マーケットとPHEV設定を意識したエクステリアのデザイン変更
デビューから3年というタイミングで三菱エクリプス クロスが大掛かりな変更を受けた。見てすぐにわかるのは、進化したデザインをまとい全長が大幅に伸ばされたエクステリアの進化。これは単なる化粧直しではなく、いくつもの意味、理由が込められている。
フロントマスクは、三菱がアイデンティティとしているダイナミックシールドの進化版で、グリルから連なる切れ長のデイタイムライトがアイキャッチだ。そして大胆に変わったのがリア。オーバーハングが105mmも伸ばされ、ストンと裁ち落とされてダブルガラスウインドウがはめ込まれていた特徴的なスタイルから、リアゲートこそ変わらず寝かされているものの、オーソドックスなスタイルへと変身しているのである。
従来のデザインは、クーペSUVのトレンドに乗りたいけれど、三菱のSUVへのこだわりとして実用性を犠牲にする低全高にはしたくないというところから生み出されたものだったが、実際に市場に出してみると、ユーザー年齢層が想定より上だったこともあるのだろう。もっと落ち着いたデザインを求める声が多かったという。
また、4405mmという全長によって世間ではトヨタ CH-Rやスバル XVなどが引き合いに出され、価格が高いという言われ方もしたそうだ。要するに今回のエクステリアの変更、全長の拡大には、市場の声を受けての打ち出したいポジショニングの再定義、という意味合いがあると言っていい。
それだけじゃない。新しいエクリプスクロスはその目玉としてPHEV=プラグインハイブリッド車を設定した。定評あるアウトランダーPHEV譲りのシステムは、通常は前後輪をそれぞれ1基ずつの電気モーターで駆動し、内燃エンジンは必要な時の発電に徹する。
そして高速巡航時など、その方が高効率と判断された時にだけ、内燃エンジンが直接駆動も行うというもの。これを搭載するためには、リアオーバーハングの伸長はマストだったのである。
S-AWCの恩恵もあり軽快で安定感あるフットワーク
試乗したのは、そのPHEVモデル。エンジンはアトキンソンサイクルを用いる2.4Lで、前後の電気モーターはそれぞれ82ps、95psを発生し、バッテリー容量は13.8kWh。エンジンを始動することなく最長57.3kmを走行できる。
即座にピークパワーをもたらす電気モーターの特性のおかげで、発進は非常に力強く、そして加速はスムーズ。車両重量はガソリンエンジンの4WD版より30kg以上も重いのに、それを意識させることはない。むしろ、より上質な乗り味に仕上げられている。
一方、コーナーの連続するセクションに入ると、フロア下にリチウムイオンバッテリーなどを敷き詰めたことによる低い重心、前後の電気モーターとブレーキの緻密な制御を行うS-AWCの恩恵で、軽快かつ安定感のあるフットワークを楽しませてくれる。この瞬間こそが、エクリプス クロスPHEVのもっとも光るところと言っていいだろう。
一方、気になるところもある。室内の静粛性はアウトランダーPHEVには及ばず、とくにいざエンジンが始動した時の音の高まりは落差が大きい。また、増えた車重に対してサスペンションまわりの剛性が足りないのか、平坦な路面では良好だった乗り心地が、波打ったような路面では一気に悪化してしまう。要はまっすぐ普通に走らせた時の気持ち良さに、少々物足りなさを感じるのだ。ADASの進化がなかったのも惜しい部分。ACC(アダプティブクルーズコントロール)が優秀なだけに、車線内中央維持機能も欲しい。
こうした細かな不満はあるものの、三菱のPHEVが持つ走りのポテンシャルや外部給電機能による利便性や使う楽しさは、他では得られないものだけに、そこがササッたなら、迷うことはないかもしれない。異例に大掛かりなマイナーチェンジは、間違いなくそのアピール度を高めるはずだ。(文:島下泰久/写真:永元秀和)
三菱エクリプス クロスPHEV 主要諸元
●全長×全幅×全高:4545×1805×1685mm
●ホイールベース:2670mm
●車両重量:1920kg
●エンジン:直4 DOHC+モーター
●総排気量:2359cc
●最高出力:94kW(128ps)/4500rpm
●最大トルク:199Nm/4500rpm
●モーター最高出力:前60kW(82ps)/後75kW(95ps)
●モーター最大トルク:前137Nm/後195Nm
●トランスミッション:-
●駆動方式:-
●燃料・タンク容量:レギュラー・43L
●WLTCモード燃費:16.4km/L
●タイヤサイズ:225/55R18
●車両価格(税込):447万7000円