新機構を惜しみなく投入、隙のないラインアップを展開
2005年から07年にかけてブランニューモデル3機種(CLS、R、GL)のデビューを含め、ラインアップの大半をリニューアルしたメルセデス・ベンツ。
新車攻勢が一段落した今は熟成の時期と言えるようで、この5月に発表されたマイナーチェンジモデルだけでもCLS、SLK、SLの3車を数える。内容を一新したニューモデルの登場こそ少ないものの、性能のアップデートと外観のリフレッシュを精力的に展開中というわけである。
唯一の例外と言えるのが2007年にオールニューとして登場したW204新型Cクラスで、これはメルセデス・ベンツの中核を成すモデルのため、本年2008年4月に日本に登場したステーションワゴンや、今号に海外試乗記のあるコンパクトSUVのGLKなど、その新規プラットフォームを使うバリエーションの追加が盛んに行われている。
こうした傾向はまだ続くはずだ。ノッチバッククーペとカブリオレを揃えるCLKクラスは、まだ先代のW203ベースのままのためリニューアルが間近に迫っていると考えられる。
一方、従来Cクラスのボディバリエーションのひとつとされていたハッチバックの「スポーツクーペ」は、CLCクラスという独立した名称が与えられ、先代W203をベースに1100点のパーツを新開発する手法でこの6月に本国でのフルモデルチェンジを果たした。アバンギャルド系新型Cクラスと同じ雰囲気となったエクステリアは、スポーツクーペのキャラクターにマッチしている。
旧プラットフォームのキャリーオーバーはメルセデス・ベンツとしては珍しいことだが、CLCは若い世代を対象とした同ブランドへのエントリーモデルという位置づけにあるため価格を抑える必要があるのだろうし、ブラジルでも生産される都合から、より習熟度の高いシャシを選んだと考えられる。
もちろん性能的な部分のアップデートは確実に行われており、CLC200コンプレッサーの出力はセダン/ワゴンと同じ184psながら、燃費を10%近く改善している。さらに切り角によって反応の異なるダイレクトステアリングが採用された。
ダイレクトステアリングはマイナーチェンジ後のSL(日本導入モデルには未設定)や、SLKにも採用された新しい技術。SLKで試した印象では、ハンドル操作角左右6度までは15.8とややスロー、6度から100度では15.8〜11.5と変化しシャープな回頭性を得て、パーキング領域の100度以上では11.5の速いレシオで取り回しを助ける。ラックのピッチを不等としただけのシンプルな機構だが、自然なフィールで扱いやすかった。
メルセデス・ベンツの各モデルの熟成は、常にこうしたパターンである。つまりモデルチェンジですべてを新しくし、後は小変更に終始するのではなく、その時々で世に出せる技術を素早くプロダクトに盛り込むことで性能のアップデートとモデルライフの充実化を図っていく、という手法だ。