BMWのラインナップの中にあって常に、特別な存在であり独自性を保ち続けるMモデルたち。新しい「M4」もまたMの伝統を受け継ぎながら、最先端スポーツとしての革新が盛り込まれている。先達であるM2、M5と乗り比べてみると、活気あふれる独自性の魅力が浮き彫りになって来た。(Motor Magazine2021年6月号より)

抜群の安定感と追従性。その走り、まさに意のまま

そんなことを思い出しながら今回も新型M4でワインディングロードを走ると、常に安定感を保ちつつ、ドライバーの意図どおりのライントレースを可能にしていた。サスペンションのセッティングは、ドライビングモードを「コンフォート」にするとコーナー立ち上がりでロールの戻りが少し遅い感じでもたつくので、「スポーツ」がちょうど良い。「スポーツ」にしても乗り心地はそう悪くならないあたりもまた、新型になって進化したところだろう。

新型M4はボディ剛性が非常に高くなっていて、タイヤから伝わる衝撃がボディを無駄に振動させない。短いサスペンションストロークでも、衝撃をうまくいなしている感じなのだ。

おかげで、電子制御によりダンパーの減衰力を硬めにしても、ある程度の範囲なら乗り心地も担保できるし、路面の不整もうまくいなしてくれる能力が高くなっている。これはなかなかいいできだ。次回、ノルドシュライフェを走るのがとても楽しみになった。

そんなふうに「それなりのペース」でワインディングロードを楽しんで走っている時、気づいたことがある。最近の低速トルクが非常に太いパワートレーンたちを相手にする時のようにズボラな運転をすると、M4の新しいS58B30型エンジンは想定していたほどに力強く加速してくれないことがままあった。

これはつまり新エンジンの特性が、先代より高回転型になっているということだろうか・・・低回転域では明らかにトルク不足を感じさせるケースがあったのだ。具体的には2000rpmくらいからの加速感だ。M2なら550Nmの最大トルクを2350-5250rpmで発揮するし、M5なら750Nmを1800-5860rpmで絞りだす。ちなみに先代M4が搭載していたS55B30型なら、550Nmを1850-5500rpmで発生させていた。ところが新しいS58B30型では、最大値の650Nmが2750rpmを超えたところから生まれる。新型では2000rpmあたりでは、トルクが盛り上がってこないのだ。

画像: M5 コンペティション。生粋のスポーツモデルであると同時に比類なきプレミアムサルーンとして妥協のないパフォーマンスを磨き抜いている。

M5 コンペティション。生粋のスポーツモデルであると同時に比類なきプレミアムサルーンとして妥協のないパフォーマンスを磨き抜いている。

天井知らずに吹けあがる、あの快感が再現される

こうした変化はいったい何を意味するのだろう。Mモデルも、次のフェーズに踏み出したというのだろうか。より高い回転数まで美味しい領域を引き上げる特性はまるで、大排気量NA時代を思わせる。かつてMモデルたちが体感させてくれた、確かな伸び感を伴いながら天井知らずに吹けあがる「あの」エモーションを再現しようとしているのではないか・・・。

どんな運転をしようと速く走れてしまうのでは、つまらない。「美味しい」回転数のことも頭に置いてコントロールできるドライバーは速さとともに気持ちよさも究めることができるだろう。そのための味付けだとしたら、凄い。

もしかするとM社は、クルマを操る愉しさ、「駆けぬける歓び」の原点に、立ち返ろうとしているのかもしれない。これからのMの変貌と革新の行方が、とても楽しみだ。(文:こもだきよし/写真:永元秀和)

画像: M5(左)が搭載するV8ツインターボの625psを頂点に、M4(右)は510ps、M2(中)は410psの3L直6ツインターボエンジンを搭載する。M2のみ7速DCT、ほかは8速ATだ。

M5(左)が搭載するV8ツインターボの625psを頂点に、M4(右)は510ps、M2(中)は410psの3L直6ツインターボエンジンを搭載する。M2のみ7速DCT、ほかは8速ATだ。

BMW M4クーペ コンペティション主要諸元

●全長×全幅×全高:4805×1885×1395mm
●ホイールベース:2855mm
●車両重量:1730kg
●エンジン:直6DOHCツインターボ
●総排気量:2992cc
●最高出力:375kW(510ps)/6250rpm
●最大トルク:650Nm/2750-5500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・59L
●WLTCモード燃費:10.1km/L
●タイヤサイズ:前275/35R19、後285/30R20
●車両価格(税込):1348万円

BMW M2 コンペティション主要諸元

●全長×全幅×全高:4475×1855×1410mm
●ホイールベース:2695mm
●車両重量:1630kg
●エンジン:直6DOHCツインターボ
●総排気量:2979cc
●最高出力:302kW(410ps)/6250rpm
●最大トルク:550Nm/2350-5230rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・52L
●WLTCモード燃費:10.3km/L
●タイヤサイズ:前245/35R19、後265/35R19
●車両価格(税込):935万円

BMW M5 コンペティション主要諸元

●全長×全幅×全高:4990×1905×1475mm
●ホイールベース:2980mm
●車両重量:1940kg
●エンジン:V8DOHCツインターボ
●総排気量:4394cc
●最高出力:460kW(625ps)/6000rpm
●最大トルク:750Nm/1800-5600rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・68L
●WLTCモード燃費:-
●タイヤサイズ:前275/35R20、後285/35R20
●車両価格(税込):1900万円

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