アウディスポーツがパフォーマンスを磨き抜いた新たなQモデルが、日本上陸を果たした。第二世代となるRS Q3と初めてのRS Q8、それぞれにアウディの新しい理想形が見えてくる。(Motor Magazine2021年5月号より)

2.4トン超えのボディでも味わえる「痛快無比」

さてもう1台。こちらは海外ばかりではなく日本でも人気が高いラージサイズのSUVの中でも、ひときわ立派な存在感を放つアウディQシリーズのフラッグシップモデルRS Q8である。こちらの全長、全幅、全高は5010×2000×1700mmで、車両重量は2.4トンを超える。もっとも、最新の4L V8ツインターボエンジンが絞り出す800Nmという強トルクは、そんな重さをものともしない。味わいこそ異なるものの、RS Q3と同様に「文字どおり痛快」な加速感を堪能できる。

こちらのトランスミッションは8速AT(ティプトロニック)で、変速感もスムーズかつダイレクト。セレクターは電子式を採用している。装着されているタイヤのサイズは295/35ZR23インチ。市販モデルでこれほどファットな扁平タイヤを履くクルマの試乗は、長年にわたりタイヤのテストをこなしてきた筆者も、実は初めてだ。

RS Q8がこれほど大きなタイヤサイズをチョイスした理由はいろいろある。まずはブレーキのディスクローターを大きくして、ストッピングパワーを上げたかったのだろう。高荷重になってもコーナリングパワー(グリップ力)が落ちにくいという、扁平タイヤの特性を生かしたい、という一面もあると思う。

ブレーキングやコーナリングで4輪に分散していた荷重が、前のみや横のみの2輪にかかる大きなストレスへと変わった瞬間に、腰砕けになったりしないようにするためだ。23インチともなればホイールそのものの存在感も強烈でかっこいいけれど、重量級のボディをRSらしく走らせるためには、必然の選択だったと言えるだろう。

一方で心配なのが乗り心地への影響だったのだが、ここでは電子制御で車高とダンピングを自動で連続可変制御してくれる「RSアダプティブエアサスペンション」が絶妙なサポートぶりを見せてくれた。さらにタイヤのトレッド面の当たりが尖っていないので、乗り心地は意外に良い印象である。35偏平といっても、衝撃吸収能力はそこそこ高いのである。

アウディドライブセレクトの選択により、ダイナミックモードでは車高を下げてハイスピードでの安定性を確保する。オールロードやオフロードモードでは40mm車高を上昇させる。ラゲッジルームへの荷物の積み下ろしの際には65mmも下がる。コンフォートを選ぶと、高速道路などではサスペンションのストローク感が生きる。リラックスした気分で、ツーリングを楽しむことができる。

画像: RS Q8。ホイールセレクティブトルクコントロール、アクティブロールスタビリゼーションなど、運動性能と快適性を両立。

RS Q8。ホイールセレクティブトルクコントロール、アクティブロールスタビリゼーションなど、運動性能と快適性を両立。

回転半径を縮めながら安定性も高める4WS

大柄なボディへの対応として、もうひとつ注目しておきたいのが「オールホイールステアリング」システムだろう。RS Q8の最小回転半径は5.6mだが、もしこの4WS機構がついていなければ6.2mほどになってしまうという。低速時にはハンドルを切った方向と逆位相、60km/h付近は変化なしで、それを超えていくとハンドルと同位相に後輪が転舵する。切れ角は速度によって最適化されるが、一番大きく切れるのは歩くようなスピードの時の逆位相だ。

RS Q8に採用されたシステムでは、停止しているときにハンドルを切っても4WSは作動せず、動き始めると後輪がステアする。後輪がステアした状態で車庫入れしていても、クルマが停止すると後輪は自然に直進状態に戻る。細かいところまで非常によく考えられている。効果は非常に大きいのに、ドライバーにはまったく違和感がない。

おかげで、大柄なボディでワインデイングロードを走ってみたが、これがまた実に楽しかった。タイトコーナーでアクセルペダルを踏んでいっても、アンダーを感じさせることなく曲がってくれる。さすが、RSらしくオンザレールで走れるのだ。

RS Q8もまた、友人を誘ってロングツーリングに出かけたくなる。なるほど、「RS」の称号は伊達ではない。(文:こもだきよし/写真:井上雅行)

画像: RS Q8にはMHEV化で環境性能にも配慮したV8ツインターボ。

RS Q8にはMHEV化で環境性能にも配慮したV8ツインターボ。

アウディRS Q3スポーツバック主要諸元

●全長×全幅×全高:4505×1855×1555mm
●ホイールベース:2680mm
●車両重量:1730kg
●エンジン:直5DOHCターボ
●総排気量:2480cc
●最高出力:294kW(400ps)/5850-7000rpm
●最大トルク:480Nm/1950-5850rpm
●トランスミッション:7速DCT(Sトロニック)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・63L
●WLTCモード燃費:9.8km/L
●タイヤサイズ:255/40R20
●車両価格(税込):863万円
※試乗車(RS Q3スポーツバック)にはオプションの21インチアルミホイール、255/35R21タイヤを装着。

アウディRS Q8主要諸元

●全長×全幅×全高:5010×2000×1700mm
●ホイールベース:2995mm
●車両重量:2410kg
●エンジン:V8DOHCツインターボ
●総排気量:3996cc
●最高出力:441kW(600ps)/6000rpm
●最大トルク:800Nm/2200-4500rpm
●トランスミッション:8速AT(ティプトロニック)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・85L
●WLTCモード燃費:7.1km/L
●タイヤサイズ:255/40R20
●車両価格(税込):1869万円
*試乗車(RS Q8)にはオプションの21インチアルミホイール、255/35R21タイヤを装着。

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