2008年12月、メルセデス・ベンツ日本はCLクラスの装備を充実させた。Sクラスと共通イメージが与えられたCLクラスは、すでにメルセデス・ベンツのクーペとして伝統的なデザインと斬新なスタイルを兼ね備えて他に類を見ない美しさを持っていたが、この時に行われた変更は、当時の最新の装備を採り入れてフラッグシップにふさわしいものにするものだった。ここでは登場まもなく行われたメルセデス・ベンツ CL550の試乗テストの模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年2月号より)

当然、快適ではあるがその質は確実に進化した

まず、シートに身を沈めると視野に入ってくるインパネまわりの光景は、セダンのSクラスと共通したもの。振り返ってリアに用意される2座のシートを見なければその違いがわからないほど似ている。

SクラスとCLクラスの最大の違い。それは自分でステアリングホイールを握りドライブすることがメインであるか否かということではないだろうか。当然のことではあるが、オーナーがCLクラスのリアシートに座ることは、極端に少ないだろう。

そんなことを想像しながらエンジンを始動するためキーを探したら、なかった。その必要がないことはわかっていたはずだが、日常の習慣はなかなか抜けないようだ。

画像: ダイレクトセレクトやCOMANDシステム、そしてメーター類などインパネはSクラスと共通するもの。シフトチェンジのマニュアル操作がステアリング裏のボタンからパドルシフトに変更になった。

ダイレクトセレクトやCOMANDシステム、そしてメーター類などインパネはSクラスと共通するもの。シフトチェンジのマニュアル操作がステアリング裏のボタンからパドルシフトに変更になった。

改めてスタートボタンで始動、M/S/Cという3タイプの走行モードからC(コンフォート)モードを選択し、ダイレクトセレクトをDレンジに入れ発進。2速発進なので、始動はとてもスムーズ。常用となる低回転域では室内はとても静かで、つぶやくような「ひとりごと」さえも聞こえてしまう。

しかし、アクセルペダルを踏み込み、積極的に使う気になったパドルシフトでシフトチェンジしながら高回転域まで回すと、一瞬でパワフルなエンジンが目覚め、その音色を奏でる。しかし、その音に不快さはまったく感じられない。

1インチアップされた19インチタイヤからもゴツゴツとした嫌な入力を感じることはなく、快適そのもの。そのままどこまでも加速していく。一瞬で法定速度に達してしまうが、CLはまだまだその実力の半分も発揮していないと言っているようだ。

運転しているのは、日本に導入されているCLクラスのなかでも、もっとも大人しいCL550のはず。といっても、5.5L V8エンジンは387ps/530Nmを発揮するので十分パワフルなのだが。スムーズであり、その気になればスポーティでもあるこのエンジンは、CLのキャラクターに相応しいものだ。これならばCL600やCL63AMG、CL65AMGを選ぶ必要はそれほど感じられない。

荒れた路面に遭遇しても、CL550はまったく意に介しない。ドライバーは、その路面が荒れていたことさえ気づかないだろう。

「いいなぁ、コレ」自然と言葉が口から漏れてしまい、同乗しているカメラマンに聞かれてしまった。まさにその時こそ、CLクラスが夢のラインアップに加わった瞬間だった。(文:Motor Magazine編集部 千葉知充/写真:島村栄二)

メルセデス・ベンツ CL550 主要諸元

●全長×全幅×全高:5075×1870×1420mm
●ホイールベース:2955mm
●車両重量:2000kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:5461cc
●最高出力:285kW(387ps)/6000rpm
●最大トルク:530Nm/2800-4800rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:FR
●10・15モード燃費:6.2km/L
●タイヤサイズ:前255/40R19、後275/40R19
●車両価格(税込):1520万円(2008年当時)

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