ライバルもルーキー角田の速さに注目
プレシーズンテストが行われた3日間は、3月26日から始まる開幕戦に向けて、バーレーン独特の気候が見られる絶好の機会となった。初日は風が強く気温も高く、路面に砂も浮くような難しい状況。2日目は風が残ったものの、気温は下がり、まずまずのコンディション。そして最終日3日目は風も穏やかになり、路面状況も良化、さらにいいコンディションとなっていった。
そんな中、今シーズンからアルファタウリ・ホンダに乗る角田裕毅はプログラムを予定どおり順調にこなし、最終日3日目、バーレーンGP本番でのレース時間に近い日没後に各チームがタイムアタックに入る中でトップタイムをマーク。その後、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンにベストタイムを塗り替えられたが、ライバルたちを抑えて2番手でテストを終えている。角田裕毅の3日間を追ってみよう。
角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)DAY1:3月12日
「新型マシンできちんと走行することができ、アルファタウリのドライバーとして初のF1公式テストを終えられたのは、素晴らしい気分です。現時点では、走行距離とデータ収集が僕がフォーカスすべき項目だと思っています。ルーキーですので、わずか3日間という走行の機会から多くを吸収し、ここバーレーンでの開幕戦に向けて学びを深めていきたいと思います。残念ながら、今日の午後はかなり難しいセッションで、砂と風の中でのドライビングという厳しいコンディションでした。また、チームが燃料システムに問題を発見し、早めに走行を切り上げざるを得ませんでした。原因についてはチームが解明中ですが、僕自身は、明朝のセッション開始とともに走行できるようにしっかりと準備をしたいと思います」
3月12日テスト1日目。強風によって砂嵐が巻き起こるコンディションの中、午後のセッションで登場。難しいコンディションの中ではあったものの、ガスリーに迫るタイムを記録するなど、印象的な走りを披露した。燃料システムの問題を調査するために早めに走行を切り上げたものの、パワーユニットにとって貴重なデータを収集した。
角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)DAY2:3月13日
「僕自身のドライビングは、コースへ出るたびに向上できていると思います。今日も風向きが変わるなど、天候が問題ではありましたが、どんどん学びを深めていくことができています。マシンについての習熟を進めており、異なるタイヤコンパウンドで挙動がどうなるかも理解を深められてきています。パフォーマンスはまだベストとは言えませんが、テストの内容に関しては満足いくものになっています。また、マシンのダウンフォースレベルについても学べているので、高速コーナーでの自信が増してきました。こうした学びは、僕にとってはもちろん、チームにとってもいいことですし、明日も全力で臨みたいと思います」
3月13日テスト2日目。前日は砂嵐の影響で難しい状況となったが、この日は路面コンディションが改善。しかし、相変わらず風は強く、慎重な走りが要求された。そんな中、角田裕毅は午前のセッションを担当。精力的に走行を続け、異なるタイヤコンパウンドの特性を理解すべくさまざまな種類のタイヤを試した。トータル57周を走行、ベストタイムは1分32秒684で全体の11番手だった。
角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)DAY3:3月14日
「F1マシンで全開アタックをして2番手に入るというのは、最高の気分です。もちろん、まだテストに過ぎないので先走ってはいけませんが、この位置で3日間を締めくくれるというのは素晴らしいことです。この数日で非常に多くを学びましたし、チームも多くの有用なデータを収集できましたので、開幕に向けてしっかりと分析していきます。このテストでかなりの周回を走り込んでコースをよく理解できているので、ここで開幕戦を迎えられることはとてもいいことだと思います。いくつか小さな問題はありましたが、僕らはすべてを明らかにするためにテストをしているわけで、こうしたことも想定内です。レース本番では、現状でベストのパッケージを用意できるはずです。ここから2週間ハードワークを継続していきます。今から開幕戦にワクワクしています!」
3月14日テスト3日目。午後のセッションを担当した角田裕毅は91周を走行。セッション終盤ではソフトタイヤを使用したアタックに臨み、一番柔らかいC5タイヤを使ったアタックで首位のフェルスタッペンと0.093秒差の2番手タイムをマーク。強烈な印象を残した。
ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは、プレシーズンテストを終えて「3日間で、アルファタウリが422周、レッドブルが369周、ホンダのパワーユニットを搭載した2チームのマシンは合計791周、4281kmを走行。開幕戦に向けて走行距離を伸ばせたのみでなく、中身の濃い貴重なデータを収集することができました。この3日間の中でパワーユニットに関するマイナーな問題も散見されたものの、レース本番を前に、問題を見つけることもテストの目的です。ここまで、マシンを止めるような大きなトラブルなく2チームともに走り、予定通りにプログラムを消化することができた、充実のテストとなりました。今回のテストで得たデータを解析するとともに、問題点を潰し込むために、まだまだエンジニア、メカニックは忙しい時間が続きます。我々の実力が見えるのは2週間後の予選とレースを終えてからになると思いますが、ここからの準備も最善を尽くして臨みたいと思います」とコメントしている。
ホンダにとっては、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンがトップタイム、角田が2番手タイムをマークし、1-2でテストを終える幸先のいいスタートとなったが、重要なのはデータをどれだけ収集できたか。そして、ここからは開幕戦バーレーンGPまでの2週間を使い、テストで得た内容を分析した上で、レースに向けた準備を進めていくことが重要となる。F1開幕戦は、3月26日(金)にバーレーン・インターナショナル・サーキットで開幕し、28日(日)に決勝レースが行われる。
2021年F1プレシーズンテスト3日目タイム結果(3月14日)
1位 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ) 1’28.960(C4)
2位 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ) 1’29.053(C5)
3位 C.サインツ(フェラーリ) 1’29.611(C4)
4位 K.ライコネン(アルファロメオ) 1’29.766(C5)
5位 L.ハミルトン (メルセデス) 1’30.025(C5)
6位 G.ラッセル(ウイリアムズ) 1’30.117(C5)
7位 D.リカルド(マクラーレン) 1’30.144(C4)
8位 S.ペレス(レッドブル・ホンダ )1’30.187(C4)
9位 F.アロンソ(アルピーヌ) 1’30.318(C4)
10位 C.ルクレール(フェラーリ) 1’30.486(C3)
11位 L.ノリス (マクラーレン) 1’30.661(C3)
12位 P.ガスリー(アルファタウリ・ホンダ) 1’30.828(C4)
13位 E.オコン(アルピーヌ) 1’31.310(C3)
14位 N.マゼピン(ハース) 1’31.531(C4)
15位 M.シューマッハー(ハース) 1’32.053(C3)
16位 V.ボッタス(メルセデス) 1’32.406(C2)
17位 S.ヴェッテル (アストンマーティン) 1’35.041(C3)
18位 L.ストロール (アストンマーティン) 1’36.100(C3)
※カッコ内は使用タイヤ