水落さんはマツダにとっても重要なキーパーソンなのである
「水落さんがRCOJを立ち上げた時、『名誉顧問に』と水落さんからお話をいただいたんですが、当時私はまだ現役でしたので、それは実現しませんでした。あの頃は今ほどの規模になるとは、水落さんも考えてはいなかったのではないでしょうか。軽井沢を始めとしたミーティングに、ロードスターの開発スタッフを招いて話を聞くというスタイルが定着したのも、彼の力添えといえるでしょう」
「とは言っても開発者の中には、積極的に参加したくない者がおりまして(笑)。完成した車両は、ユーザーすべてにとって100点満点ではありません。ですから、生の声を聞くということはマイナスの話も聞くことになるのです。わかっているから、行きたがらない人間もいるということです」
「土台ムリな要望もありますからね。しかし、ここで話を聞くことはメーカーにとって重要なのです。手放さず複数台所有する人も多くいるとわかれば、やはり高価なロードスターを作ってはいけないと思うんです」
ユーザーとメーカーの橋渡しを担う水落さん、マツダにとっても一助となっていたようだ。では、水落さんから見た貴島さんはというと?
「私はロータリーをやりたくて入社したので、ロードスターを見たときに『なんでレシプロエンジンなのか』と上司に食ってかかったり、その後1.8Lモデルが出るときには、どうせ2Lとか大きくしていくんだろっ、と文句ばかりでした(笑)」
「貴島さんとは、2代目の試乗時に初めてじっくり話をしましたが、広島弁バリバリの口べたなエンジニアというのが第一印象でした。お客さんとのやりとりもぎこちなくて(笑)。ところがミーティングに足を運ぶたびに、どんどんコミュニケーションの才能が開花。今ではステージ上でいじられることもある大学教授ですから」
貴島さんもRCOJの会員なのだが、現行モデルの主査だった中山デザイン本部長など、マツダ社員のRCOJ会員は多い。メーカーの社員がファンのための活動に前向きなことも、マツダ好きを増やすことにつながっているのだ。
「ユーザーと会社が近いというイメージは、ロードスターを中心に置いていたから生まれたのでしょう。今では他車種でもその距離が縮まっています。これはロードスターが作った道筋と言えますね」と貴島さん。
ロードスターが作ってきたメーカーとユーザーのつながりは、他社にはない強みなのだ。