クルマ好きならば、「うまく走りたい」、「速く走りたい」という気持ちは少なからず持っているだろう。クルマを走らせる楽しさというのは今も昔も変わらない。この連載では基本に立ち戻ってドライビングテクニックのAtoZを解説しよう。第1回目は人車一体となるカナメのドライビングポジションを振り返ってみよう。

ドラポジは、的確な操作と視線を安定させるポイントになる

「新・超高速ドラテク講座」の第1回として正しいドライビングポジションを解説していこう。とくにハイスピードドライビングで正確な操作を安全にできるようになるには、正しいドライビングポジションを取ることが大前提となる。これは今すぐに改善できる項目でもあるし、かっこよく見えるという面でも重要だ。

画像: イラスト・きむらとしあき

イラスト・きむらとしあき

具体的なドライビングポジション合わせの方法だが、まずシートバックをとりあえず極端に寝かせない状態にし、背中がしっかりと密着し、座面とシートバックの接合部にも隙間ができないようにお尻を深く入れておく。次にペダルをしっかり操作できるように、シートを前後スライドして調整する。

MT車なら左足でクラッチを奥まで踏み込んだときに、AT車ならフットレストに足を乗せたときに膝が伸びきらないところに合わせる。逆に膝が伸び切ってしまうと衝突などで強い減速Gが発生して左足を踏ん張ったときに膝にダメージを負ってしまう可能性がある。そして右足はブレーキをしっかり踏めることを確認する。クラッチをしっかり踏めるならば、ブレーキが遠すぎることはない。

画像: 左足はクラッチペダルを踏み込んで膝が伸び切らないように。右足はブレーキペダルを確実に置くまで踏み込める位置に合わせる。

左足はクラッチペダルを踏み込んで膝が伸び切らないように。右足はブレーキペダルを確実に置くまで踏み込める位置に合わせる。

続いてシートバックの角度によるステアリングホイールまでの距離の調整だ。いくつかの方法があるが、ステアリングホイールの上に両手を伸ばしたときに手首が乗るくらいを基本とするといい。そして、9時15分の位置を握ったときに肘の角度が120度くらいに曲がっているようにしたい。

ただ、クッションの厚いノーマルシートでサーキット走行などをする場合、強いGがかかると身体がシートバックに沈み込んでハンドルが遠くなってしまうこともある。そんなときは若干前(肘の角度が100度くらい)まで前進させてもいいだろう。そうしないと大きくステアリングを切り込んだ場合に、肩が大きく浮いてしまい、正しい姿勢が保てない。ここではテレスコピックも有効に活用したい。

画像: ステアリングホイールまでの距離は、両腕を伸ばしたときに上端が手首の位置に合わせるといい。テレスコピック機能がある場合は有効に利用したい。

ステアリングホイールまでの距離は、両腕を伸ばしたときに上端が手首の位置に合わせるといい。テレスコピック機能がある場合は有効に利用したい。

シートの高さもドライビングポジションとして重要だ。一般走行なら頭上スペースに窮屈さを感じない程度に高い方がいい。周囲の状況がつかみやすくいからだ。ただ、スポーツドライビングということを考えると、低い方が良い場合がある。これは単に低い方がかっこ良く見えるからというわけではなく、究極まで突き詰めれば重心が下がって操縦性に良い影響を与えるからだ。ここではシートの上下調整機構があるならば有効に活用できる部分だ。

画像: 視線を遠くにもっていくことができれば、ステアリングワークも安定し、前方の状況は早めにわかれば事故回避にもつながる。

視線を遠くにもっていくことができれば、ステアリングワークも安定し、前方の状況は早めにわかれば事故回避にもつながる。

シート位置を下げるとアイポイントも下がり、自然と視線が遠くへ向くなるというメリットもある。サーキットを走るときなどは、できるだけ遠くを見るようにすると視線も安定するし、ソーイング(ステアリングホイールを小刻みに動かす動作)も防げるので不要なロール変化を抑えられる。コースも広く見渡せて視覚情報も多くなる。ひいては安全なドライビングにもつながるので重要な部分だ。(文:Webモーターマガジン編集部 飯嶋洋治/イラスト:きむらとしあき)

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