今では電子制御式インジェクションにその役割を取ってかわられたキャブレター。だが1980年代までは主流だったその構造とはどんなものだったのか解説していこう。

昭和のエンジンのスタンダードだったキャブレターの構造とは?

略して「キャブ」と呼ばれていたキャブレター。電子制御のフューエルインジェクションが普及する前、燃料供給はこれによって行われていた。スロットルを開けた時に通過する空気が、必要なぶんだけの燃料を引っ張り出す現象を利用した構造で、霧吹きの構造にたとえられる。

キャブレターの基本的な構造

画像: キャブレターの基本的な構造

キャブレター内部のベンチュリーと呼ばれる狭くなった通路で吸気の速度が高まる。それによって気圧が下がると、空気の通り道にベンチュリーに突き出ていたノズルからガソリンが吸い出される。

空気を引っ張り込むのは、エンジンの吸気行程だ。エンジン内では、シリンダー内でピストンが上下しており、ピストンが下がるときに空気が流れることで負圧を作り出す。このようにして圧力が低くなった空気の通り道に燃料とつながるパイプの先を出しておけば、自動的に吸い出され、霧化して空気と混じり混合気となる。

画像: イラスト&本文:「きちんと知りたい! 自動車エンジンの基礎知識(飯嶋洋治 著/日刊工業新聞社)」より転載

イラスト&本文:「きちんと知りたい! 自動車エンジンの基礎知識(飯嶋洋治 著/日刊工業新聞社)」より転載

その混合気は吸気ポートからシリンダー内に流れ込む。これがキャブレターの基本的な構造だ。原理は簡単とはいえ、ただ燃料をシリンダーに流し込んでも、適切な空燃比にはならない。燃料を吸い出す部分の内径寸法をメインボアサイズといい、キャブレターのサイズはこれで決まる。このメインボアサイズに対して燃料を供給するパイプの太さを決めておくことで、ほぼ一定の空燃比の混合気を作り出す。

燃料は、燃料タンクから吸い上げられて、キャブレターのフロート室に蓄えられている。フロートはガソリンが使われてキャブレター内の量が少なくなったときに下がることによって、その分のガソリンを供給するフタとなっている。

画像: スカイラインGT-Bには当時としては出色の高性能を誇ったキャブウエーバーを3連装していた。

スカイラインGT-Bには当時としては出色の高性能を誇ったキャブウエーバーを3連装していた。

燃料を供給するパイプをメインジェットといい、エンジンの運転状況に合ったものを選べば、そのシチュエーションに合った混合気を作ることができる。この部分がいわゆるキャブセッティングと言われ、キャブの面白さとなっている部分だ。

その他にも、アイドリング時に負圧の小さい状態で燃料を供給しつづけるスローエアブリードや急加速をしたいときに燃料を追加するための加速ポンプの装備なども施されている。

キャブレターはシンプルさゆえに整備性に長けて、コスト的にも効率的なシステムだ。しかし、1970年代、1980年代の厳しい排気ガス規制に対応できなかったのが最大の問題で、現在では自動車用としては姿を消してしまった。

画像: 1986年のシティに搭載されたPGM-CARB(電子制御キャブレター)システム。キャブもECUで空燃比をコントロールする試みもあった。

1986年のシティに搭載されたPGM-CARB(電子制御キャブレター)システム。キャブもECUで空燃比をコントロールする試みもあった。

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