日本デビューを記念して用意された限定車の「1st edition(ファーストエディション)」。A3は30TFSIアドバンスドをベースにスポーツバックが375台、セダン125台を用意。またS3はスポーツバックのみで125台となる。2台でそのフル装備の本領を実感した。(Motor Magazine2021年7月号より)

好燃費の1LターボエンジンMHEVシステムも貢献度大

新型では「A3シリーズの主力パワーユニット」と言っても良い1Lの3気筒ターボエンジンは、ベルト式スタータージェネレーターを備えた48ボルトのMHEV(マイルドハイブリッドシステム)を採用する。40〜160km/hの範囲でエンジンが停止する設定のコースティング状態での走行も含む高速道路上のクルーズでは、実際に20km/Lという数字が視野へ入る燃費をマークすることに驚かされた。

ちなみに、エンジンの停止と復帰(再始動)に気づかされることがなかったのも事実。信号での停止時などアイドリングストップ状態から再始動する際も、いわゆるスターターモーターの音なしに「プルン」とかかる。これもプレミアムブランドの製品らしい所作と感じられた。

そうした一方で「これはちょっと慣れが必要かも・・・」と思えたのは、シフトパドルを操作してのダウンシフトを行ってすら、さしたるエンジンブレーキ力が得られないというポイントだった。

画像: 本国ではスポーツバックよりも後に発表されたセダンのデビュー時に登場した1L直列3気筒ターボエンジンと48V式MHEVシステムを備えた「30」用のユニット。(A3スポーツバック ファーストエディション)

本国ではスポーツバックよりも後に発表されたセダンのデビュー時に登場した1L直列3気筒ターボエンジンと48V式MHEVシステムを備えた「30」用のユニット。(A3スポーツバック ファーストエディション)

都市部の高速道路を筆頭に、車間距離が微妙に伸び縮みを繰り返す混雑気味の道路をクルージングしている時に、エンジンブレーキ力を利用してこれを吸収しようという運転がなんともやりにくいのだ。必然的に、足がブレーキペダルにタッチする機会が増えてしまう。「後続車を惑わさないためにも、ブレーキランプはなるべく点けたくない」と思っていながらも、そのようなドライビングはかなり難しい。

1Lターボエンジンながら、加速の絶対能力に大きな不満はないし、3気筒ならではのノイズもあえて高回転まで引っ張らない限りは、ほとんど気にならなかった。しかし、個人的に動力性能面でもっとも注文を出したくなったのが、実はこの「エンジンブレーキがほとんど期待できない」というポイントであった。

もちろん、燃費効率向上のためにエンジン内部の機械的なフリクションを徹底的に下げて、より「転がる」ようにするならば、こうした印象になるのも理屈としてはおかしくない。しかし、長時間のクルージング時における快適な「ワンペダルドライビング」を実現させるためには、ここはもう少しなんとかならないものであろうか・・・と感じたのである。

さらなるプレミアム性を実感できるトップモデル

一方で、そんなベーシックなA3から乗り換えると、S3はやはり目が覚めるように逞しい動力性能に、さらなるプレミアム性を実感させられることになった。

前述のように、取材車はファーストエディションゆえ、電子制御式可変減衰力ダンパーを用いる「ダンピングコントロールサスペンション」が標準装備される。こちらも特別装備である19インチの大径ホイールとタイヤを履く姿を見て、相応にスパルタンな乗り味を予想させられたものの、少なくともドライブモードで「コンフォート」を選択していれば思いのほかにジェントルなテイストを提供してくれた。通常ならば11万円という価格でオプション設定されるダンピングコントロールサスペンションが、そこに大いに貢献していたであろうことは間違いない。

もっとも、同じ日の取材であったがゆえにA3との比較が避けられなかった結果からすれば、ワインディング路を行く際の身のこなしで、前輪の負担感がより少なく、サスペンションのストロークする様子がより滑らかに感じられたのが、実は僅差ながらもA3の方であったというのも、また事実である。これには、前輪の軸重で200kgにも迫る大きな差があったことも、無関係ではないように思う。

いずれにしても「3気筒のベーシックモデル、見くびるべからず」-改めて、そんな思いを抱くこととなった、新しいA3シリーズの日本デビューである。(文:河村康彦/写真:永元秀和、伊藤嘉啓)

画像: S3が搭載する310ps/400Nm仕様のDNF型2L直列4気筒ターボエンジン。 40TFSIモデルの190ps/320Nm仕様、DNN型とは同排気量だが別物といえる。(S3スポーツバック ファーストエディション)

S3が搭載する310ps/400Nm仕様のDNF型2L直列4気筒ターボエンジン。 40TFSIモデルの190ps/320Nm仕様、DNN型とは同排気量だが別物といえる。(S3スポーツバック ファーストエディション)

アウディ A3スポーツバック ファーストエディション 主要諸元

●全長×全幅×全高:4345×1815×1450mm
●ホイールベース:2635mm
●車両重量:1320kg
●エンジン:直3DOHCターボ
●総排気量:999cc
●最高出力:81kW(110ps)/5500rpm
●最大トルク:200Nm/2000-3000rpm
●トランスミッション:7速DCT(Sトロニック)
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・47L
●WLTCモード燃費:17.9km/L
●タイヤサイズ:225/40R18
●車両価格(税込):453万円

アウディ S3スポーツバック ファーストエディション 主要諸元

●全長×全幅×全高:4350×1815×1440mm
●ホイールベース:2630mm
●車両重量:1560kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●総排気量:1984cc
●最高出力:228kW(310ps)/5450-6500rpm
●最大トルク:400Nm/2000-5450rpm
●トランスミッション:7速DCT(Sトロニック)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・56L
●WLTCモード燃費:11.6km/L
●タイヤサイズ:235/35R19
●車両価格(税込):711万円

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