前輪駆動から後輪駆動へ〜2代目はFCHVの新たなフェイズへ
水素で発電して走る燃料電池車として2014年に登場した先代ミライは、当時のレクサスHS250h、つまり中型車用Kプラットフォームをベースに大改造を施し、水素貯蔵ボンベはリアシート下に1本、トランク側に1本それぞれ搭載してFCスタックは前席下に搭載していた。エンジンコンパートメント(以下、エンコパ)にはモーターが収まる前輪駆動。乗車定員は4名だった。
対して新型ミライはレクサスLSやLCに採用されているGA-Lプラットフォームのナロートレッド版、つまりクラウンに採用されているものをベースに開発された。FCスタックをエンコパ内へ移すとともに、駆動用のモーターはリアアクスルへ移動して、新たに後輪駆動車へと変貌をとげたのである。
航続距離延長のため水素貯蔵ボンベは3本となったが、1本はセンタートンネル下に縦置きレイアウトするユニークな配置を採用。ホイールベースの延長を始め、パッケージングが一新されたことにより、乗車定員は5名に増えている。加えて前後の重量配分は後輪駆動車の理想値と言われる50:50を実現。FCHVならではの低重心も相まって、走りの安定感やハンドリングの進化にも期待が高まる。
新型MIRAIのボディ剛性感の高さは国産車トップレベル
試乗したのはメーカーオプションの20インチホイールを装備するZグレード。乗り出してすぐに気付くのは、圧倒的なボディの硬さだ。GA-Lがベースと書いたが、実際に共用しているのはエンジンコンパートメントとサスペンション形式くらいだが、大幅に強化・設計変更されている。もちろんフロア部分は専用設計。3本の水素タンクのうち1本をセンタートンネル部に納めるため、トンネル部分が大型になりシート後方の隔壁も頑丈にしつらえられている。
またボディ骨格にも、結合部の剛性を高めるレーザースクリューウェルディング(LSW)や構造用接着剤の接着範囲を拡大するなど念入りに組み上げられている。「ボディ剛性が高い」と言ってしまえばそれまでだが、そんな使い古された表現では語りきれない、もっと奥の深い「高剛性ボディ作りのノウハウ」があるように感じられた。
この堅牢なボディを生かしてチューニングされたサスペンションが、また絶妙な乗り味を提供してくれる。市街地から高速道路まで、あらゆる速度域で乗り心地が変わらない。フロアやステアリングホイールへの微振動はなく、エアサスペンションが装着されているような乗り味がどこまでも続く。
ステアリングフィールも然りで、高速道路などのランプウェイでもステアリングの操作量に対して適切な手応えとともに安定した旋回姿勢をキープする。手応えが曖昧で、頼りなかった先代ミライとは別モノと言える仕上がりだ。事前情報では、19インチ装着車のほうが乗り心地がいいと聞いていたのだが、20インチ装着車もなかなか頑張っている。