保守と革新のせめぎ合う緊張感のあるデザイン
最近、BMWは2回続けてニューモデル試乗会をドイツ国内で行った。口の悪いドイツ人ジャーナリストは「コスト節約のためだろう」というが、私はそうは思わない。たとえば風光明媚な南仏やスペインも悪くはないが、最近の航空機利用の煩雑さと時間の節約を考えれば、少なくともドイツ在住のジャーナリストにとってみれば、試乗や関係者とのインタビューにたくさん時間を割くことができる近場の方が良い。
そんなわけでレポーターは今回、7シリーズの国際試乗会が行われているドレスデンまで350kmをクルマで走ってきた。ドイツではこうした移動がまだ十分に可能なのである。そしてこうした移動に適したクルマの1台が、このBMW 7シリーズというわけだ。
新型の衣装は評判の良くなかった旧7シリーズの反省の上にたって大きく変化している。もっともBMWとしては、この「反省」という言葉には拒絶反応を示すに違いない。なぜならば4世代目にあたる旧モデルは、2001年から2008年の間に34万4395台と、歴代の7シリーズのなかでもっとも販売台数が多いからである。そのような理由やBMWの意地もあり、ニュー7シリーズは垂直に立ち上がったキドニーグリルとヘッドライトユニットに大きな変化はなく、少なくとも正面から見た限りでは旧7シリーズの面影を残している。
しかしリアエンドは大きく変わっている。例のトランクの段付きは消えて、テールライトも一新された。しかしこのデザインはなぜかトヨタあるいはレクサスのような雰囲気を持っているところが気になる。
またボディ側面はプレスラインがドアハンドルの高さになり、また凹面と凸面を組み合わせた緊張感のあるものに変わっている。少なくともエクステリアデザインは先代の名誉を絶対に挽回するものと思われる。
サイズはスタンダードボディの750iが全長5072mm、全幅1902mm、全高1479mmと旧モデルよりも長く、そして低くなった。そして、ホイールベースが3070mmと80mm伸び、フロントのオーバーハングが短くなったお陰で、サイドビューはダイナミックになっている。
大型化されたボディゆえに、軽量化は徹底して行われた。アルミをルーフやドア、そしてフェンダーやボンネットなどストレスの少ないところに採用し、軽量スチールを骨格にあたる部分、そして高張力鋼板をBピラーやサイドシルなど負荷が大きくかかる箇所に使用している。その結果、750iの空車重量(DIN)は1945kgで、装備の充実にもかかわらず旧750iと比べるとわずか35kgの増加にとどまっている。
エクステリア以上に革新的な変化がインテリアに起こっている。まずiDriveのダイヤルが小型化され、その周りに独立したスイッチが配置された。ダイヤルコントローラーは、マウスのように縦横に動かすことができる。これは7シリーズの売りの一つである車内インターネットのカーソル操作に使えるわけだ。オプションで用意されるこの機能はおそらく日本向けにはしばらくは搭載されないものと思われる。
またこれらコンピューターとナビなどを表示する画面は10.2インチと大きなサイズで、画質も1280×480ピクセルと非常に鮮明だ。プログラム情報はすべて40ギガバイトのハードディスクに記憶され、音楽ソースなどはCD、MP3プレイヤーあるいはUSBからダウンロードすることができる。
またオートマチックトランスミッションのセレクトレバーは、これまでのコラム式からX5や5シリーズに採用されている電気カミソリタイプのフロア式に変更されている。