アウディというブランドをひと際魅力的な存在としているのが、RSモデルとSモデルに代表されるスポーツモデル。Motor Magazine誌はアウディ特集の中で、RS6セダンとS6アバントの試乗をとおして、その走りの特徴、考え方、コンセプトに迫っている。ここではそのレポートを振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年4月号より)

似ているようでまったく違うRS6とS6のキャラクター

アウディのRSモデルとSモデルがどれほどスポーティなスペックになっているかは想像できたと思うが、BMWのMモデルやメルセデス・ベンツのAMGとの違いはどこにあるのか。

まず、一番の大きな違いは駆動方式だろう。アウディのRSモデル、Sモデルは、すべてフルタイム4WDシステムのクワトロである。エンジンパワーを上げて、サスペンションを固め、ファットなタイヤで走りを極めるという図式から一歩進んで、安全性と強烈なトラクションを両立させることを目指している。

もちろん、BMWのMモデルはDSC、メルセデス・ベンツのAMGはESPという電子デバイスによってトラクションと安定性を確保しているが、アウディのRSモデルとSモデルはクワトロにより電子デバイスに頼らなくても済む領域を広げようとしているのだ。だから冬の滑りやすい路面でも雨のアウトバーンでも安心感が高く、グランドツーリングでも疲れず安全性が高まるのだ。

アウディが掲げている「Vorsprung Durch Technik(技術による先進)」は、RSモデルとSモデルを、その象徴のように表現していると言っていい。

RS6のタコメーターは、6700rpmからレッドゾーンが始まる。ターボチャージャーによって1500rpmから6250rpmまで650Nmという強烈に太いトルクを発揮できるから、エンジン回転数を高める必要はまったくない。それでも6700rpmまではしっかりと使える範囲になる。それにしても、ドライバーズシートに収まって、4ドアサルーンなのに320km/hまで刻まれたスピードメーターと対面したときは、気楽な気持ちでアクセルペダルは踏めない、と自分に言い聞かせることになる。

しかし、実際に走らせるとRS6は決してじゃじゃ馬ではない。というよりアクセルペダルの踏み込みに対して過敏な反応はしないから、ごく普通のクルマとして扱うことができる。もちろんアクセルペダルを深く踏み込んでしまえば、その分強烈な加速Gが身体を襲ってくる。6速ATは次々とシフトアップしていくので、自分で運転しているのでなかったら、脳みそが後頭部に寄ってしまうような感覚になるだろう。なにせ640Nmを各ギアで目いっぱい使えるのだから。

でもこのときターボラグは感じない。これだけのトルクを出しながらも、アクセルペダルの動きにはリニアな加速力が出るようなプログラムを施してあるのだろう。アクセルペダルを踏み込み始めるとすぐに加速が始まる。

これだけの走りをする割に乗り心地はすこぶるいい。スポーティなモデルは乗り心地が悪くなると信じている日本のメーカーには見習ってもらいたいくらいであり、いいベンチマークになるだろう。滑らかな動きなのに動きすぎない。粘りがあるようなサスペンションの動きが、ハンドリング面では安心感につながっている。

画像: アウディ RS6。熟練工によってハンドメイドで丁寧に仕上げられるRSモデルはスポーツモデルの範疇に収まらないスペシャルなモデル。

アウディ RS6。熟練工によってハンドメイドで丁寧に仕上げられるRSモデルはスポーツモデルの範疇に収まらないスペシャルなモデル。

SモデルやRSモデルがあるからSラインが生きている

一方S6は、NAのレスポンスの良さが光る。ハンドリング性能も、エンジンとリンクするかのような動きでとても気持ちがいい。RS6の粘り腰とはまた違った、別のちょっと固めのしっかりしたサスペンションセッティングである。とはいっても乗り心地が悪いわけではない。舗装がちょっと荒れているような道でもゴツゴツという振動をキャビン内に伝えてこない。ボクはこのドライな感覚のテイストが気に入っている。 

S6に対して、RS6はさらに速く、さらにゴージャスに、さらに先進技術の粋を集めたモデルに仕上げられている。同じA6を基本に持ちながらも、こうした明らかにキャラクターの違うクルマを出せることに驚かされる。普通の商品企画ならS6かRS6のどちらかにしてしまうところだが、あえて2モデルを創るところがアウディの偉いところだと思う。

アウディのスポーツモデルには、ここで紹介したS6、RS6以外にも、S3スポーツバック、TTSクーペ、S8、S5、R8、S4という豊富なラインアップが揃っている。

さらにノーマルモデルの中のバリエーションのひとつとしてSラインというアイテムが用意されている。アルミホイール、シート、サスペンション、ステアリングホイール、バンパー、エンブレムなどのパーツを換えて、ちょっとスポーティに変身させているのだ。このSラインが用意されていてもSライン単独では興味が湧かないが、そこにRSモデルやSモデルがあるから、Sラインが生きてくるのである。

アウディはこれからも、これらのスポーツモデルが生きるラインアップを続けるだろう。それがアウディのさらなる発展の道だからだ。(文:こもだきよし/写真:永元秀和)

画像: アウディS6アバント。RS6の粘り腰とはまた違った、しっかりしたサスペンションセッティング。RSモデルより劣るということではなく、別の個性が与えられている。

アウディS6アバント。RS6の粘り腰とはまた違った、しっかりしたサスペンションセッティング。RSモデルより劣るということではなく、別の個性が与えられている。

アウディ RS6 主要諸元

●全長×全幅×全高:4930×1890×1455mm
●ホイールベース:2845mm
●車両重量:2100kg
●エンジン:V10DOHCツインターボ
●排気量:4991cc
●最高出力:426kW(580ps)/6250-6700rpm
●最大トルク:640Nm/1500-6250rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・80L
●10・15モード燃費:5.9km/L
●タイヤサイズ:275/35R20
●車両価格:1645万円(2009年当時)

アウディ S6 アバント 主要諸元

●全長×全幅×全高:4940×1865×1455mm
●ホイールベース:2845mm
●車両重量:2060kg
●エンジン:V10DOHC
●排気量:5204cc
●最高出力:320kW(435ps)/6800rpm
●最大トルク:540Nm/3000-4000rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・80L
●10・15モード燃費:7.0km/L
●タイヤサイズ:265/35R19
●車両価格:1260万円(2009年当時)

This article is a sponsored article by
''.