環境対策システムを満載、ハイブリッドは2010年登場か
この新しいボディに用意されるエンジンは、トップモデルの750iに4.4L V8ツインターボ、740iには3L直6ツインターボ、さらに730dには第3世代コモンレールディーゼルターボの3L直6の3種類だ。
またこれらのエンジンと組み合わされるトランスミッションは、すべて従来通りZF製電子制御6速オートマチックである。しかし、それは改良されており、シフトチェンジに要する時間は平均50%短縮された。
またニュー7シリーズにも環境対策システムである「エフィシエント・ダイナミクス」が搭載された。そのコアとなるシステムは、ブレーキエネルギー回生によるエネルギーマネージメントである。このシステムを通して十分な電力が溜まると、ジェネレーターはカットオフされて、加速時の負荷を軽減する。
また補機類におけるエネルギーの消費も抑えられている。たとえば燃料ポンプやステアリングサーボアシストのポンプは、効率アップのため細かく制御され、エアコンもオフの状態ではコンプレッサーがエンジンから切り離されて負荷を軽減している。さらに740iと730dにはアクティブ制御式のラジエターシャッターが設けられて、冷却気が不要な場合には積極的に閉じて空気抵抗を低減させる。
いまやビッグリムジンといえどもエコロジー的なアプローチなしには世の中の賛同を得られないのだ。ちなみにメルセデス・ベンツとの共同開発によるツーモードハイブリッドの7シリーズへの応用は早くても2010年以降だろう。
サルーンとして快適性とスポーツセダンとしての運動性能
BMWは7月初めのスタティスティックプレゼンテーションに続いて、夏休み直前の7月中旬に南仏にある自社のテストコースで、ダイナミックワークショップを開催した。まだテーピングが残されている20台ほどのプロトタイプを使ってのダイナミックデモンストレーションである。
最初に行われたのは今回の7シリーズ最大の売りである「ドライビング・ダイナミック・コントロール」の検証である。このシステムで「コンフォート、ノーマル、スポーツ、スポーツプラス」という4段階のステージをあらかじめ設定し、それを様々なコースで試すというものだ。
使われたテスト車両はすべてV8ツインターボを搭載した750iと750Liだったが、ダイナミック性能についての検証を前者で、そして主に乗り心地の検証を後者で行った。当然のことながら我々も自らステアリングを操って、技術講習における内容を体験することができた。
まず、高速レーンチェンジ、スラローム、そしてウエットハンドリングの3つのコースを750iで走るわけだが、すぐにはっきりわかったのは「コンフォート」と「スポーツプラス」の大きな差だけだった。一段階の設定の差はなかなか微妙である。
続いて750Liで同じコースに出て、「コンフォート」での検証を繰り返した。驚いたのはランフラットタイヤを装着しているにもかかわらず、小さな凸凹の多い路面でもほとんどショックが感じられず、よい乗り心地だったことだ。
また、ここではインテグラル・アクティブステアリングの効果も検証することができた。BMWによれば、コーナリング時に、フロントのアクティブステアリングとのネットワークにより、リアホイールを的確に動かし、クルマの挙動をスムーズにするということだ。同時に低速では逆位相の動きによって、回転直径は最大で70cmほど小さくなる。今回のテストでは、とくにロングホイールベース(+140mm)の750Liで、このシステムの効果を大いに実感した。
こうしたダイナミックワークショップで、新しい7シリーズの様々な顔が明らかになった。最大の成果はこのビッグサルーンは間違いなくゲスト接待用の送迎サルーンとして十分な快適性を提供すると同時に、パーソナルスポーツセダンとしての高い運動性能の2つを非常に高いレベルで持ち合わせていることがわかったことだ。実に奥行きの深いハイパーサルーンであると言える。(文:木村好宏/写真:Kimura Office)