2008年12月1日に発表されたZ34型フェアレディZ。Motor Magazine誌はその市販前のプロトタイプをテストコースで試している。ここではその時の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年1月号より)

絶大な安心感を持ってコーナーへ飛び込める

今回、テストコースで乗ることができたプロトタイプはすべて6速MT仕様。ギアを1速に入れクラッチを繋いだ途端に感じたのは、現行モデル以上に力強いリアの蹴り出し感である。ホイールベースの短縮分は、ほぼすべてドライバーより後方。つまりリアタイヤがドライバーの腰の位置にグッと近づいているのだ。

排気量3.7L、連続可変バルブタイミング機構のVVELを搭載して最高出力336psを発生するVQ37VHRユニットは、低速域から力強く、そして低音で吠える。駆動系の剛性感が高く、這うような速度でもギクシャクすることはない。2速へシフトアップ。2400〜7000rpmという幅広い回転域で37.2kgmの最大トルクの約90%を発生するだけに、加速は迫力満点だ。

そこには軽量設計も効いている。1500kgを下回る車重は、ほぼ現行モデル並み。安全や環境への対応等々で放っておけば重くなっていたはずの、ざっと100kg以上を取り戻すべく、モノコック自体軽くされた上にアルミ製のボンネットフード、ドア、ハッチゲートを採用するなど軽量化が徹底された賜物だ。

5000rpm前後を境にさらに勢いを増すエンジンを、7500rpmのリミットまで引っ張って3速へ。回転数は5500rpmまでドロップする。近づくコーナーに向けてブレーキング、そしてシフトダウンという時に効果を発揮するのが、新機軸の何とMTと組み合わされたシフトダウン時の自動ブリッピング機能である。

最初は思わず右足でアクセルを煽ってしまうが、慣れてくると右足はブレーキングに集中することができる。特筆すべきは、シフトダウン後のエンジン回転数がレブリミットに差し掛かるギリギリまで、しっかり機能してくれること。もちろんMTだけに、ミスすればオーバーレブの危険もあるが、MTとはそもそもそういうもの。ここで警告音が鳴ったりしたら興ざめというものだろう。ちなみにこの機能、キャンセルも可能だ。

そしてコーナーへ向けてステアリングを切り込んでいくと、その手応えはまさに抜群である。ショートホイールベースだけにスタビリティ確保のためリアはやはり横剛性が大幅に高められているといい、それだけに挙動の安定感、ソリッド感は非常に高く、絶大な安心感をもって飛び込んで行ける。

従来と同じ速度なら、曲がるのはより楽。さらに高い速度域でダラッと切っていけば、確かに鈍く感じる部分もあるが、メリハリ良くターンインするのを心がければ、いかにもショートホイールベースらしく自分の腰の辺りを中心にコンパクトに旋回して行ける。

そういう意味で、挙動全般は若干シビアと言えなくもない。しかし、Zはスポーツカー。これぐらい歯ごたえがあっていい。大丈夫。もし失敗した時も挙動変化は最小限だし、何よりうまく決まれば爽快な一体感を味わえるのだから。

画像: 連続可変バルブタイミング機構のVVELを持つVQ37VHRは336psを発揮する。軽やかに吹け上がり、しかもどの回転領域でも太いトルクを感じさせる。

連続可変バルブタイミング機構のVVELを持つVQ37VHRは336psを発揮する。軽やかに吹け上がり、しかもどの回転領域でも太いトルクを感じさせる。

テストコースでの試乗だけに断片的なことしか言えないが、乗り心地は硬め。捻り剛性を40%高めたというボディはカッチリしているが、さすがにリアの275サイズの19インチタイヤは軽量・高剛性の鍛造ホイールをもってしても、それなりの突き上げを許す。18インチのフロントもチョロチョロと進路を乱しがちだ。しかし、この走りのためなら十分に許容できる範囲だろう。

コンパクト化と引き換えにした部分はないのだろうか。室内は前述の通り、それなりにタイトとは言えクオリティの向上や収納スペースの増加などによって居心地は悪くない。現行モデルでは荷室を横断しているタワーバーが隅に移動されたのも朗報。タワーの張り出しは残るものの、それでもかなり使いやすくなった。これも最初に書いた通り、アピアランスにも寂しさはない。むしろ迫力はさらに増している。つまり失ったものは何もないと言っていい。

得たものは大きい。何より、まだプロトタイプにしてこの走りだ。ちなみにATは7速へと進化し、1000rpmという低回転域からのロックアップによりダイレクト感を獲得。しかもGT-Rと同デザインのパドルシフトが付き「もっともMTライクなAT」になっているというから、そちらも楽しみである。

昨今、市況はますます厳しさを増しているが、本当に魅力的な、そして他に代わるもののない「本物」のプロダクトは、必ずや支持されるはず。新型フェアレディZ、市販の暁にはマーケットを大いに盛り上げてくれると確信した次第だ。(文:島下泰久)

画像: インパネまわりはメーターや各種スイッチが存在感を主張し、豪華絢爛といった印象だが、いざドライバーズシートについてあたりを見回してみると煩雑ではない。スイッチやメーターなどひとつひとつのパーツはしっかりと造り込まれていてクオリティは非常に高い。

インパネまわりはメーターや各種スイッチが存在感を主張し、豪華絢爛といった印象だが、いざドライバーズシートについてあたりを見回してみると煩雑ではない。スイッチやメーターなどひとつひとつのパーツはしっかりと造り込まれていてクオリティは非常に高い。

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