OHCのプッシュロッドが消え、より現代的になったSOHCエンジン
SVからOHVになって、エンジン性能は大幅に向上した。ただし、吸排気バルブを駆動するプッシュロッドは重いパーツでもあり、高回転になるとカムの動きについていけずバルブの作動に難がある場合もあった。そこでカムシャフトごとヘッド側に移設し、クランクシャフトから取り出した回転でカムシャフトも回転させて、より効率的にバルブを駆動させる方式を考えた。これがSOHCとなる。
基本的な考え方は現在ポピュラーとなっているDOHC方式も同じ。ただ、DOHCはヘッドに2本カムシャフトがあるので、それぞれで吸気バルブ、排気バルブを直接駆動できる(直動式)が可能になる。SOHCは、1本のカムシャフトで吸排気バルブを動かさなければならないためにロッカーアーム(スイングアーム)といったパーツを介する必要が出てくる。
4サイクルエンジンでは吸入、圧縮、燃焼、排気というピストンが2往復で1サイクルとなる。一方、吸排気バルブは圧縮、燃焼では閉じたままでいいので、その間、カムシャフトが1回転すればいい。つまりクランクシャフト2回転につきカムシャフトは1回転とする必要がある。SOHC(DOHCも同様)では、クランクシャフトの回転を、カムシャフトのタイミングギヤで減速することで調整している。
そのクランクシャフトとカムシャフトを連動させているのがタイミングチェーンやタイミングベルトと呼ばれるパーツだ。昭和のエンジンの場合は、金属製で耐久性の高いチェーンを用いられることが多かった。これは騒音が大きくなりがちだが、頑丈さを重視しているとも言える。のちにタイミングベルトが主流となる。
この方式によりOHVエンジンでネックとなっていたプッシュロッドが必要なくなったために、よりシンプルで軽量なエンジンとなり、長い間バルブ駆動方式の主流となっていく。コストを抑えることにもつながった。
よくSOHCとDOHCの性能の違いはどこから来るのか?という話があるので、それにも触れておこう。
DOHCの場合、カムシャフトがシリンダーヘッドに2本あるため、その間にスパークプラグを配置することができる。つまり燃焼室の中央からスパークプラグで点火できることで良好な火炎伝播を可能にし、これが最大のメリットと言える。
一方、SOHCはスパークプラグを脇から入れることになり(一部例外はあるがコスト高で普及しなかった)、その点がDOHCに取って代わられる一因となった。
ただ、当時の技術でSOHCがDOHCエンジンにかならずしも劣っていることはなかった。DOHCもまだ1気筒あたり2バルブで、SOHCと同じだったり、結果的に上モノが軽いため軽量コンパクトで、操縦性に好影響を与えていた面もあるのだ。たとえば、日産 フェアレディ240ZGに搭載されたL24型エンジンなどは、SOHCながら大排気量のトルクフルさでレースやラリーでも大活躍した。(文:Webモーターマガジン編集部 飯嶋洋治)