パジェロユーザーからの強い要望に応えて
栄枯盛衰というか、以前はえらい勢いで売れまくっていた商品が、ある時期を境に勢いを失ってしまう。クルマの場合で言えば、2ドアのクーペモデルであるホンダ プレリュード、日産シルビア、トヨタ セリカ、そして三菱パジェロなどが当てはまる。
前3車は「デートカー」として1980年代半ばに人気モデルとなった。しかしその後、バブル景気の影響もあって若いユーザーの価値観が大きく変わり、狭いクーペより大きくて力強いクロスカントリータイプがデートカーとして支持されるようになった。
その中でも2代目パジェロは爆発的といっていいヒットとなり、月間8000台売れた時期もあった。しかし1990年代半ばになると急速に衰退してしまう。ただ、クーペのほとんどは消滅したが、パジェロは今も健在(現行モデルで4代目)である。熱心なパジェロファンが支持していることと、海外需要があるからだ。
パジェロは三菱のいわば看板モデル。なんとしてもこのブランドを守り抜かねばならないのだが、そこに立ちはだかったのが排出ガス規制。かつては販売量の80%近くがディーゼルエンジン搭載車だったパジェロも厳しい規制に対応できず、2004年からガソリンエンジン車のみのバリエーション展開となっていた。だが今回、新長期規制(平成17年度排出ガス規制・乗用車)適合のディーゼルエンジン搭載車を追加設定する運びとなった。三菱によれば旧来のパジェロユーザーからの強い要望に応えるためという。
「パジェロはディーゼルでなきゃ」という声はたしかに多いだろう。しかし新長期規制の次には、もっと厳しいポスト新長期規制が待ち構えている。今回登場したパジェロ用ディーゼルエンジン(DI-Dと呼称する)は、現在のところ残念ながらポスト新長期規制はクリアしていない。NOx(窒素酸化物) の排出量をもっと抑え込まないとならないのだ。あくまで現在販売できる新長期規制をクリアしているということであるのだが、これはラージSUVクラスでは初となる。