NAかつD4-Sを採用した2.4Lのボクサーエンジンはスバル初
なにはともあれ、この記事をご覧になっている方が気になるのは、新開発の2.4Lエンジンだろう。2.4Lの水平対向エンジンは、2018年から北米で発売されている大型SUV「アセント」にも搭載されているが、あちらはターボ仕様。最高出力は263ps/5600rpm、最大トルク38.3kgm/2000-4000rpmで、パワーはそこそこでどちらかと言えばトルク重視のチューニングだ。
一方、今回「GR86」「新型BRZ」に搭載される新開発エンジンの日本仕様は、(現段階ではあくまで開発目標値だが)最高出力235ps/7000rpm、最大トルク25.5kgm/3700rpmというもの。トヨタの直噴/ポート噴射技術であるD4-Sも先代に続き採用され、スポーツエンジンに仕立て上げられている。ちなみに先代に搭載されたFA20型は、それぞれ207ps/7000rpm(6速MT車)、21.6kgm/6400-6800rpm(同)というスペックだった。
注目すべきは最大トルクと発生回転数の違いだ。先代比およそ15%向上した最大トルクを、新型エンジンはわずか3700rpmで発生するのだ。先代は速く走らせようとするとパワーバンドを維持するのにそれなりのテクニックが必要とされたが、新型ではよりイージーにスポーティな走りが味わえるはずだ。実際にその差はかなり大きいらしく、試乗した関係者は「発進時や低速走行時のアクセルワークが格段にイージーになった一方で、高回転まで段付きなく吹け上がる。軽快かつ熟成されたスポーツカーに仕上がっている」と証言していた。
SGP開発で得たノウハウを「GR86」「新型BRZ」に投入
プラットフォームは先代と同じくスバルが主担当となって開発された。基本骨格は先代で開発されたものを使われているものの、新たにSGP(スバルグローバルプラットフォーム)の開発で得られた知見が随所に盛り込まれ、インナーフレーム構造や構造用接着剤の採用など、ボディの剛性のさらなるアップが図られた。
フロントの横曲げ剛性は約60%、ねじり剛性もおよそ50%と大きく向上。その結果、先代でも定評のあったハンドル操作の応答性はさらに向上して、ライトウエイトFRスポーツらしい軽快な運動性能を実現しているという。また、プラットフォームの剛性バランスの見直しにより、とくにコーナリング時のトラクション性能もアップしているとのこと。ピュアスポーツカーらしい走りが堪能できそうだ。
またスポーツカーにとっての「軽さ」は、エンジンパワー以上の価値がある。先代もボンネットフードにアルミ製を採用するなど軽量化には並々ならぬ意欲を見せていたが、新型はフードに加えて、ルーフやフロントフェンダーにもアルミを使用。エンジン出力の向上や各種安全対策による重量増加を抑えるとともに、前後左右重量配分の適性化やルーフの軽量化による低重心化も実現する。