ハイテク装備満載により新次元の駆けぬける歓び
さて今回の試乗会には、750Liと730dが用意されていた。まずは5.2mを超えるストレッチバージョンの750Liから報告をしよう。
搭載される4.4L V8は2基のターボによって最高出力407ps、最大トルク600Nmをそれぞれ発生する。組み合わされるトランスミッションはZF製6速ATで、スタートから100km/hまで5.2秒で走り抜ける。サスペンションはフロントに新たに開発されたダブルウイッシュボーン、またリアにはインテグラルアームが従来どおり配置されている。
注目は世界初のインテグラル4輪ステアシステムが採用されていることで、ICM(インテグレーテッド シャシ マネージメント)と呼ばれる司令塔を介し、車体周辺の様々な条件を演算し、アクティブステアリングシステムと連動して後輪を左右それぞれ最大3度まで操舵させる。
さらにこの7シリーズにはドライビングダイナミックコントロールシステムが装備されており、セレクトレバー脇のスイッチによって、スポーツ、コンフォートを選択することができる。このシステムはダンパーやステアリング特性、そしてアジャスタブルエレクトリックスタビライザーなど、シャシ系すべてと連動しており、ドライバーが望むクルマに仕立て上げてくれるようにプログラムされている。
こうしたハイテクを搭載した7シリーズは、アウトバーンのレーンチェンジで確かに軽くステアリングを手首で操作するだけで、ヒラリヒラリと向きを変える。いわゆる車体が遅れる感覚はほとんどない。つまりBMWの伝えようとしている「駆けぬける歓び」は、この新しいビッグサルーンで再び新しい次元に到達したと言える。
続いて試乗した730dは、245psとパワーは一見頼りなさそうだが、540Nmというディーゼル特有の大トルクのお陰で、とてもスムーズに交通の流れに入り込むことができた。データ的にも0→100km/hが7.2秒と侮れない性能を発揮する。しかも発表された燃費は13.8km/L、CO2排出量はわずか192g/kmである。
結論を述べるならば、燃料代が高騰し環境保護が叫ばれている時代に、果たしてこの7シリーズのダイナミック性能がどれほどの一般ドライバーに訴えかけることができるかは疑問が残る。しかし、ドイツそして欧州の一部のように高速道路網などの交通インフラの発達した国々では、クルマは冒頭に述べたような使い方がされ、まだ価値は十分にある。
また、730dは低燃費を誇るし、近い将来、8速ATが導入され、ここには世界で初めてトルクコンバターにアイドルストップが組み合わされるなどの対策が施されることも、報告しておかなくてはならないだろう。さらに、BMWの開発エンジニアたちは当然のことながらそれだけでは満足しない。次の時点では、ハイブリッド、そして究極は水素へのシフトまで目標を掲げているのである。
さて、来年2009年1月には日本へ輸出が開始されるといわれるが、日程や価格についてはまだ発表されていない。(文:木村好宏/写真:Kimura Office)
BMW 750Li 主要諸元
●全長×全幅×全高:5212×1902×1478mm
●ホイールベース:3210mm
●車両重量:2100kg(EU)
●エンジン:V8DOHCツインターボ
●排気量:4395cc
●最高出力:300kW(407ps)/5500-6400rpm
●最大トルク:600Nm/1750-4500rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・82L
●燃費(欧州複合):8.8 km/L
●タイヤサイズ:245/50R18
●最高速:250km/h
●0→100km/h加速:5.3秒
※欧州仕様
BMW 730d 主要諸元
●全長×全幅×全高:5072×1902×1479mm
●ホイールベース:3070mm
●車両重量:1940kg(EU)
●エンジン:直6DOHCディーゼルターボ
●排気量:2993cc
●最高出力:180kW(245ps)/4000rpm
●最大トルク:540Nm/1750-3000rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:軽油・80L
●燃費(欧州複合):13.9km/L
●タイヤサイズ:245/55R17
●最高速:245km/h●
0→100km/h加速:7.2秒※欧州仕様