乗り心地とハンドリングが高いレベルで両立している
路面のうねりやオウトツが大きくなると、サスペンションのストロークの長さが生きてくる。高速道路でも舗装状態が悪いところ、うねりや段差の大きい部分でボディが沈み込むようなケースでも、サスペンションはちょうど良く縮んで受け止める。バンプしたときに底突き感はまったく感じられない。そこから戻る動きも一発で収まり、フワフワしない。
コーナー途中で道がうねっているようなワインディングロードを走ると、208の良さが際立つ。サスペンションは伸び縮みするもののボディの上下動は最小限に抑えられている感じで、うねりに影響されずに走れる。
舗装にオウトツがあったり、荒れた場所でも何くわぬ顔で通過できる。重量級モデルならわかるが、このコンパクトなサイズの軽量ボディでここまで高いレベルとなっている点が凄い。
サスペンションは決してヤワではない。通常の走行ではしっかりした感触で、それほど大きくストロークするとは思えないが、いざとなるとちゃんと動いてくれるのだ。そして通常のしっかり感が、ハンドリング性能の良さにつながっている。
これはボディの剛性感の高さにも助けられている。ハンドルの中立より少し切ったところから正確に反応して、舵角に比例したヨーが出る。コーナリング中も、その先まで切り込むとちゃんとヨーがついてくる。
アクセルコントロールは、オンで膨らみ気味にしたり、オフで内側に向けたりということもできるが、ハンドルが効く範囲が広いのも安心だ。どこを走っていてもドライバーが狙ったラインをトレースする能力は高い。
日本カー・オブ・ザ・イヤーの10ベスト試乗会で袖ヶ浦フォレストレースウェイを走った。ちょっとウエットという路面で、ハンドリングが自慢のはずのGRヤリスでは前が滑ったり後ろが滑ったり忙しかったが、e-208では結構ハイペースながらスムーズなグリップ走行ができた。E-208はミューが低い路面でもグリップ限界が掴みやすいし、挙動が穏やかなので安心感があった。
208はガチッと固めてハンドリング性能を高めるのではなく、しなやかに動くサスペンションで路面をうまく掴むようにしている。これが乗り心地とハンドリングを両立できている理由だろう。
昔はダンパーを内製していたこともある。現在はサプライヤーから供給されているようだが、ダンパーに対して鋭い目を持ったエンジニアが大勢いるはずだ。だから今でも質の高いサスペンションに仕上げられるのだろう。日本メーカーが次に目指すべきはドイツ車ではなく、フランス車だと思う。(文:こもだきよし/写真:永元秀和)
プジョー208GTライン主要諸元
●全長×全幅×全高:4095×1745×1465mm
●ホイールベース:2540mm
●車両重量:1170kg
●エンジン:直3 DOHCターボ
●総排気量:1199cc
●最高出力:74kW(100ps)/5500rpm
●最大トルク:205Nm/1750rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・44L
●WLTCモード燃費:17.0km/L
●タイヤサイズ:205/45R17
●車両価格(税込):293万0000円
プジョー208アリュール主要諸元
●全長×全幅×全高:4095×1745×1445mm
●ホイールベース:2540mm
●車両重量:1160kg
●エンジン:直3 DOHCターボ
●総排気量:1199cc
●最高出力:74kW(100ps)/5500rpm
●最大トルク:205Nm/1750rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・44L
●WLTCモード燃費:17.0km/L
●タイヤサイズ:195/55R16
●車両価格(税込):259万9000円
プジョーe-208GTライン主要諸元
●全長×全幅×全高:4095×1745×1465mm
●ホイールベース:2540mm
●車両重量:1500kg
●モーター:交流同期電動機
●最高出力:100kW(1360ps)
●最大トルク:260Nm/300-3674rpm
●バッテリー総電力量:50kWh
●JC08モード航続距離:403km
●駆動方式:FWD
●タイヤサイズ:205/45R17
●車両価格(税込):423万円