どこかBMW135iクーペを思い出させる走り味
今年(2008年)8月までの日本でのMINIの累計登録台数は8705台で、この数字は同期間でのマツダ ベリーサ(8728台)や三菱 i(9061台)に迫るものだ。その好調な販売をさらに後押ししてくれそうなのが、9月25日に発表されたトップモデル「John Cooper Works(ジョンクーパーワークス、以下JCW)」である。
このMINI JCWに搭載されるエンジンや足まわりなどには、海外で行われているワンメイクレース用のモデル「MINI JCWチャレンジ」の開発ノウハウが存分に盛り込まれている。
N14B16T0型と呼ばれるMINI JCW用エンジンは、強度や剛性が最適化された専用品のシリンダーヘッドに、耐久性に優れた素材の吸気バルブとバルブシートを装着、排気バルブには冷却性能向上のためにナトリウム封入型を採用する。強化型ピストンと大容量化されたインテークパイプやエアクリーナー、ツインスクロール式ターボチャージャー、専用のエキゾーストシステム、改良型ヘッドガスケットにより圧縮比がわずかに下げられ、ターボの最大過給圧を0.9バールから1.3バールへ高めるなどの改良が施された結果、ベースになったクーパーS用よりも最高出力は27kW(36ps)アップの155kW(211ps)/6000rpmを発揮。またその最大トルク20Nm(2.0kgm) 向上した260Nm/1850-5600rpm。6速MTのみと組み合わされる。
派手なデザインの前後バンパースポイラーやリアのウイング、カーボン製のパーツ類や豪勢なレカロシートは、豊富に用意されるオプション設定のアクセサリーパーツ。素の「MINI JCW」はいたってシンプルで、外観からはJCW専用サスペンションで15mm下がった車高と、直径85mm径と太い2本出しマフラー、専用の軽量ホイール(7J×17)、ブレンボ製の対向4ピストン型フロントブレーキキャリパーと直径316mmのローター、「John Cooper Works」のエンブレムくらいしか識別点がない。実は標準状態だと、ノーマルのクーパーSとそれほど変わらない外観なのだ。
走り出してみると、これはもう驚くほどに元気がよく、問答無用で楽しい。2000rpmも回っていればすでに十分なトルクが出ているので、アクセルペダルを踏めば瞬時にトルク発生ユニットのスイッチがオンとなる感覚。車重1210kgのボディを軽々と加速させていく。専用デザインのエキゾースト系からのサウンドは、品がある中にも迫力を伴ったものだ。
そしてFF車のDSCとして初めてDTCモードが導入されたのも特徴で、ブレーキ制御による電子制御式デファレンシャルロック機能も搭載。走ることへのこだわりが随所にある。
足まわりは、ダンパーとスタビライザーが硬めに設定された専用サスペンションということで最初は警戒したが、継ぎ目の多い首都高の路面でも直接的な突き上げはなく、ビシッと締まっていながら最新のスポーツモデルらしく予想よりはるかに快適な乗り味だ。
高速道路でチェックしてみると、2速の守備範囲が広い。6500rpmあたりからがレッドゾーンなのだが、タコメーター内のデジタル式スピード表示の数値は最高で100km/hあたりを示した。その気になれば、2速ホールドでほとんどの場面をカバーすることもできるわけだ。スピードメーターは標準より20km/hアップの260km/hスケールとなる。
なぜかクーパーSのものよりも操作感がはるかにスムーズと感じられた6速MTを操りながらワインディングロードを走っていると、MINIの魅力であるゴーカートのようなフィーリングもしっかりと感じとれる。だがそれ以上に感じたのは、6速MTを搭載したBMW135iクーペの走り味に似ているのではないかということ。MINIのトップグレードたるJCWは「実はもっともBMWに近い味わいを備えたMINI」なのかもしれない。参考までに燃費は、渋滞を含め縦横無尽に走った400km強の走行で、約11km/Lを記録した。(文:Motor Magazine編集部 香高和仁/写真:堀越 剛)
MINI ジョンクーパーワークス 主要諸元
●全長×全幅×全高:3715×1685×1415mmm
●ホイールベース:2465mm
●車両重量:1210kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1598cc
●最高出力:155kW(211ps)/6000rpm
●最大トルク:260Nm/1850-5600rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・50L
●タイヤサイズ:205/45R17
●車両価格(税込):363万円(2008年当時)