2021年7月26日、アウディスポーツは2022年1月に開催される国際的なラリーイベントであるダカールラリーに参戦すると発表した。2021年末までにクロスカントリーラリーへのテスト参戦することが計画されている。

電動ドライブトレーンでダカールラリー総合優勝を目指す

世界で最も過酷なラリーが、ダカールラリーだ。2週間にわたって行われるこのイベントは、毎日のステージの走行距離は最大800kmにもおよぶ。アウディは、電動ドライブトレーンと効率的なエネルギーコンバーターというユニークな組み合せを使用した未来志向のプロトタイプ、RS Q e-トロンで2022年のダカールラリーに参戦する。

画像: 今までのダカール プロトタイプとは大きく異なる独特のスタイリング。

今までのダカール プロトタイプとは大きく異なる独特のスタイリング。

だが、砂漠には充電ステーションはないため、RS Q e-トロンはドイツ ツーリングカー選手権(DTM)で採用されている高効率なTFSIエンジンを搭載している。これは、走行中に高電圧バッテリーを充電するエネルギーコンバーターの一部となる。この内燃エンジンは、もっとも効率的な4500〜6000rpmの範囲で作動するため、その燃料消費量はkWhあたり200グラムをはるかに下回る。

前後のアクスルには、それぞれ最新のアウディ e-トロン FE07 フォーミュラEマシンのモータージェネレーターユニット(MGU)が搭載されている。これは、2021年シーズンを戦うために、アウディスポーツが開発したものだ。このMGUは、わずかな変更を加えるだけで、ダカールラリーで使用することが可能になった。同じMGUをもう1基、エネルギーコンバーターの一部として高電圧バッテリーを充電するために使用する。

つまり、RS Q e-トロンはエンジンとジェネレーターで発電して電気モーターで駆動するという、一種のシリーズハイブリッドを採用している。制動時にはエネルギーの回生も行う。バッテリー重量は約370kgで、容量は約50kWhだ。電動ドライブトレーンの最大システム出力は500kWだが、ダカールラリーでどの程度の出力が認められるのかは、現在主催者が最終調整を行っている段階だという。

画像: ロールケージとカーボンに覆われたコクピットは、外観ほど近未来的ではない。

ロールケージとカーボンに覆われたコクピットは、外観ほど近未来的ではない。

前後のモーターのトランスミッションはそれぞれ一般的な電気自動車と同様に1速の前進ギアを介して駆動する。これによって、プロペラシャフトや機械的なディファレンシャルを搭載する必要がなくなり、重量とスペースを削減できるという2次的なメリットも生み出されている。

つまり、前後のアクスルは機械的に接続されていない。そのため、アウディは前後アクスル間のトルク配分を制御し、自由に設定可能なバーチャルセンターディファレンシャルとして機能するソフトウエアを開発したという。

RS Q e-トロンのスタイリングは、内燃エンジンを搭載した従来のダカール プロトタイプと大きく異なっている。参戦は、「Qモータースポーツ」と協力して行われる。すでに2021年7月初旬にはノイブルクで最初の走行テストが行われ、今後、2021年末までの間に集中的なテストプログラムとクロスカントリーラリーへの最初のテスト参戦が計画されている。

アウディは「クワトロ」で世界ラリー選手権(WRC)に一大革命をもたらし、電動化したドライブトレーンでル・マン24時間レースを制した最初のブランドとなった。そして今回、電動ドライブトレーンと効率的なエネルギーコンバーターという組み合せを採用し、過酷なラリーで内燃エンジン搭載モデルと競う。このパワートレーンで総合優勝を果たすことができたなら、もちろん世界初の自動車メーカーとなる。

画像: 2022年のダカールラリー総合優勝を目指し、開発テストが続けられている。

2022年のダカールラリー総合優勝を目指し、開発テストが続けられている。

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