間違いなく、ベースとなる812スーパーファストを上まわるステイタス性の持ち主だ。格納式ハードトップを採用したスタイリングはもとより、官能性能までさらなる高みに達している。あらゆる走行シーンでその圧巻のパフォーマンスを感じ取ることはできる。だがもっとも神がかっているのは、日常生活でも味わえる感動的時間そのものなのかもしれない。(Motor Magazine2021年5月号より)

バイオリンの調べにも似た天使のソプラノが響き渡る

エンジンは、もはや神がかっている。低回転域から柔軟で扱い易いことはいうまでもないが、驚くべきは12個のピストンとコンロッド、そしてそれらと連結された長いクランクシャフトの存在がまるでウソのように、どんな回転域でもおそろしくシャープなレスポンスを示す点にある。

しかも、常用回転域ではあれほど扱い易かったキャラクターが、レブカンターの針が4000rpm付近で水平から上向きに変わると表情を一変。一気に刺激感を高め、8900rpmのレブリミットに迫る頃にはあふれんばかりのパワーが「これでもか!」と襲いかかってくる。

そんな時に響き渡る快音もまた、神がかっている。その音色は、金属の狭い部屋のなかでガソリンが燃焼することで発生していることが信じられないほど。むしろ羊腸の振動を木製の箱で増幅するバイオリンの調べのほうがはるかに近いと思える。それほど、フェラーリV12の音色は澄んでいて心の奥底まで染み込んでくる。まさに「天使のソプラノ」だ。

実はミッドシップよりもフロントエンジンのほうが排気系レイアウトの自由度が高く、美しい音色を生み出すのに有利。「フロントエンジンを選んだ理由はこのエキゾーストノートのため」かもしれない。812GTSのサウンドが魅力的なことは、事実である。(文:大谷達也/写真:小平 寛)

画像: 可変吸気システムなど、F1用エンジン由来の技術を採用。3500rpmで最大トルクの約8割が発揮される高いフレキシビリティも備える。

可変吸気システムなど、F1用エンジン由来の技術を採用。3500rpmで最大トルクの約8割が発揮される高いフレキシビリティも備える。

フェラーリ812GTS主要諸元

●全長×全幅×全高:4693×1971×1276mm
●ホイールベース:2720mm
●車両重量:1645kg
●エンジン:V12 DOHC
●総排気量:6496cc
●最高出力:588kW(800ps)/8500rpm
●最大トルク:718Nm/8000rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・92L
●WLTCモード燃費:6.1km/L
●タイヤサイズ:前275/35R20、後315/35R20
●車両価格(税込):4523万4000円

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