滑らかにラインが流れる。「3 Cars in 1」という考え方から生まれた、新しいデザイン手法だ。

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