アウディスポーツのDNAを大いに感じた
R8やRSモデルなどハイパワーを誇るアウディスポーツモデルは、公道ではそのパフォーマンスのほんのわずかしか引き出すことができない。その高性能を開放することができるのは、やはりサーキットのようなクローズドコースである。アウディは当然、それは理解していて、新型モデルが投入されると顧客や我々メディアにサーキットでRSモデルの試乗機会を与えてくれるのである。
今回も顧客向け「アウディエクスペリエンスディ」の翌日、「アウディスポーツ サーキット テストドライブ」として富士スピードウェイでの走行機会があった。
走行用に揃えられたのは、R8、RS5クーペ、TT RS、RS3セダン、RS Q3である。さらに特別にeトロン55スポーツバッククワトロ、そして同乗走行用に、GT300参戦マシンのR8やTCR参戦マシンのRS3にも乗る機会が与えられた。
GT300マシンへの同乗はとても貴重な体験だった。ドライバーはヒトツヤマレーシングの川端選手。特別に設置した助手席にシートベルトで固定されると、「縁石も使って攻めてもいいですか」と聞かれ、つい「はい」と答えてしまった。もちろん走行中は会話をする余裕もないほど攻めてくれたが、正直に告白すると、昼食の後でなくてよかったと思った。
鍛えられたサーキットこそRSモデルの独壇場である
ピュアEVのeトロンの試乗では、その圧倒的な加速力を味わった。実にBEVらしいものだが、サーキットも走りやすいということも新発見だ。独特のeトロンサウンドを奏でて走る経験は、なんとも不思議だった。さすがにR8のようにコーナリング最高! というわけではなかったがそれでも十分に高い実力を実感することができた。
どのRSモデルに試乗してもクワトロの安定感、ハイパフォーマンスを味わえた。開発のために鍛えられたサーキットがやはりとても似合うなと改めで感じた。
中でも今回の試乗車では、R8の印象が強く残った。5.2L V10自然吸気エンジンの持てる性能を解き放つ気持ち良さは格別。至福とも言えるひとときだった。背後から聞こえてくるエキゾーストノートも実に痛快だ。一番長いストレートでは、アクセルペダルを床まで踏み込み全開、そこから減速して1コーナーへ。相当な高速域であり、かなりエキサイティングな経験だったが、R8にとっては、それほど難しいことではなかったようだ。ピットに戻ったら、すぐに次のドライバーを乗せてコースインして行った。
やはりR8やRSモデルでサーキットを走るのがとても楽しい。まさにこれこそがアウディスポーツのDNAなのだろう。(文:千葉知充/写真:井上雅行)
試乗モデル主要諸元
■RS Q3=エンジン型式 DNW型、エンジン 2.5L直5ターボ、最高出力400ps、最大トルク 480Nm、全長×全幅×全高 4505×1855×1605mm、価格 8,380,000円
■RS3セダン=エンジン型式 DAZ型、エンジン 2.5L直5ターボ、最高出力400ps、最大トルク 480Nm、全長×全幅×全高 4480×1800×1380mm、価格 8,690,000円
■RS5クーペ=エンジン型式 DEC型、エンジン 2.9L V6ツインターボ、最高出力450ps、最大トルク 600Nm、全長×全幅×全高 4715×1860×1365mm、価格 13,400,000円
■TT RS=エンジン型式 DAZ型、エンジン 2.5L直5ターボ、最高出力400ps、最大トルク 480Nm、全長×全幅×全高4200×1830×1370mm、価格 10,260,000円
■R8クーペV10パフォーマンス5.2FSIクワトロ Sトロニック=エンジン型式DMW型、エンジン 5.2L V10、最高出力620ps、最大トルク 580NNm、全長×全幅×全高 4430×1940×1240mm、価格 30,310,000円
■eトロン スポーツバック 55 クワトロ=モーター型式EAS-EAW型、定格出力 165kW(224ps)、最大出力 300kW(408ps)、最大トルク 664Nm、一充電走行距離(WLTCモード) 405km、交流電力量消費率(WLTCモード) 245Wh/km、総電圧 397V、総電力量 95kWh、全長×全幅×全高 4900×1935×1615mm、価格 13,270,000円