ホモロゲーションモデルがからスタートした「M3」
2003年暮れに日本で初度登録されたE46のM3 CSL。そのハンドルを久しぶりに握った。M3 CSLはE30、E36に続く3世代目のM3がベースになっている。すでに18年前のモデルだがCSL(クーペスポーツライトウエイト)の名のとおり、軽量化されたクーペのスポーツカーとして、いまなお十分に通用するパフォーマンスを確認することができた。
この個体は、筆者の薦めもあって長野県のM氏が新車で購入したものだが、現在でも飽きることなく保有し続け、乗っている。他にもM3 CSLを保有する知り合いは少なからずいるが、みな口を揃えて「まったく売る気はない」と言う。その方々は、最新モデルも乗っているにもかかわらず、昔のM3 CSLも同時に保有しているのだ。その魅力とはいったい何なのか、じっくりと検証してみたい。
1986年から発売されたE30の初代M3、その歴史は2.3L直列4気筒DOHCバルブエンジンとともにスタートした。そもそもはレースに出場するためのホモロゲーションモデルであり、太いタイヤを履くために最初からブリスタータイプのオーバーフェンダーを備え、トランクリッドには大きなウイングが備えられていた。そしてDTM(ドイツツーリングカーマイスターシャフト=選手権)で大活躍したことを鮮明に憶えている方も多いだろう。
そして1993年にE36のM3クーペへと進化。この2世代目M3は、エンジンコード「S50B30」と呼ぶ3L直列6気筒DOHCバルブエンジンを搭載し、4ドアモデルのM3セダンもラインナップに加わる。1995年からエンジン排気量が3.2Lになり、最高出力は286psから321psへとパワーアップ。この3.2Lモデルには、6速MTの他に2ペダルのSMG(シーケンシャル エム ゲトリーベ)というシングルクラッチ式AMT仕様も設定された。
最高出力は360psにアップ。カーボンルーフなどで軽量化
3世代目となるE46のM3は、2000年から発売された。新開発の「S54B32」と呼ぶ3.2L直列6気筒DOHCバルブエンジンを搭載し、6速MTと改良されたSMG IIの2種類のトランスミッションを用意。そして2003年に発売されたのがM3CSLである。
エンジンは標準M3の343ps仕様に対して、360ps仕様にパワーアップされた「S54B32HP」に替わった。トランスミッションはSMG IIのみで、2世代目M3に採用された最初のSMGは電気的なトラブルに見舞われたが、このSMG IIでは大きな問題は発生しなかったようだ。
M3 CSLのボンネットを開けると、直列6気筒エンジンの左側(向かって右側)に配置されたCFRP(カーボンファイバー強化樹脂)製の巨大なインダクションボックスに目がいく。そのインテークダクト部には大きなフラップがあり、高回転領域など必要に応じて開くようになっている。
ボディエクステリアはさほど派手ではないが、随所からただ者ではない雰囲気を醸し出している。Mモデル特有のボンネット上のパワーバルジ、フロントフェンダー後部のエア抜きスリット、フロントバンパー左側にあく丸い穴(オルタネーター冷却用)など、標準型M3との識別点は多い。
また軽量化モデルを標榜するだけに、CFRP製パーツも多く採用されている。もっとも特徴的なのは、量産車として初採用されたCFRP製ルーフパネルだ。またフロントバンパーも、丸ごとCFRP製である。実はM氏が凍結した湖上の特設コースに降りようとした時、オウトツにバンパー下部のスポイラー部が引っかかってパリンと割れたことがあるそうなのだが、部品代と交換工賃・塗装代込みで70万円!だったという。
ちなみに室内にも、CFRP製パーツは多用されている。これは軽量化とともに、雰囲気作りの目的もあるだろう。いちおう後席にも座れる4人乗り仕様だが、リアシートのクッションは薄い座布団程度である。前席も本格的なフルバケット型で、シート全体の角度調整はできるがシートバックのリクライニングはできない構造だ。また車体の軽量化で効果的なのはガラス部分だそうで、リアウインドウには厚みの薄いガラスが採用されている。