2008年、メルセデス・ベンツは各モデルのアップデートとリフレッシュを精力的に行った。メルセデスの手法は、世代ごとにすべてを一気に変えるのではなく、新しい技術やパワートレーン、アイデアをその時々で躊躇なく盛り込むやり方。5代目SLクラスもその例に漏れず、まるでフルモデルチェンジのような変更を行っている。Motor Magazineではドイツ車特集の中で、マイナーチェンジされたSLの日本上陸にあわせて行われたSL63AMGの試乗とともに、同じくマイナーチェンジされたSLK、その後登場が予定されていたA/Bクラスの魅力についても考察している。今回はその興味深いレポートを探ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年9月号より)

様々な技術を投入し環境への対応を加速

このように、持てる技術を惜しみなく注ぎ込んで魅力のアップデートを図るメルセデス・ベンツの姿勢は、SLを筆頭として5月にマイナーチェンジを受けた各モデルに共通して見られる。

SLKは前記したダイレクトステアリングの採用に加え、SLK350のエンジンが32psのパワーアップを達成。CLSはエンジン出力に変更はなかったものの、7Gトロニックにブリッピング機能を追加している。

5月に変更されたモデルはそれぞれスポーティなモデルなので「走り」を中心とした改良が目立つこととなったが、では、それ以外のメルセデス・ベンツの今後はどうなのであろうか。

日本導入が間近なモデルとしては、春に本国で発表されたA/Bクラスのマイナーチェンジがある。こちらは実用コンパクトカーということで経済性とエコ度を高める方向の改良が目立つ。

まず「BlueEFFICIENCY」と呼ばれるパッケージが開発された。これはエンジンの効率アップと発電制御の最適化、軽量&空力の低減、転がり抵抗の小さいタイヤの採用などを総合的に行うことでCO2排出量を低減するもの。さらにアイドリングストップを行うEcoスタートストップや、BクラスにはガソリンとCNG(天然ガス)を併用するバイフューエルモデルも登場する。

メルセデス・ベンツのような大型車を数多く持つブランドでは、CO2排出の総量規制の中で、今後小型モデルの排出量をどれだけ低減し、それをどれだけ売れるかが大きな意味を持ってくる。A/Bクラスは2005年/06年に新型が登場した比較的新しい世代のクルマなので、今現在できうる環境対策のすべてを今回のマイナーチェンジで施した、という印象が強い。

その次に来るモデルは、現行モデルが2002年デビューとかなり時間の経っているEクラスということになろうが、こちらの方はもうしばらく時間が掛かりそう。前作のW210のモデルライフは7年だったから、来年には何らかの動きが見られるはずだが、とりあえず今秋のパリサロンに新型を連想させるようなモデルの展示はなさそうだ。

世代的に旧くなったことで、本来メルセデス・ベンツが得意とするEセグメントでライバルに水を開けられているのは事実。そこで新型の登場前に現行モデルの大掛かりなフェイスリフトが行われる可能性は否定できない。

現時点でのメルセデス・ベンツは、最新プラットフォームであるCクラスのモデル展開が一段落したところで、次なる戦略に向けて力を溜めている時期と考えて良いだろう。昨年のフランクフルトモーターショーでブルーテックディーゼルやハイブリッドモデルの展開を明らかにし、環境対応への道筋を付けたのは記憶に新しいが、今後はそれらをどういうカタチで実践していくのか。いずれにせよ我々はそれをこれから目前にするわけである。

泰然自若としているように見えて、起こすアクションのひとつひとつに意味のあるメルセデス・ベンツだけに、今後もその動静を注意深く見守りたい。(文:石川芳雄/写真:永元秀和)

画像: メルセデス・ベンツ SL 63 AMG。随所の光沢仕上げされたカーボンファイバーインテリアパネルがAMGらしい精悍さを醸し出している。365mm径のAMGパフォーマンスステアリングはパフォーマンスパッケージに含まれる。

メルセデス・ベンツ SL 63 AMG。随所の光沢仕上げされたカーボンファイバーインテリアパネルがAMGらしい精悍さを醸し出している。365mm径のAMGパフォーマンスステアリングはパフォーマンスパッケージに含まれる。

メルセデス・ベンツ SL 63 AMG パフォーマンスパッケージ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4600×1820×1300mm
●ホイールベース:2560mm
●車両重量:1980kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:6208cc
●最高出力:525ps/6800rpm
●最大トルク:630Nm/5200rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:7速AMT(AMGスピードシフトMCT)
●車両価格:1910万円(2008年)

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